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第7話 情報収集と策謀の影

 ステラは館での日々に徐々に慣れてきていたが、それでも心の中には燻るような感情が残っていた。王宮での婚約破棄と追放。そして、カトリーナによる転落事件。それらの出来事が彼女に新たな目標を与えていた。


「何もせんとここでじっとしてるなんて、ウチの性に合わんわ。」


朝の光が差し込む部屋で、ステラは一粒の飴を口に放り込みながら呟いた。そして、館の外に出ると、リリィが小走りで追いかけてきた。


「ステラ様、どちらに行かれるのですか?」


「ちょっとな、情報集めに行こうと思うてな。」


「情報…ですか?」


リリィは戸惑いながらも、ステラの後について行った。



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市場での出会い


館から少し歩いた場所には、小さな市場が広がっていた。農作物や日用品が並ぶその場所には、地元の商人や旅人が集まり、活気に満ちていた。ステラが市場に足を踏み入れると、人々は驚いたように彼女を見つめた。


「追放された公爵令嬢が市場に…?」

「何をしに来たんやろう?」


そんな囁き声が聞こえる中、ステラは気にする様子もなく、にこやかに笑みを浮かべた。


「おはようさん、みんな元気しとるか?」


その明るい声に、最初は驚いていた人々も次第に打ち解け始めた。一人の商人がステラに話しかけてきた。


「これはこれは、ステラ様。こんなところにお越しいただくなんて光栄です。」


「いやいや、ウチもここで何か買おうと思うて来ただけや。ところで、あんた、最近ここで何か変わったことあったか?」


「変わったこと、ですか?」


商人は首を傾げたが、しばらく考え込んだ後、ふと思い出したように言った。


「そういえば、最近この辺りをうろついている怪しい男たちがいるという話を聞きました。彼らは旅人を装っていますが、どうも普通の商人や農夫とは違うようで…。」


「怪しい男たちか…。」


ステラはその言葉を聞きながら頷いた。そして懐から飴を取り出し、商人に手渡した。


「ほれ、これ持っとき。甘いもん食べたら、頭も冴えるさかいな。」


「ありがとうございます、ステラ様!」


商人は嬉しそうに飴を受け取り、ステラに深くお辞儀をした。



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謎の旅人との接触


市場を歩き回っているうちに、ステラの目に不自然に動く一団が映った。彼らは黒いローブをまとい、顔を隠すようにフードを深く被っていた。その中の一人が、目立たない小屋の中に入っていくのを目にしたステラは、リリィに小声で囁いた。


「あの連中、絶対何か企んどるな。」


「ステラ様、危険です!あまり近づかない方が…!」


「大丈夫や。こういう時こそ、ウチの出番やろ。」


ステラは慎重に小屋の近くに歩み寄り、影に隠れながら彼らの会話を盗み聞きすることにした。


「カトリーナ様の指示はどうなっている?」

「王宮への次の物資は予定通りに届ける。だが、その中に例の品を紛れ込ませる必要がある。」


その言葉を聞いた瞬間、ステラの目が鋭く光った。


「やっぱりカトリーナか…。」


彼女は心の中で呟いた。



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エリオットへの報告


館に戻ると、エリオットがすでに待っていた。彼は王宮からの連絡を持ってきたが、ステラはすぐに彼に市場で得た情報を伝えた。


「カトリーナが裏で何か企んどる。あの女、やっぱり手を引いてへんわ。」


ステラの言葉に、エリオットは眉をひそめた。


「市場でそんな話を聞いたのですか?」


「そうや。黒いローブの連中が怪しい会話をしとった。王宮への物資に何かを紛れ込ませるってな。」


「それは放っておけない情報ですね。すぐに私のほうでも調査を進めます。」


エリオットは真剣な表情で頷き、すぐに行動を起こそうとする。しかし、ステラは彼を引き止めた。


「まぁ待ちな。行動は慎重にせなあかんで。」


「しかし…。」


「ここで焦ったら、向こうの思うつぼや。ウチも協力するから、一緒に考えようや。」


ステラの力強い言葉に、エリオットは静かに頷いた。



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策謀の影と決意


その夜、ステラは自室で机に向かい、これまで集めた情報を整理していた。


「カトリーナがまだ王宮で好き勝手やっとるなんて、ほんま腹立つわ。」


飴を口に放り込みながら、彼女は次に取るべき行動を考えた。


「でも、ウチは負けへん。浪速魂を見せたるんや。」


窓の外には満月が輝き、庭の花々が風に揺れている。その光景を見つめながら、ステラの中に新たな決意が生まれていた。


「まずはもっと情報を集めること。それから、カトリーナの尻尾を掴んで、一気に引きずり降ろしたる!」


彼女の瞳には強い光が宿っていた。ステラの行動が、次第に大きなうねりを生み出すことになるのは、この時まだ誰も知る由もなかった。



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