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第十一章:新たな夜明け

 東の空が、ゆっくりと白み始める。




 夜の闇を切り裂くように、金色の光が王都の屋根の端から覗き、その輪郭を鮮やかに映し出していた。




 俺は、城壁の上に立ち、その光景を静かに見つめていた。




 長い戦いが終わり、幾多の葛藤を乗り越え、ようやくこの場所までたどり着いた。


 政略結婚を拒み、王女として生きる道を選んだ今、この朝日がまるで"新たな時代の幕開け"を告げているように思えた。




 「姫様」




 背後から、落ち着いた声が聞こえる。




 俺は振り返ることなく、微笑んだ。




 「ユージンか」




 「ええ」




 足音を立てずに、ユージンが俺の隣に並ぶ。




 「珍しいな。姫様がこんな早朝にここにいるとは」




 「俺もそう思うよ」




 城壁の上で、二人並んで朝日を眺める。




 「長かったな」




 俺は、静かに呟く。




 「戦争が終わって、復興が始まって……国は変わりつつある。でも、まだまだこれからだ」




 「ええ。貴族たちも、まだ完全に姫様の決断を受け入れたわけではありません」




 ユージンは、冷静に言う。




 「貴族たちにとって、"戦う王女"は異質な存在です。ですが、彼らも次第に姫様の意志を理解し始めています」




 「……そうだな」




 俺は、ゆっくりと拳を握る。




 「だからこそ、俺はこの道を進む。王族として生きるって決めたから」




 ユージンは、静かに俺の横顔を見つめる。




 「お前は、俺の選択をどう思う?」




 ユージンは少し考えた後、微笑んだ。




 「姫様は、何よりも強いお方です」




 「……そうか?」




 「ええ。だからこそ、私はこれからも貴方の剣として共に在ります」




 俺は、ふっと小さく笑った。




 「お前がいてくれて、よかった」




 朝日が完全に空を照らし、王都が目覚める。




 街のどこかで、子どもたちの笑い声が響いた。




 復興の音、商人の呼び声、兵士たちの訓練の掛け声――


 それらすべてが、確かに"生きる"ということを実感させてくれる。




 俺は、ゆっくりと目を閉じた。




 そして――




 「俺は、王女レイシアとして生きる」




 その言葉を、風に乗せて静かに紡いだ。




 それは誰に向けたものでもなく、何よりも強い"誓い"だった。




 新たな時代が始まる。




 この国の未来は、俺が切り拓く。




 もう迷わない。




 俺は、俺の道を歩いていく。

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