朝日が昇り始めた頃、ステラは館の中庭に立って深呼吸をした。王宮への反撃の第一歩を踏み出す日が、とうとうやってきたのだ。少し緊張した面持ちではあったが、その瞳には確固たる決意が宿っていた。
「今日はええ天気やな。こんな日に動かんと、浪速魂が廃るわ。」
口元に浮かべた笑みの裏には、これから待ち受ける困難に対する覚悟があった。
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エリオットとの最終打ち合わせ
中庭にエリオットが姿を現すと、ステラは振り返りながら声をかけた。
「おはようさん、エリオット。準備は万端か?」
「おはようございます、ステラ様。はい、予定通り物資が運ばれるタイミングを確認しました。王宮への搬入は正午頃です。」
「よっしゃ、それで十分や。王宮に入るための準備も整っとるか?」
エリオットは頷きながら、細かい計画を説明し始めた。
「物資の搬入ルートに紛れ込む形で侵入するのが最も現実的です。警備が厳重ではありますが、物資自体への検査はそこまで徹底されていないようです。」
「なるほどな。ほんで、怪しい荷物を特定するんやな。」
「はい。その中に問題の品が紛れ込んでいる可能性が高いです。ただ、見つけた後の対処が問題です。」
エリオットの言葉に、ステラは自信たっぷりに笑った。
「心配いらん。見つけたらウチがなんとかする。」
「…しかし、ステラ様、一度王宮内に入れば、簡単には抜け出せません。もし捕まれば…。」
「捕まるのはええけど、ウチが飴を配り続ける限り、誰か助けてくれるやろ。」
エリオットは苦笑いを浮かべながらも、その言葉に少しだけ安心感を覚えた。
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リリィの協力
部屋に戻ると、侍女のリリィが荷物を整えて待っていた。彼女の顔には緊張が浮かんでいたが、それでも精一杯の笑顔を見せている。
「ステラ様、本当に行かれるのですか?」
「せやで。ここでじっとしてても何も変わらんからな。」
「でも…危険です。」
リリィの声には明らかな不安が混じっていた。その様子に気付いたステラは、優しく彼女の肩に手を置いた。
「心配せんでええ。ウチは絶対帰ってくる。それに、リリィがここで待っとるなら、なおさら帰らなあかんやろ?」
「ステラ様…。」
「ほれ、これでも舐めて落ち着き。」
ステラはお馴染みの飴を取り出し、リリィに渡した。
「ありがとうございます…。」
飴を受け取ったリリィは少し笑顔を見せ、深く頭を下げた。
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物資に紛れ込む作戦
正午が近づく頃、ステラはエリオットと共に市場に向かい、物資を積み込む荷車が準備されている場所に向かった。荷車には農作物や日用品が積まれており、その一部に問題の品が隠されていると予測されていた。
「さぁ、行くで。」
ステラは手早く荷車の陰に身を潜め、エリオットと共に動きを観察した。
「警備は思ったより厳重やな。」
「ええ、でもこの時間帯ならば搬入が優先されるはずです。」
彼の言葉通り、警備兵たちは搬入作業を手早く進めることに集中していた。
「いけるで、今や。」
ステラとエリオットは素早く荷車に紛れ込み、荷物の影に隠れた。
「ほんま、これでええんかいな…。ウチ、こんなこと初めてやで。」
「私もです。」
二人は互いに苦笑いしながら、王宮へ向かう道を進んでいった。
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王宮への潜入成功
王宮に到着すると、荷車の中で息を潜めていたステラは、ゆっくりと外の様子を伺った。警備兵たちは荷物の点検を始めたが、特に厳しい検査は行われていない様子だった。
「…思ったよりも緩いな。」
「今がチャンスです。」
エリオットの合図で二人は荷車から素早く降り、周囲の影に身を隠した。そして、問題の荷物が運び込まれるのを見届けながら、それを追跡することにした。
「ほんまにやることなすこと怪しい連中やな。」
「しかし、これで証拠を掴むことができます。」
ステラは頷きながら、その先に待つ困難に向けて気を引き締めた。
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浪速魂の決意
王宮の中庭に立ち止まり、ステラは深呼吸をした。その胸には、自分を追放した者たちに一矢報いる覚悟が満ちていた。
「ここまで来たんや。絶対に勝ったる。」
彼女の瞳には揺るぎない決意が宿っていた。これから待ち受ける困難に立ち向かう準備は、すでに整っていた。
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