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第5話 やったね!な推しとの会話!

「聖女様、殿下らが無理にご昼食にお誘いしましたために、御身おんみがめまいを起こされたと伺いましてございます。ご血色はよさそうですね。学院常駐の医師殿が、王子殿下たちが聖女様のおそばから離れないと、私のもとに直接伝えにいらしてくれたのです。婚約者として、ひらにお詫びを申し上げます」

 常駐医師さん、ナイス配慮。ありがとう!


 それにしても、アントラサイト様。

 ご尊顔が、お声が。麗しい。

 コーパルちゃんはまだ琥珀にはならない存在という意味のコーパルの名前のとおりのきれいさで、若々しく輝く琥珀のような髪と目の色が印象的な美少女。ぶっちゃけ、もんのすごくかわいい。意外と声が高すぎないのもまた、よし。

 そして、アントラサイト様は、アントラサイト、つまり、濃淡色、チャコールグレーの髪と目が、なんて言うのかな。絵の具を塗り重ねたみたいな美しさなの。お肌とか真っ白で、睫毛が長ーい!

 お声はね、なんと! 男装系美少女、美女役で定評のある有名声優さんが声を演じていたそう(アニメとかあんまりよく分からない私でも知っていたような有名声優さん!)で、こちらのアントラサイト様のお声もまた、静かで、でも、よく通る素敵なお声。


 ええと、これは。聖霊王様、ありがとうございます! なのかな。

『あってるおん。あってるけど、いまは、挨拶。きちんとしないとだおん』

 そうだよね、さすがはおんおん!


「アントラサイト様、恐れ多いことでございます。体調はおかげで落ち着いております。私に、様、などは必要ございませんし、むしろ、御身のご婚約者様、ご友人様たちとの不適切な距離につきまして、この聖女コーパル、伏してお詫びを申し上げます」

 コーパルちゃん、こっちの声も素敵。

 そして、お詫びは真摯に。聖女も社会人も、みな同じ。 

 そう思ったら、噛みそうな言葉がしぜんに出てきた。

 聖女ちゃんの記憶、便利。

 私の語彙力の高さ、これも、聖女ちゃんのおかげだね。

 ほんとうに伏そうとしたのだけれど、美しい手で遮られた。

 いい香りがする。

 練り香水とかなのかな。まさか、天然もの?


「聖女様のお心を煩わせましたこと、誠に申し訳ないことでございます。むしろ、婚約者たちを止めることができませぬ私共の不調法。婚約者全員を代表してお詫びを申し上げます。聖女様は聖教会からの聖女認定をお受けになられて、未だ半年ほど。にも拘わらず、勉学と聖教会のご講義にも務められ、素晴らしきご姿勢に存じます」


 ……感激。

 アントラサイト様、聖女ちゃんのこと、こんなに分かってくれてたんだ。

 ああ、我が友、スレ民。

 私、今すごく、書き込みをしたい気分だよ。

 異世界に届け、私の思いよ。受け取って、コーパルちゃん。


『公爵令嬢よ。其方の気高き意思、聖女が聖獣たる我が認める。どうか、その気高き心根のまま、聖女のよき友であってほしい』

「せ、聖獣様! 守護聖獣様のご存在に気付けませぬこの不肖の身、お許しくださいませ!」

 おんおん、最高のタイミング! 気配に気づくアントラサイト様もすごい!


『我は、聖魔力を控えておった。感知せし、其方の聖霊王様への深き敬意。むしろ、褒めてつかわす』

「誠にありがたきお言葉、受け堪りましてございます」

『すごい……おんおん、聖獣様っぽいじゃん!』

『やればできるんだおん』

 フワフワもふもふ、かわいいのに威厳あり、ってすごい。

 あれ、おんおん、なんだか、毛づやもよくなってない?

『聖女であるあなたが、喜んでるからだおん。聖魔力が高まっていて、それがおんおんの更なる力にもなるんだおん』

 そうなんだ。なんか、ほんとに守護聖獣って感じだね!


『ほんものだおん』

『だね』

 そう、おんおんは、ほんとにほんもの。


「恐悦至極に存じます」

 そして、恥ずかしがっている悪役令嬢アントラサイト様は……ひたすらに、尊い。

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