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第3話

***


 五十名の騎士の中に、たくさんの知り合いがいて、俺が一緒に遺跡に赴くことを喜んでくれたのが嬉しかった。しかも自分たちが使わなくなった鎧や剣を、俺にプレゼントまでしてくれて。


「アレックスがいなくなったら、誰が馬の世話をすることになるんだ。絶対に困るだろ。だから俺たちのお古だけど、どうか受け取ってくれ」


 そう言って手渡された鎧を身に纏い、剣を携えて大勢の騎士とともに、隣国との狭間にある遺跡を目指した。


「それにしてもよ、隣の国の腕のたつ騎士がほとんど戻らないなんて、いったいどんな試練が待ち構えているんだろうな」

「まれにだけど、生還者もいるらしいぜ。魂が抜けたみたいな顔してたって噂だけど」


 向かう道中にかわされた会話は、暗い内容がほとんどだった。お互いありとあらゆる試練を想定し、対処できるように相談しているようにも感じた。隣国との狭間を目指す騎士団の行軍は、まるで王国の命運を背負う最後の希望のようだった。


 大勢の騎士たちは馬に乗りながら重たい鎧を鳴らし、山道を延々と進む。だが道端に点在する廃村や病で倒れた旅人の骨が、俺の胸を何度も締め付けた。身分の低い俺は騎士様たちの後ろをついて行きながら、自分の場違いさを痛感していた。


「アレックス、疲れていないか?」


 ガレンが隣に並んで、明るい口調で声をかけてくる。彼はいつも冗談で場を和ませるが、今日は目が真剣だった。


「はい、なんとか。けど俺、こんな大それた旅についてきて、本当に役に立てるのかな」

「お前がいるから馬たちが落ち着いてる。それだけで十分だ。自信持てよ!」


 そう言って笑ったガレンの笑顔に少し救われるが、前を行くベテラン騎士のバルド様が鼻を鳴らした。


「馬番が遺跡に行くなんて、国王の気まぐれだろ。くれぐれも足手まといになるなよ」

「バルド、黙りなさい」


 女性騎士のレイナ様が鋭い口調で、バルド様の声を遮った。


「彼は姫様を救うために、一緒にいるの。文句たらたらのあなたよりも、覚悟があるわ」


 ガレンから聞いた話では、おふたりは同期で騎士団に入隊した犬猿の仲だということだった。剣の腕はほぼ互角で、パワーで押し切るバルド様に対し、レイナ様は舞を踊るように剣を扱うらしい。


 対照的なおふたりだなと思ってる俺の傍で、ガレンは間に入り、笑って場を収めるが、俺の胸には重いものが残った。

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