カトリーナの陰謀が暴かれ、彼女の支持者が次々と離れていく中、儀式会場にはなおも重苦しい空気が漂っていた。その中心にいるのは、王太子カルヴィンとステラだった。
カルヴィンは困惑した表情を浮かべたままステラに向き直った。
「ステラ…いや、聖女ステラよ。一つ聞きたいことがある。」
その声に、会場にいた貴族たちがざわついた。彼の目は真剣そのものであり、彼の心中の葛藤を物語っていた。
「なんや、殿下。そんなかしこまらんでもええよ。ウチ、普通の人やから。」
ステラは肩をすくめながら飴を口に放り込む。その軽妙な態度に、貴族たちは驚きながらも静かに耳を傾けた。
---
カルヴィンの問い
カルヴィンはその言葉を無視して、ステラに問いかけた。
「なぜ戻ってきた?追放され、全てを失ったはずの君が、なぜこの王宮に戻ってきたのだ?」
その言葉には疑念だけでなく、わずかな怒りと困惑も含まれていた。
「君が戻ることで、王国が混乱する可能性もあった。それでも戻ってきた理由は何だ?」
ステラは飴を噛み砕きながら、少し考え込むように視線を天井に向けた。
「なんや、それが気になっとったんか。ほんまに殿下は真面目やな。」
「真面目で何が悪い!」
カルヴィンの語気が強まる。しかし、ステラは微動だにせず、笑みを浮かべながら話し始めた。
---
ステラの理由
「ウチが戻ってきた理由?それは簡単や。」
彼女は壇上から貴族たちに視線を向け、静かに語り始めた。
「嘘を嘘のままにしとくのが嫌やったんや。」
その言葉に、会場の貴族たちがざわつき始めた。
「嘘を嘘のままに…?」
「どういう意味だ?」
カルヴィンも眉をひそめながらステラを見つめる。
「カトリーナがどれだけ嘘ついて、どれだけウチを偽聖女扱いしようとしたか。そんなん、どうでもええ。ウチが許せんかったんは、その嘘がまかり通っとるこの状況や。」
ステラは胸を張りながら続けた。
「王国が嘘で塗り固められとるなんて、そんなん、ウチの浪速魂が許さへんかったんや。」
---
カルヴィンの動揺
その言葉に、カルヴィンは一瞬口を閉ざした。そして、ゆっくりと口を開いた。
「しかし、それが王国全体を巻き込む結果になると分かっていたのか?」
「そりゃ分かっとったよ。」
ステラは淡々と答える。その率直な態度に、カルヴィンは思わず声を荒げた。
「分かっていながら、なぜ…!」
「分かっとったからこそ、やらなあかんかったんや。」
ステラの目は真剣そのものだった。
「殿下、ウチが戻らんかったら、この王国はどうなっとったと思う?カトリーナの嘘がずっと続いて、みんながそれを信じ続けとったら、ほんまにええ国になる思うか?」
その問いかけに、カルヴィンは言葉を詰まらせた。
---
ステラの反論
「せやけど、ウチが戻ってきたおかげで、みんな気づいたやろ?何が真実で、何が嘘かを見極める目を持たなあかんって。」
彼女は会場の貴族たちに視線を向ける。その目は、ただの追放された聖女のものではなく、国全体を見据える覚悟を持った人物のものだった。
「それが分かるまで、ウチは何度でも戻ってくるつもりやった。殿下、そんなん、あかんかったんか?」
その問いかけに、カルヴィンは再び黙り込んだ。彼は答えを探すように目を伏せ、しばらく考え込んだ後、静かに顔を上げた。
「君の言葉には、一理ある。」
---
カルヴィンの理解
「確かに、私は王宮という狭い世界でしか物事を見ていなかった。君のように、外からこの国を見たことがなかったのだろう。」
カルヴィンの言葉に、ステラは小さく頷いた。
「そや。王宮におると、見えへんもんがいっぱいある。それを知っとるから、ウチはここに戻ってきたんや。」
カルヴィンはその言葉に応えるように、深く息を吐いた。
「分かった。君の決意は本物だ。そして、それを理解できなかった私が愚かだった。」
---
和解と決断
カルヴィンは壇上で深く頭を下げた。その姿に、会場の貴族たちは驚きと敬意の視線を送った。
「ステラ、私は王太子として、君に謝罪する。そして、この王国を君とともに立て直したい。」
その言葉に、ステラは少し驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの笑みを浮かべた。
「ほな、ウチが殿下に協力したるわ。でもな、その代わりに一つ約束してや。」
「約束…?」
「嘘をつくんは、これで最後にしてや。王国の未来のためにもな。」
カルヴィンは真剣な表情でその言葉を受け止め、力強く頷いた。
「約束しよう。」
---
浪速流の勝利
この瞬間、ステラは王太子との和解を果たし、名誉だけでなく、王国全体を動かす力を手に入れた。その場にいた全ての人々が、彼女の決意と真実を讃えた。
「さて、ほな次はウチらの未来をどうするか、考えなあかんな。」
ステラの浪速流の逆転劇は、これで一つの区切りを迎えたが、彼女の物語はまだ終わらない。
--