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第24話 名誉回復の兆し

 カトリーナの陰謀が完全に暴かれた儀式の場では、貴族たちがステラを中心に新たな流れを作り始めていた。追放された聖女が復権する光景は、誰もが予想しなかった展開であり、それ以上に彼女の行動がもたらした感動と衝撃が、人々の心を大きく揺さぶっていた。


しかし、ステラ本人はというと、壇上の上で飴を口に放り込み、特に気負う様子もなく貴族たちを見下ろしていた。


「ほな、これでウチの話は終わりやな。みんな、もうええやろ?」


その気さくな言葉に、会場にいた貴族たちは一瞬ぽかんとした表情を浮かべたが、すぐに笑い声と拍手が巻き起こった。



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貴族たちの謝罪


貴族たちは次々とステラの元へ近づき、頭を下げて謝罪の言葉を述べ始めた。


「ステラ様、これまでの非礼をどうかお許しください。」

「私たちはカトリーナの言葉を盲信し、本当の聖女を見誤りました。」


その言葉に、ステラは軽く手を振って答えた。


「まあ、ええやん。誰でも間違いはある。せやけど、これからは気をつけるんやで?」


その寛大な態度に、さらに多くの貴族が頭を下げた。


「これほど器の大きい方を偽聖女扱いするなんて、我々の恥です…。」

「ステラ様こそ、王国を導く真の聖女です!」



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カルヴィンの決断


その様子を黙って見ていた王太子カルヴィンが、壇上へと歩み寄った。その表情には、これまでにない真剣さが宿っていた。


「ステラ。」


その名を呼ぶ声には、先ほどまでの迷いや動揺はなく、王太子としての決意が感じられた。


「君が本物の聖女であることは、この儀式で証明された。そして君を追放したこと、それに伴う全ての過ちについて、私は深く反省している。」


カルヴィンは壇上で深々と頭を下げた。その行動に、会場内の貴族たちは驚き、ざわめきながらも再び静寂に包まれた。


「…ウチに謝らんでもええよ。」


ステラの言葉に、カルヴィンは顔を上げ、困惑したような表情を浮かべた。


「君は許すというのか?」


「許すも何も、ウチがやりたかったんは真実を明らかにすることだけや。謝罪なんかより、これからどうするかの方が大事やろ?」


その率直な言葉に、カルヴィンは一瞬言葉を失ったが、すぐに小さく頷いた。


「その通りだ。私は、君が王国に必要な存在だと確信している。」



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名誉回復の宣言


カルヴィンは壇上から貴族たちに向けて宣言を始めた。


「本日をもって、ステラを偽聖女とする全ての告発を取り消し、その名誉を完全に回復する。また、追放という処分も正式に撤回する。」


その言葉に、会場から大きな拍手と歓声が上がった。


「これこそが正しい決断だ!」

「ステラ様は戻るべき場所に戻るのだ!」


貴族たちの反応を見て、ステラは少し照れくさそうに頭を掻きながら呟いた。


「いやー、なんか褒められすぎて、逆に落ち着かへんな。」


エリオットが後ろから軽く微笑みながら言葉を添えた。


「ステラ様、それがあなたの力です。人々の心を掴むその姿勢が。」



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カトリーナの末路


その一方で、壇上の隅で膝をついていたカトリーナは、顔を伏せたまま動かなかった。彼女が仕掛けた陰謀が全て暴かれたことで、もはや挽回の余地は残されていなかった。


「カトリーナ、これ以上は無駄だ。」


カルヴィンの冷たい声に、彼女はゆっくりと顔を上げた。その目には涙と絶望が滲んでいた。


「殿下…私は…ただ…」


「言い訳は聞かない。君の行為は許されるものではない。」


彼女の処遇については、その場で決定されることはなかったが、カトリーナが王宮から追放されるのは時間の問題だった。



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ステラの思い


儀式が終わり、会場の空気が落ち着きを取り戻す中、ステラは一人静かに空を見上げていた。


「これでウチの名誉も回復した…っちゅうことなんやろな。」


エリオットが隣に立ち、小声で話しかけた。


「ええ、これでステラ様の目標は達成されました。」


「でも、まだやることはあるやろ。これからが本番や。」


その言葉に、エリオットは小さく微笑みながら頷いた。


「はい、これからが新たなスタートですね。」



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新たな旅路


名誉を取り戻したステラは、王宮からの正式な復帰を求められるが、それを一旦断ることにした。


「王宮に戻るのも悪くないけど、ウチにはまだ行きたいところがあるんや。」


その言葉に、カルヴィンや貴族たちは驚きつつも、彼女の意志を尊重することにした。


「ステラ様がどこに行こうとも、王国はあなたを支えます。」


その言葉を受け取ったステラは飴を口に放り込み、大きく笑った。


「ほんなら、またいつか会おな!」


浪速魂を胸に、彼女は新たな道へと進むのだった。





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