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第十章:誓いの剣

 王宮の大広間には、厳粛な空気が満ちていた。




 豪奢なシャンデリアの光が穏やかに降り注ぎ、磨き上げられた大理石の床に反射する。


 広間の中央には、一人の男が静かに膝をつき、頭を垂れていた。




 ユージン・ヴァルフォード――王国最強の騎士にして、俺の忠実な剣。




 彼は今日、この場で正式に俺の第一騎士となる。




 「ユージン・ヴァルフォード」




 宰相シグルトが、静かに彼の名を呼ぶ。




 「貴殿はこれより、王女レイシア・フォン・アルザードの第一騎士として仕えることを誓うか?」




 ユージンは、顔を上げた。




 彼の瞳には、一点の迷いもない。




 「誓います」




 静かで、それでいて力強い声だった。




 「この剣を持ちて、姫様を守ることを生涯の誓いといたします」




 俺は、ゆっくりと近づく。




 王族の象徴である、黄金の剣を手に持ち、ユージンの肩にそっと置いた。




 「ユージン・ヴァルフォード」




 俺は彼を見下ろしながら、静かに言葉を紡ぐ。




 「貴様に、第一騎士の称号を授ける。この剣をもって、我が王国を守り抜くことを命ずる」




 ユージンは深く頭を垂れた。




 「仰せのままに」




 式典が終わり、人々が去っていく中、俺とユージンは王宮のバルコニーに立っていた。




 風が心地よく吹き抜ける。




 「……これで正式に、お前は俺の第一騎士になったな」




 俺は、静かに呟く。




 ユージンはいつものように穏やかに微笑んだ。




 「そうですね。ようやく、この身の在り方が定まりました」




 「そうか」




 俺は遠くを見つめる。




 「お前は、俺がどうなろうと仕えると言っていたな」




 「ええ」




 ユージンは迷いなく頷く。




 「貴方がどこへ行こうと、私は貴方の剣であり続けます」




 その言葉に、胸の奥が温かくなる。




 「……お前がいてくれて、よかった」




 俺は、初めて心からの笑みを浮かべた。




 ユージンは黙って、それを見守っていた。




 未来はまだ分からない。




 でも、この瞬間だけは、確かなものがここにあった。

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