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第22話 王太子の動揺

 証拠の数々が公開され、カトリーナの陰謀が暴露された直後、会場に漂っていた緊張感は、王太子カルヴィンの視線がカトリーナに注がれることでさらに強まった。王宮の未来を背負う彼が、公衆の面前でどのような判断を下すかは、貴族たちにとっても注目の的だった。


「カトリーナ…これは一体どういうことだ?」


カルヴィンは冷たい視線を向けながら静かに問いかけた。その声には怒りと失望が滲んでおり、場の空気をさらに重くしていった。


カトリーナは震える声で言い訳を始めた。


「お、王太子殿下!これは何者かによる陰謀です!私を貶めようとしている者たちが仕組んだ罠に違いありません!」


「罠だと?」


カルヴィンの声が一段と低くなると、会場は完全な静寂に包まれた。



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カルヴィンの苦悩


カルヴィンはしばらく黙り込んだ後、目を閉じて深く息を吐いた。そして、再び視線を上げると、その目はカトリーナだけでなく、周囲の貴族たちをも鋭く見据えていた。


「ステラの主張する証拠は明確だ。神託の石、清浄なる水の試練、それに賄賂の記録まである。これらを無視することはできない。」


その言葉に、カトリーナはさらに動揺し、泣き崩れるようにして叫んだ。


「殿下!私はただ…ただ王国のために…!」


「それならば、なぜ不正を行ったのだ?」


カルヴィンの問いに、カトリーナは言葉を詰まらせた。その瞬間、会場の空気が完全に変わった。



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カトリーナとの関係が疑われる


貴族たちの中から囁き声が聞こえ始めた。


「王太子殿下はカトリーナ様を擁護するのか…?」

「いや、それは難しいだろう。この状況では…。」


囁きが次第に大きくなり、ついには堂々と口にする者まで現れた。


「王太子殿下、これまでカトリーナ様を庇護してきたことについて、我々にも説明が必要ではありませんか?」


その一言が、カルヴィンに対する疑念を一気に広げた。


「まさか…殿下もこの計画に関与していたのでは?」


その言葉に、カルヴィンの顔が険しくなる。彼はその場で立ち上がり、堂々とした声で宣言した。


「私は何も知らなかった!」


彼の声は会場中に響き渡り、その言葉には揺るぎない意志が込められていた。しかし、それでも疑念を完全に拭い去ることはできなかった。



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ステラの一言


そのとき、ステラが一歩前に出て、カルヴィンに向けて飴を差し出した。


「まあまあ、そんなカッカせんと落ち着きや、殿下。」


その意外な行動に、会場内は一瞬ぽかんとした静寂に包まれた。


「何をするつもりだ…?」


カルヴィンが戸惑いの声を上げると、ステラはにっこり笑った。


「飴はな、甘さで頭を冷やす力があるんや。ウチら浪速ではこれで喧嘩も収めるんやで。」


その軽妙な言葉に、会場内の空気が少しだけ和らいだ。


「…君は相変わらずだな。」


カルヴィンはため息をつきながらも、差し出された飴を受け取った。その様子を見て、貴族たちは再びざわめき始めた。


「ステラ様がこの場を和らげた…?」

「いや、それだけで終わるわけがないだろう。」



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カルヴィンの決断


飴を受け取ったカルヴィンは、それをポケットにしまいながら、再びカトリーナに視線を向けた。


「私は君を信じていた。それが間違いだったというのか?」


カトリーナは涙を流しながら、必死に首を振った。


「違います!殿下、どうかお信じください!」


しかし、カルヴィンの目には既に迷いがなかった。


「カトリーナ、この件は徹底的に調査させてもらう。もし君が本当に無実であれば、そのときは名誉を回復させよう。しかし、もし不正が事実であれば…君はその責任を取らなければならない。」


その言葉に、会場内の貴族たちは一様に頷いた。


「殿下は正しい判断を下されている…。」

「やはり、真実を明らかにするべきだ。」



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ステラの視点


カルヴィンの言葉を聞き終えたステラは、小さく頷きながら呟いた。


「やっと目が覚めたみたいやな、殿下。」


エリオットが静かに近づき、小声で話しかけた。


「ステラ様、殿下が動揺している間に、さらに証拠を突きつけるべきでは?」


「いや、それはもうええやろ。真実は自分で見つけさせた方が効くんや。」


ステラの言葉にはどこか温かさがあり、エリオットもそれ以上は何も言わなかった。



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次なる一手へ


ステラの行動とカルヴィンの決断により、会場の雰囲気は大きく変わり始めていた。カトリーナが主導していた陰謀は崩れかけ、王太子カルヴィンの心にも疑念と責任が芽生えた。


「さあ、これでまだ終わりちゃう。これからどう転ぶか、見ものやな。」


ステラは飴を口に放り込み、次なる展開を静かに見据えていた。



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