目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第10話 証拠を掴むための追跡

 ステラとエリオットは、王宮内で問題の荷物を追跡していた。物資を運ぶ荷車は警備の目をすり抜け、調理場や倉庫へと次々に運び込まれていく。その中でも、問題の品が隠されているとされる木箱が、特に注意深く運ばれていることに気づいた。


「見つけたで、あの箱やな。」


ステラは低い声で呟きながら、エリオットに目配せをした。


「間違いありません。あれが怪しいですね。」


「せやけど、どうやって中身を確認するんや?あんなん堂々と開けたら即バレやで。」


「そこが問題です。今の段階では慎重に動く必要があります。」


エリオットの言葉に、ステラは少し考え込んだ。そして、口元にお馴染みの笑みを浮かべた。


「ほな、ウチが行くわ。」


「ステラ様、それは危険すぎます!」


「危険やけど、誰かがやらなあかん。エリオット、あんたはここで見張り頼むわ。」


エリオットが止める間もなく、ステラは軽やかな足取りで荷車を追い始めた。その行動力にエリオットは驚きつつも、彼女を見守るしかなかった。



---


調理場での緊張感


問題の木箱は、最終的に王宮の調理場に運び込まれた。厨房には多くの料理人や下働きの者たちが忙しそうに動き回っており、厳しい監視の目もある。


「これは骨が折れるな…。せやけど、ウチにしかできへんことや。」


ステラは厨房の隅に身を潜めながら、箱の動きをじっと見つめた。そして、警備の隙をついて調理場の中へと忍び込んだ。


「何してんの、あんた?」


突然背後から声をかけられ、ステラは驚いて振り返った。そこには、エプロンをつけた若い厨房の見習いが立っていた。


「あ、あれやな!新しい下働きの者やろ?」


若者の誤解に、ステラは素早く乗っかることにした。


「せやせや!今日から働かせてもらうことになった、ステラや。よろしゅうな!」


「なんや、やけに気さくやな。まぁええわ、あっちの野菜を切っといてくれるか?」


「了解や!」


ステラは素早く作業台に向かい、適当に野菜を切る振りを始めた。しかし、その視線は常に問題の木箱に向けられている。



---


箱の中身を確認する


しばらくすると、調理場の監視が緩むタイミングが訪れた。警備の目が一瞬離れた隙をついて、ステラは問題の木箱に近づいた。


「さて、何が入っとるか見せてもらおか。」


木箱の蓋を静かに開けると、中には何層もの布が丁寧に詰められていた。その布を慎重に取り除いていくと、中から現れたのは一本の小瓶だった。


「…これ、毒薬か?」


透明な液体が入った小瓶には、見たことのない印が刻まれていた。それは明らかに普通の調味料や薬ではないことを示していた。


「これが証拠や。カトリーナ、とうとうウチに尻尾掴まれたな。」


ステラは小瓶を懐にしまい、木箱の中を元通りに整えた。



---


危険な撤退


しかし、その瞬間、後ろから低い声が聞こえた。


「おい、そこで何をしている?」


振り返ると、厨房の管理人らしき男が鋭い目でステラを睨んでいた。その後ろには、警備兵が二人控えている。


「これはまずいな…。」


ステラは心の中で呟きながらも、笑顔を浮かべて答えた。


「あ、ウチ、新しい下働きの者でしてな、ちょっと様子見とったんや。」


「そんな話は聞いていないぞ。」


管理人は疑念を抱いた様子でステラに近づいてきた。警備兵も徐々に距離を詰めてくる。


「こらあかん!走るしかない!」


ステラは素早く身を翻し、厨房から全力で走り出した。その背後では警備兵たちが怒声を上げながら追いかけてくる。


「待て!逃げるな!」


「捕まるかいな!こんなとこで終わるわけないやろ!」


ステラは巧みに廊下を駆け抜け、エリオットとの合流地点を目指した。



---


合流と脱出


ついにエリオットが待つ場所にたどり着いたステラは、息を切らしながら声を上げた。


「エリオット!逃げるで!」


彼は驚きながらも、すぐに状況を察し、彼女を引き連れて裏道へと駆け出した。


「証拠は掴めたのですか?」


「バッチリや!これでカトリーナの悪事を暴ける!」


「それは良かった…ですが、どうやって王宮を抜け出すつもりです?」


「考えとる暇なんかあらへん!とにかく走るんや!」


二人は息を切らしながら、警備の目をかいくぐってなんとか王宮を抜け出した。



---


浪速魂の誓い


館に戻ったステラは、懐から小瓶を取り出してエリオットに見せた。


「これがカトリーナの陰謀の証拠や。次はこれを使って、あいつを引きずり降ろしたる。」


「すごいですね…ステラ様、本当にやり遂げるとは。」


「当たり前や。浪速のおばちゃんをなめたらあかんで。」


彼女の目には強い意志が宿っていた。この小瓶が、彼女の反撃の最大の武器になることは間違いない。


「さぁ、次の手を考えるで!これからが本番や!」



--


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?