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第14話 嵐の前



宝物庫での発見により、リラとセリウスはヴィヴィアンとアルトールの陰謀が現在の病の感染拡大に関与している可能性を掴んだ。しかし、王宮に根を張る彼らの影響力に対抗するには慎重さが必要だった。リラは自分の無実を証明すると同時に、この陰謀を明るみに出すための計画を立てることにした。



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病の拡大と民の苦しみ


リラは王都周辺の病の状況をさらに調査するために再び貧民街を訪れた。そこには、新たに病に倒れた人々が増えており、状況は悪化の一途をたどっていた。


「水は煮沸していますか?」

「食事の前後に手を洗っていますか?」


リラは患者の家族たちに再度基本的な衛生管理を促しながら、彼らの苦しみに心を痛めていた。だが、原因を突き止めない限り、この病を根絶することはできない。


その時、一人の男性がリラに近づいてきた。彼は貧民街の住人でありながら、王宮での作業を請け負う労働者だった。


「リラ様、この病は井戸水が原因かもしれません。王宮の井戸から水を運んでくる作業をしている仲間が、次々に倒れていくんです。」


その話を聞いたリラは、直感的に井戸水が汚染されている可能性を感じた。だが、井戸水が汚染されている理由までは分からない。


「井戸水……これが感染源の鍵になるかもしれない。」


リラはこの情報をセリウスに共有し、次の調査対象を王宮の井戸に絞ることに決めた。



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ヴィヴィアンの策謀


その頃、ヴィヴィアンはリラが王宮の病を調査していることを知り、苛立ちを隠せずにいた。リラが真実に近づいているのを感じ、彼女を再び陥れるための計画を練り始めた。


「リラが井戸水に注目しているのなら、これを逆手に取るしかないわ。」


ヴィヴィアンは密かに信頼できる部下を呼び、指示を出した。

「井戸水に毒を混ぜるのよ。そして、リラがそれを調査している最中に現場を抑えるの。その毒をリラの仕業に見せかけるのよ。」


部下は一瞬ためらったが、ヴィヴィアンの厳しい眼差しに従い、計画を実行することを約束した。



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セリウスと井戸の調査


その夜、セリウスとリラは王宮の井戸を調査するために再び動き出した。王宮の警備をかいくぐりながら、問題の井戸にたどり着いた二人は、すぐに水を採取して分析を始めた。


「やはり……この水には、何らかの異物が混入されているわ。」

リラは採取した水を薬草店から持ち込んだ簡易検査器具で調べ、その結果に眉をひそめた。


「異物……自然由来のものではないね。人為的に何かが混ぜられている可能性が高い。」

セリウスもリラの意見に同意し、井戸の周囲をさらに調査し始めた。


井戸の底を覗き込むと、小さな袋のようなものが沈んでいるのが見えた。リラが慎重にそれを引き上げると、袋の中から毒草の一種が出てきた。


「これが原因だわ……!」

リラはその毒草が、かつてヴィヴィアンの家で栽培されていたものと同じ種類であることに気づいた。



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ヴィヴィアンの罠


二人が調査を進めている最中、突然、周囲に人の気配を感じた。セリウスがすぐに剣を構え、リラを守るように前に立った。


「リラ・エトワール様、何をしているのですか?」


現れたのは、ヴィヴィアンの部下たちだった。彼らは毒草の入った袋を見つめ、芝居がかった驚きの表情を浮かべた。


「まさか、この井戸に毒を仕込んでいたのは……リラ様なのですか?」


その言葉にリラは驚き、すぐに反論しようとしたが、セリウスが彼女を制した。

「待て、リラ。彼らは最初から罠を仕掛けてきたんだ。証拠を捏造するために。」


リラは冷静さを取り戻し、毅然とした声で言った。

「私は人々を助けるためにここに来たのです。毒を仕込むなどという卑劣な行為をする理由がありません。」


だが、ヴィヴィアンの部下たちは嘲笑を浮かべ、声を張り上げた。

「リラ様が毒を仕込んでいるところを目撃した! 我々は証人だ!」



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脱出と次の策


セリウスは状況が不利であることを即座に判断し、リラに低く囁いた。

「ここは引くしかない。証拠を持ち帰り、別の方法で反撃しよう。」


リラは悔しさを堪え、セリウスの判断に従った。二人は毒草の袋を持ち、暗闇に紛れてその場を離れた。


宿に戻ったリラは、悔しさで拳を握りしめた。

「ヴィヴィアンは私を再び陥れようとしている。だが、私は絶対に負けない。」


セリウスはリラの肩に手を置き、静かに言った。

「君には真実がある。それを武器に、必ず彼らに勝てるはずだ。僕も全力で助ける。」


リラは深く頷き、星空を見上げた。その瞳には、過去に屈しない強い意志が宿っていた。嵐の前の静けさが漂う夜、リラの中で新たな覚悟が芽生えていた。






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