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第13話 真実への足音



リラが王宮での協力を決意してから数日が経った。彼女は王都周辺で広がる病の調査を進める一方で、王宮内の陰謀にも目を光らせていた。ヴィヴィアンやアルトールが何かを企んでいるのは明白だったが、その全貌はまだ見えない。リラはセリウスとともに、真実を暴くための次の一手を探っていた。



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王都の病状


リラは王宮の命令を受け、王都周辺で広がる病の感染源を調査していた。高熱や咳、倦怠感を訴える患者が増えており、村や町の医療体制は限界を迎えつつあった。


ある日、リラはとある貧民街を訪れた。そこは王宮から見捨てられたような場所で、衛生環境が劣悪だった。患者たちは薬も十分に手に入らず、衰弱している。


「こんなところにまで手を伸ばす余裕がなかったのね……」

リラは溜息をつきながら患者の診察を始めた。症状の共通点を確認し、必要な薬を調合する一方で、住民たちに衛生管理の重要性を説明した。


「水を煮沸して使うこと、そして食事の前後に手を洗うことを徹底してください。」

彼女の優しく、しかし力強い指導に、住民たちは感謝と敬意を込めて頷いた。


その夜、リラは宿泊先でセリウスと話し合った。

「この病気の感染源を突き止めない限り、いくら薬を配っても根本的な解決にはならないわ。」

セリウスは真剣な表情で頷いた。

「君が調査している間、僕は王宮の中で動くよ。ヴィヴィアンやアルトールが何か隠している気がする。それが病の原因に繋がる可能性もある。」



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ヴィヴィアンの動向


その頃、ヴィヴィアン公爵令嬢は王宮内で不安を募らせていた。リラが人々から絶大な信頼を得ているだけでなく、王宮での影響力を持ち始めていることに危機感を覚えていたからだ。


「殿下、リラがこのまま力を持ち続ければ、私たちの立場が危うくなります。」

ヴィヴィアンはアルトールにそう訴えたが、彼は冷たい目で彼女を見た。


「ヴィヴィアン、君が手を汚しておいて、私にその後始末を押し付けるのか?」

アルトールは苛立ちを隠さず、ヴィヴィアンを非難した。


「私はただ、リラを抑えるための提案をしているだけです。」

ヴィヴィアンは必死に弁解したが、アルトールの態度は変わらなかった。二人の間には明らかな溝ができ始めていた。


その夜、ヴィヴィアンは自室で密かに新たな計略を練っていた。リラを再び陥れるために、証拠を捏造しようと考えていたのだ。



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セリウスの調査


一方、セリウスは王宮内でヴィヴィアンとアルトールの動向を探り始めていた。彼は従者や下級役人たちに接触し、小さな手がかりを集めていった。その中で、ある奇妙な報告を耳にした。


「最近、ヴィヴィアン公爵家の使いが宝物庫に頻繁に出入りしているようです。」

その言葉に、セリウスは眉をひそめた。宝物庫は、かつてリラが濡れ衣を着せられた場所だ。そこに再び動きがあるというのは、偶然ではないだろう。


「宝物庫に何があるのか……」

セリウスはその謎を解くため、夜遅くに宝物庫へ向かう計画を立てた。



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宝物庫の真実


その夜、セリウスは王宮の警備の目をかいくぐり、宝物庫へと足を踏み入れた。中は静まり返っており、薄暗い光の中に数々の宝物が並んでいる。しかし、彼が注目したのは、宝物庫の奥にある特別管理室だった。


扉には鍵が掛けられていたが、セリウスは慎重に錠を外し、中に入った。そこには、数枚の古びた文書と、いくつかの薬瓶が置かれていた。


「これは……」

文書には、ヴィヴィアンが宝物庫の事件をでっち上げた計画の詳細が記されていた。それだけでなく、薬瓶には奇妙な記号が刻まれており、それが現在の病の感染源に関係している可能性があった。


セリウスは急いでそれらを持ち出し、リラに知らせるべく王宮を後にした。



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真実の手がかり


翌朝、セリウスはリラの宿泊先を訪れ、宝物庫で見つけた証拠を彼女に見せた。リラは文書を読み、薬瓶を手に取ると、その記号に見覚えがあることに気づいた。


「これは……かつて宮廷で使われていた薬瓶の記号です。この中身が、今回の病の原因になっている可能性があります。」


セリウスは頷き、文書についても説明した。

「ヴィヴィアンが宝物庫の事件を計画した証拠がここにある。それだけでなく、彼女がこの病に関与している可能性も高い。」


リラはその言葉を聞き、決意を新たにした。

「これで、真実を暴くための準備が整いましたね。でも、慎重に進めないと、彼らに証拠を握り潰される危険があります。」



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決意の夜


その夜、リラは星空を見上げながら、自分に言い聞かせた。

「私がここで立ち止まるわけにはいかない。この証拠を使って、過去の罪を清算し、未来を切り開いていく。」


彼女の瞳には、強い決意と覚悟が宿っていた。真実に近づくたび、彼女の周囲には危険が迫っていたが、それでもリラは進むことを選んだ。


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