「よっしゃ、これが王宮に戻る最初で最後のチャンスや。」
ステラは飴を舐めながら、王宮の高い城壁を見上げていた。追放されて以来、王宮に戻ることはないと思っていたが、カトリーナの陰謀を暴き、自分の名誉を取り戻すためには避けて通れない道だった。
「ステラ様、本当にここから潜入するおつもりですか?」
隣でエリオットが心配そうに尋ねる。
「せや。正面から行ったら捕まるだけやろ?ほんなら、裏口からコソッと入るしかないやん。」
「ですが、王宮の警備は非常に厳重です。以前よりも警備が強化されているという情報もあります。」
「大丈夫や。浪速流の知恵を活かせば、何とかなる。」
ステラは自信たっぷりに言い放つと、荷車に隠れて王宮に潜入する計画を説明し始めた。
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荷車作戦の準備
王宮には毎日、大量の物資が搬入される。食材や日用品、さらに一部の贅沢品まで運び込まれるため、それを利用することにしたのだ。
「ほな、この荷車に紛れ込んで入るんや。」
エリオットはため息をつきながらも、彼女の計画に従うことを決めた。
「分かりました。しかし、荷車に隠れる際には音を立てないようにしてください。」
「任せとき!これでもウチは昔、商店街でコソコソ動くの得意やったんや。」
その言葉に、エリオットは苦笑いしながらも準備を進めた。
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王宮への潜入
夜が更け、月明かりが薄く広がる中、荷車が王宮の裏門に近づいた。警備兵が荷物を確認する様子を見ながら、ステラは息を潜めて荷物の中に身を隠していた。
「こりゃあ、厳しいな…。でも、これが通らんと話にならん。」
荷車が警備兵に止められた瞬間、ステラは全身に緊張を走らせた。
「何を運んでいる?」
「野菜や小麦、それにワインです。」
荷車を運ぶ商人が答えると、警備兵が荷物を確認し始めた。
「…怪しい物はないようだ。通れ。」
荷車が再び動き出すと、ステラは胸を撫で下ろした。
「ふぅ、危なかったな。これで王宮の中や。」
荷車が止まると、ステラは素早く荷物の隙間から抜け出し、暗がりに身を潜めた。
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王宮内の探索
「まずは情報収集やな。どこにカトリーナの陰謀の証拠があるか突き止めな。」
ステラは王宮内の隅々を歩き回りながら、かつて過ごした場所を懐かしむような表情を見せた。しかし、すぐに気を引き締め、周囲を注意深く観察し始めた。
「警備が増えとるけど、動きが単調やな。こっちの隙を狙えるわ。」
ステラは警備兵の動きを見極めながら、王宮の奥へと進んでいく。
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意外な協力者
ある廊下を進んでいると、遠くから足音が聞こえてきた。
「まずい、隠れな!」
ステラは慌ててカーテンの陰に身を隠した。その直後、侍女の制服を着た女性たちが現れた。
「え…ステラ様?」
その中の一人が驚いた声を上げた。
「え?ウチのこと知っとるん?」
ステラがカーテンの陰から顔を出すと、侍女たちは駆け寄ってきた。
「やっぱりステラ様です!私たち、ずっと信じていました。カトリーナ様が何か裏で動いていると…。」
「ほな、ウチに協力してくれるんか?」
侍女たちは頷き、すぐに周囲を警戒し始めた。
「こちらへどうぞ、安全な場所へ案内します。」
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協力者の存在
侍女たちに案内され、ステラは王宮内の隠れた一室に通された。その部屋には、かつて彼女に仕えていた侍女たちが待っていた。
「ステラ様、ずっとお戻りをお待ちしておりました。」
「おおきに、みんなが味方でほんま助かるわ。」
彼女たちはステラに王宮での現状を説明した。カトリーナがどのようにして権力を握り、儀式を通じて彼女を完全に貶めようとしているのか、その全貌が明らかになった。
「儀式って、なんのことや?」
「カトリーナ様は、次の満月の夜に『聖女の真実を証明する儀式』を行うと宣言しています。それが偽聖女としてステラ様を完全に失墜させるためのものだと…。」
その言葉に、ステラは飴を噛み砕きながら不敵な笑みを浮かべた。
「ほんなら、その儀式を逆手に取ったらええってことやな。」
「逆手に…ですか?」
「せや。ウチが偽聖女なんかちゃうこと、みんなに見せつけたる。」
侍女たちはその言葉に力強く頷き、ステラと共にカトリーナの陰謀を暴くための準備を始めるのだった。
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