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第3話「クラリッサとギルドの新人たち」

ギルドの朝は早い。

冒険者たちが寝ぼけ眼で集まり始める頃、クラリッサはすでに帳簿と格闘していた。


「このバカ、新人のくせに“ドラゴンの爪”とか受けやがって……あたしが止めなきゃ死んでたな。はい、レポート赤入れっと」


そこへ、ドアがガチャッと開く音。


「失礼します! 本日からギルドに配属された新人パーティー、スモールファングです!」


真新しい装備に身を包んだ三人組が、緊張で顔をこわばらせながら入ってきた。


「……へぇ、やけに礼儀正しいじゃないの。気合は十分みたいだけど、その装備じゃスライムでも怪我するわよ?」


「えっ!? い、いえ、ちゃんと村の鍛冶屋で――」


「それが問題なんだよ! あそこの鍛冶屋、安いけど耐久スッカスカなの! ほら、あたしの包丁貸してやるから触ってみな!」


クラリッサは腰から包丁を取り出し、机にトンと置いた。


「こ、これ……ずしっと重い……!」


「魔鉱石入りの実戦用さ。切れ味も文句なし。……ま、それより大事なのは自分の身の丈を知ること。背伸びして死んだら意味ないでしょ?」


新人たちは顔を見合わせ、小さく頷いた。


「まずはスライム掃除からだね。それが終わったら、あたしんとこ来な。戦いのコツ、飯の炊き方、テントの張り方、ぜーんぶ教えてやるよ!」


「は、はい! クラリッサさん、よろしくお願いします!」


「クラリッサ“さん”じゃない。クラリッサ“姐さん”って呼びな!」


――こうして、新たな弟子(?)がクラリッサの元に加わった。

受付嬢としてだけでなく、ギルドの母として。

彼女の活躍は、今日もギルドに笑いとスープの香りをもたらしていく。

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