隣国での生活が始まって数日、シャウラは宿場町での生活にすっかり馴染んでいた。街の人々も彼女の穏やかな性格と美しい笑顔に惹かれ、彼女を見かけるたびに挨拶を交わしてくれるようになっていた。
そんなある日、シャウラは宿の庭で咲き誇る花々を眺めて思いついた。
「ここに来てからいろんな人に助けてもらってますし、何かお礼がしたいなぁ。でも、私にできることって何だろう……あ、そうだ!お花屋さんをやってみるのはどうでしょう?」
彼女は目を輝かせ、早速宿の主人に相談した。
---
花屋の計画
「お花屋さん、ですか?」
宿の主人は驚きながらも、興味深そうに彼女の話を聞いた。
「はい!お花は人を笑顔にする力がありますよね。それに、この町には市場があるけれど、専門的なお花屋さんはないみたいですし、きっと皆さん喜んでくれると思うんです。」
シャウラは無邪気に微笑みながら説明を続けた。
「私は毎日、祈りを捧げながらお花を育てるのが好きでした。隣国でも、その楽しさを分かち合えたら素敵だなぁと思ったんです。」
その熱意に心を動かされた宿の主人は、彼女の提案を快く受け入れた。
「それなら、この宿の庭を使ってみてはいかがですか?ここは街道沿いで人通りも多いですし、シャウラ様のような方がお店を開けば、きっとたくさんの人が訪れるでしょう。」
「まあ!本当ですか?ありがとうございます!」
シャウラは嬉しそうに宿の主人の手を取って感謝を述べた。
---
お花屋さんの準備
早速、シャウラは花屋の準備を始めた。まずは近くの農家や市場を訪れ、花の種や苗を買い集めた。市場の商人たちは彼女の笑顔に惹かれ、特別に良い品を分けてくれることもあった。
「シャウラ様、こんなに多くの苗を買われてどうされるんですか?」
市場の商人が尋ねると、シャウラは嬉しそうに答えた。
「お花屋さんを始めようと思っているんです!皆さんに綺麗なお花を届けて、少しでも幸せな気持ちになってもらえたらなぁって。」
「それは素晴らしい考えですね!ぜひ、私たちも協力させてください。」
こうして、街の人々の協力を得ながら、シャウラは庭にたくさんの花を植え始めた。彼女の手によって植えられた花々は、どれも驚くほど鮮やかに咲き誇り、その美しさに町の人々は驚かされた。
---
最初のお客様
数日後、シャウラの花屋が開業した。宿の庭に立てられた小さな看板には、「シャウラのお花屋さん」と書かれており、その下には「笑顔を届けます」の一言が添えられていた。
開店して間もなく、最初のお客様がやってきた。それは小さな女の子を連れた若い母親だった。
「こんにちは!お花屋さんを始められたと聞いて伺いました。」
母親は微笑みながら挨拶をした。
「まあ、ありがとうございます!どんなお花をお探しですか?」
シャウラは嬉しそうに尋ねた。
「実は、娘が最近元気がなくて……お花が好きなので、部屋に飾ってあげたら少しでも明るくなるかなと思って。」
「それは素敵なアイディアですね。どんなお花がいいかしら?」
シャウラは女の子の顔を見つめながら尋ねた。
女の子は少し恥ずかしそうにしながらも、小さな声で答えた。
「黄色いお花がいい……」
「黄色いお花ですね!お日様みたいに元気をくれる色ですよね。」
シャウラは庭から一番元気に咲いている黄色い花を摘み、リボンで可愛く束ねて手渡した。
「ありがとうございます!」
女の子はその花を大事そうに抱きしめ、母親と一緒に嬉しそうに帰っていった。
---
評判の広がり
その後も、シャウラの花屋には次々とお客様が訪れた。庭に咲く花々の美しさと、シャウラの穏やかな対応が評判を呼び、町の人々の間で彼女の店の話題が広まった。
「シャウラ様のお花は本当に綺麗で、部屋が明るくなりました!」
「あの店で花を買うと、なんだか元気が湧いてくるんですよ。」
人々の噂はどんどん広がり、隣の村や街からも花を求めて訪れる人が現れ始めた。
---
御者の観察
一方、シャウラのそばでその様子を見守っていた御者は、彼女の無自覚な力を改めて実感していた。彼女が花に触れるたび、祈るたびに、花がより美しく咲き誇るのを目の当たりにしたからだ。
「シャウラ様の祈りが、ここでも奇跡を起こしているのか……」
御者は彼女の無邪気な笑顔を見ながら、心の中で呟いた。
しかし、その一方で、追放された国がどのような状況に陥っているのかを思うと、胸が重くなるのを感じていた。