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第17話 隕石の影響

 シャウラが追放され、国境を越えた瞬間に落下した巨大な隕石――その衝撃は、一瞬で国全体を壊滅的な状況に追い込んだ。隕石が落ちた場所は国の中心部、王都の外れにある広大な平原だったが、その破壊力は甚大で、半径数十キロメートルの範囲を焦土と化した。



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隕石の直接的な被害


王都から見える空に突如現れた火の玉は、昼間にもかかわらず夜空のような暗闇を生み出した。轟音とともに地表に激突した瞬間、大地が揺れ、地平線に巨大な炎が立ち上る。その光景を目の当たりにした王都の人々は、恐怖のあまりその場に膝をついた。


「これは……神の怒りだ!」

「何が起きているんだ?この国はどうなってしまうのか!」


隕石の衝撃波によって、王都の建物の多くが崩壊し、周辺の村々も甚大な被害を受けた。川は干上がり、大地には巨大な亀裂が走り、作物は灰と化した。


特に農業が盛んな地域での被害は甚大で、国の食料供給に壊滅的な打撃を与えた。飢えに苦しむ人々が溢れ出し、都市部には次第に暴徒が出現するようになった。



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隕石の余波


隕石による直接的な被害だけでなく、余波として起きた天候の変化が国をさらに追い詰めた。衝突の衝撃で大量の塵と煙が空に舞い上がり、日光を遮ったことで、気温が急激に低下した。国中に冷害が広がり、作物が育たなくなった。


「太陽が……見えない……。」

農民たちは青ざめた顔で枯れ果てた畑を見つめていた。


更に悪いことに、隕石の落下地点から毒性のあるガスが発生し、周囲の生態系を徐々に蝕んでいった。これにより、家畜は次々と倒れ、村人たちも奇妙な病気に侵され始めた。


「これは……終わりだ。国そのものが滅びようとしている。」

村長たちは打ちひしがれた声で呟き、住民たちを避難させるも、どこへ行っても安全な場所は見つからなかった。



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内乱の発生


隕石の被害が引き金となり、国のあらゆる問題が一気に表面化した。特に、飢餓が人々を暴徒化させ、都市部では略奪や暴動が頻発した。


「食べ物をよこせ!俺たちは飢えているんだ!」

暴徒たちは食糧倉庫や富裕層の屋敷を襲い、財産を奪い取った。


王宮にもその波が押し寄せた。宮廷に集められていた貴族たちは、次々と自分たちの領地へと逃げ戻り、国王は孤立していった。


「陛下、もはやこの状況を収める手立てはありません。軍も反乱軍に押され、王都の防衛すらままなりません!」

報告を受けた国王は頭を抱えた。かつては平和と繁栄を誇ったこの国が、一瞬にして崩壊の危機に瀕している現実を前に、彼もまた無力だった。



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飢饉の拡大


隕石の影響で発生した飢饉は、最初は農村部を中心に広がったが、次第に都市部にも波及した。国の物流が麻痺し、地方からの食料供給が途絶えたため、都市の住民たちは飢えに苦しみ始めた。


「市場にはもう何も残っていない……。」

「食料があっても、値段が高すぎて買えない……。」


市場は荒廃し、金を持つ者だけがわずかな食料を買い占め、貧しい者たちは飢え死にするしかなかった。


一部の村では、食料を求めて争いが起き、家族同士が殺し合う悲劇も発生した。

「このままでは、私たち全員が死ぬ……。」



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人々の恐怖と絶望


隕石の影響で国全体が荒廃する中、民衆の間では恐怖と絶望が支配的になっていった。そして、次第にある噂が広がり始めた。


「これは聖女を追放した罰ではないか?」

「シャウラ様がいなくなった途端、こんな災厄が降りかかるなんて……。」


追放された聖女シャウラへの懺悔と後悔の声が、民衆の間でささやかれるようになった。特に、シャウラが祈りを捧げていた時期の国の平和さを知る者たちは、声を上げて訴えた。


「彼女を追放したことで、この国は神に見放されたのだ!」

「シャウラ様を呼び戻さない限り、私たちは救われない……!」


民衆の信仰は崩壊の危機に瀕し、かつての信仰の対象だった王家や新しい聖女に対する信頼は失われていった。





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