目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第2話 追放の兆し

 王宮内では、穏やかに日々を過ごすシャウラの姿とは対照的に、重苦しい空気が漂っていた。聖女の能力に関して、廷臣たちの間で不穏な噂が囁かれ始めていたからだ。


「最近のシャウラ様はどうも……お祈り中に居眠りするなど、国の未来を考えると不安ではないか?」

「確かに、あのような天然な性格が災いを招くことがないとは言い切れぬな。」


広間の隅で交わされる廷臣たちの囁きは、次第に大きな議論へと発展していった。



---


廷臣たちの不満


聖女シャウラがもたらす奇跡は誰もが認めるところであった。しかし、彼女のふんわりとした性格が「責任感に欠ける」と見なされ、特に高位の廷臣たちの間では、次第に彼女への信頼が揺らいでいた。


「確かに、聖女の祈りで国は守られている。しかし、もし彼女が本当に無能であるなら、この国はいつか滅びるのではないか?」

そう言ったのは、老廷臣ハルゼンだった。彼は若い頃から聖女の役割がいかに重要であるかを見てきたため、その判断には慎重だったが、最近のシャウラの行動には限界を感じていた。


「新しい聖女を擁立するという案が、現実的ではないか?」

別の廷臣が提案すると、場内がざわめいた。


「新しい聖女……だと?」

「だが、現在のシャウラ様をその座から降ろすのは容易ではない。国民からの信仰も厚い。」

「だからこそ、慎重に準備を進めねばならん。」


廷臣たちは互いに顔を見合わせ、議論を続けた。



---


新しい聖女の候補者


その頃、聖女候補の中で注目を集めていたのがリナリアという若い女性だった。彼女は高い魔力と優れた知性を兼ね備え、すでに魔法学院を首席で卒業していた。加えて、美しい容姿と真面目な性格も人々から高く評価されていた。


「リナリア様なら、現在の聖女よりも的確に国を導けるのではないか?」

ある廷臣がそう言うと、賛同する声が次々と上がった。


「確かに、彼女ならば聖女の役割を果たせるだろう。そして、国民の支持も得られるはずだ。」

「では、シャウラを聖女の座から降ろす計画を進めるとしよう。」


こうして、シャウラを追放し、リナリアを新たな聖女として擁立する陰謀が本格的に動き始めた。



---


シャウラの平穏な一日


一方その頃、シャウラは庭園の祈祷所でお昼の祈りをしていた。温かな日差しに包まれ、花の香りが漂う中で、彼女はいつものように手を合わせる。


「どうか、皆さんが今日も元気で過ごせますように……。それから、美味しいものがたくさん実りますように……ふぁぁ……。」


シャウラは思わず欠伸を漏らした。


「やっぱり、最近なんだか眠いですねぇ……。」


そのまま彼女は祈りの最中に目を閉じ、またしてもうたた寝を始めてしまった。侍女がその様子に気づき、慌てて駆け寄る。


「シャウラ様、お目覚めくださいませ!またお祈りの途中でお休みになられて……」


シャウラは目をこすりながら、にこやかに笑った。

「あら、ごめんなさい。でも、いい夢が見られましたよ。お花畑がとっても綺麗で、皆さんが楽しそうに笑っていました。」


侍女は何も言えず、ただ苦笑するしかなかった。



---


廷臣たちの動き


その日の夕方、廷臣たちは国王のもとに集まり、シャウラを追放する計画について話し合っていた。


「陛下、現在の聖女ではこの国の未来が危ぶまれます。新しい聖女リナリアを擁立することを正式にご決断ください。」

老廷臣ハルゼンが静かに語りかけると、国王は難しい顔をして黙り込んだ。


「だが、シャウラを追放すれば、国民がどう反応するか分からぬ。彼女の存在は国民にとって希望そのものだ。」

国王の言葉に廷臣たちは一瞬黙り込んだが、やがて別の廷臣が説得を試みた。


「陛下、今のままでは国が危険にさらされます。新しい聖女を迎えることで、国の体制を強化できるのです。」


国王は深い溜息をつき、最終的にその案を受け入れた。

「分かった。ただし、慎重に事を運べ。国民に混乱を招かぬよう、計画を進めよ。」



---


シャウラへの命令


数日後、シャウラは謁見の間に呼び出された。彼女は特に緊張する様子もなく、いつもの穏やかな笑顔で国王の前に立った。


「シャウラ、お前には感謝している。長きにわたり、この国を守ってくれたことを。」


「まあ、ありがとうございます!でも、私、そんな大したことしていませんよ。ただお祈りしてただけですし。」


その無邪気な返答に、廷臣たちは内心で舌打ちをした。


「だが、我々は次の段階へ進む必要がある。新しい聖女を擁立し、この国の未来を切り拓かねばならぬ。そのために、シャウラ、お前には国外へ退去してもらう。」


シャウラは一瞬目を丸くしたが、すぐに納得したように頷いた。


「そうなんですね!新しい聖女さんがいらっしゃるなら安心です!じゃあ、私は隣国でのんびりしますね~。」


そのあまりにあっさりとした反応に、廷臣たちは拍子抜けしてしまった。



---



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?