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第4話 王宮を去る日と浪速魂の新たな一歩

 翌朝、王宮は薄い霧に包まれていた。これまで何度も歩いたはずのこの廊下も、今日が最後と思うと何か特別な意味を持っているように感じる。ステラは自室から広間へ向かう途中、何度も深呼吸を繰り返していた。胸の中にわずかな不安が渦巻いているが、それを押し殺すように毅然とした歩みを続けた。



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侍女たちとの別れ


「ステラ様、どうか私たちのことを忘れないでください。」


侍女のフローラが涙を浮かべながら言葉を紡ぐ。部屋の外には他の侍女たちも集まり、ステラを見送るために並んでいた。その光景に、ステラの胸がじんと熱くなったが、決して弱さを見せまいと、笑顔を作った。


「フローラ、みんな、ウチのこと心配せんでええ。これが人生の最後やない。むしろ、ここからが始まりや!」


ステラは侍女たちに向かって力強く微笑んだ。そして、懐から袋を取り出すと、中から色とりどりの飴を取り出して一人ひとりに渡していく。


「これ、あんたらに渡しとく。ウチの代わりに、甘いもんで元気つけや。」


「ステラ様…ありがとうございます。」


「ええって。甘いもん食べたら気持ちも楽になるし、泣くのも止まるからな。」


飴を受け取った侍女たちは感動しつつも、思わず微笑みを浮かべた。その光景にステラも満足げに頷いた。


「よっしゃ、これでみんな笑顔になったな。ほな、行くわ。」



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正門への道


馬車が待つ正門へ向かう途中、騎士のエリオットが駆け寄ってきた。


「ステラ様、最後にお話ししたいことがあります。」


彼は真剣な表情で足を止め、ステラに視線を向けた。


「何や、エリオット?改まって。」


「昨日の転落事件について調べました。どうやらカトリーナ様の侍女が関与している可能性が高いことが分かりました。」


その言葉に、ステラの眉が動く。


「…やっぱり、あの女か。あいつ、ほんまえげつないことするなぁ。」


彼女は顎に手を当て、しばし考え込んだ。そして、ふと顔を上げると、懐からまた飴を取り出した。


「ほれ、これ舐めて元気出しぃ。」


「飴…ですか?」


エリオットは困惑しながらも手を差し出し、ステラから飴を受け取った。


「そうや、糖分補給して頭を回すんが大事やからな。甘いもんは気持ちもリフレッシュさせる力があるんやで。」


エリオットは小さく笑みを浮かべながら飴を受け取り、その場で口に入れた。


「…ありがとうございます。意外と…効きますね。」


「せやろ!ウチが保証したるわ!」


その勢いのある言葉に、エリオットもつられて笑みを浮かべた。そして彼は再び真剣な表情に戻る。


「私もこの件についてさらに調べを進めます。何かお力になれることがあれば、必ずお知らせします。」


「頼りにしてるで、エリオット。ほんまにおおきに。」



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馬車での決意


馬車に乗り込み、王宮を出発するその瞬間、ステラは窓の外を見つめながら大きく息をついた。


「追放、婚約破棄…。こんなん、ただの始まりやろ。」


彼女は自分にそう言い聞かせるように呟いた。そして、再び懐から飴を取り出し、一粒を口に放り込む。


「甘いもんがあれば、何とかなる。いや、何とかしてみせる。」


彼女は笑顔を浮かべながら、これからの計画を頭の中で練り始めた。


「まずはカトリーナの陰謀を暴いて、王宮に戻ったる。それだけやない。ウチはもっと大きいことを成し遂げるで!」



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浪速魂の宣言


彼女の目は、遠くに広がる青空を見据えながら輝いていた。


「人生なんて、転んだら立ち上がるだけや。これから一花も二花も、何回でも咲かせたるで!」





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