証拠の数々が公開され、カトリーナの陰謀が暴露された直後、会場に漂っていた緊張感は、王太子カルヴィンの視線がカトリーナに注がれることでさらに強まった。王宮の未来を背負う彼が、公衆の面前でどのような判断を下すかは、貴族たちにとっても注目の的だった。
「カトリーナ…これは一体どういうことだ?」
カルヴィンは冷たい視線を向けながら静かに問いかけた。その声には怒りと失望が滲んでおり、場の空気をさらに重くしていった。
カトリーナは震える声で言い訳を始めた。
「お、王太子殿下!これは何者かによる陰謀です!私を貶めようとしている者たちが仕組んだ罠に違いありません!」
「罠だと?」
カルヴィンの声が一段と低くなると、会場は完全な静寂に包まれた。
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カルヴィンの苦悩
カルヴィンはしばらく黙り込んだ後、目を閉じて深く息を吐いた。そして、再び視線を上げると、その目はカトリーナだけでなく、周囲の貴族たちをも鋭く見据えていた。
「ステラの主張する証拠は明確だ。神託の石、清浄なる水の試練、それに賄賂の記録まである。これらを無視することはできない。」
その言葉に、カトリーナはさらに動揺し、泣き崩れるようにして叫んだ。
「殿下!私はただ…ただ王国のために…!」
「それならば、なぜ不正を行ったのだ?」
カルヴィンの問いに、カトリーナは言葉を詰まらせた。その瞬間、会場の空気が完全に変わった。
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カトリーナとの関係が疑われる
貴族たちの中から囁き声が聞こえ始めた。
「王太子殿下はカトリーナ様を擁護するのか…?」
「いや、それは難しいだろう。この状況では…。」
囁きが次第に大きくなり、ついには堂々と口にする者まで現れた。
「王太子殿下、これまでカトリーナ様を庇護してきたことについて、我々にも説明が必要ではありませんか?」
その一言が、カルヴィンに対する疑念を一気に広げた。
「まさか…殿下もこの計画に関与していたのでは?」
その言葉に、カルヴィンの顔が険しくなる。彼はその場で立ち上がり、堂々とした声で宣言した。
「私は何も知らなかった!」
彼の声は会場中に響き渡り、その言葉には揺るぎない意志が込められていた。しかし、それでも疑念を完全に拭い去ることはできなかった。
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ステラの一言
そのとき、ステラが一歩前に出て、カルヴィンに向けて飴を差し出した。
「まあまあ、そんなカッカせんと落ち着きや、殿下。」
その意外な行動に、会場内は一瞬ぽかんとした静寂に包まれた。
「何をするつもりだ…?」
カルヴィンが戸惑いの声を上げると、ステラはにっこり笑った。
「飴はな、甘さで頭を冷やす力があるんや。ウチら浪速ではこれで喧嘩も収めるんやで。」
その軽妙な言葉に、会場内の空気が少しだけ和らいだ。
「…君は相変わらずだな。」
カルヴィンはため息をつきながらも、差し出された飴を受け取った。その様子を見て、貴族たちは再びざわめき始めた。
「ステラ様がこの場を和らげた…?」
「いや、それだけで終わるわけがないだろう。」
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カルヴィンの決断
飴を受け取ったカルヴィンは、それをポケットにしまいながら、再びカトリーナに視線を向けた。
「私は君を信じていた。それが間違いだったというのか?」
カトリーナは涙を流しながら、必死に首を振った。
「違います!殿下、どうかお信じください!」
しかし、カルヴィンの目には既に迷いがなかった。
「カトリーナ、この件は徹底的に調査させてもらう。もし君が本当に無実であれば、そのときは名誉を回復させよう。しかし、もし不正が事実であれば…君はその責任を取らなければならない。」
その言葉に、会場内の貴族たちは一様に頷いた。
「殿下は正しい判断を下されている…。」
「やはり、真実を明らかにするべきだ。」
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ステラの視点
カルヴィンの言葉を聞き終えたステラは、小さく頷きながら呟いた。
「やっと目が覚めたみたいやな、殿下。」
エリオットが静かに近づき、小声で話しかけた。
「ステラ様、殿下が動揺している間に、さらに証拠を突きつけるべきでは?」
「いや、それはもうええやろ。真実は自分で見つけさせた方が効くんや。」
ステラの言葉にはどこか温かさがあり、エリオットもそれ以上は何も言わなかった。
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次なる一手へ
ステラの行動とカルヴィンの決断により、会場の雰囲気は大きく変わり始めていた。カトリーナが主導していた陰謀は崩れかけ、王太子カルヴィンの心にも疑念と責任が芽生えた。
「さあ、これでまだ終わりちゃう。これからどう転ぶか、見ものやな。」
ステラは飴を口に放り込み、次なる展開を静かに見据えていた。
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