リラとセリウスはヴィヴィアンの罠を避けつつ、持ち帰った証拠を精査し、次の一手を練っていた。宝物庫で見つけた文書と、王宮の井戸に沈められていた毒草は、ヴィヴィアンの陰謀を裏付ける十分な証拠だった。だが、それを公にするには慎重な計画が必要だった。
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真実を広める準備
セリウスはリラに提案した。
「この証拠を使って、王宮で直接ヴィヴィアンと対決するのは危険だ。まずは信頼できる人物に協力を求めて、証拠を守る体制を作るべきだ。」
リラは頷きながら言った。
「確かに、ヴィヴィアンは影響力が強い。私たちだけでは立ち向かうのは無謀ね。王宮の中で、信頼できる人を探しましょう。」
二人はまず、王太后のもとを訪れることに決めた。彼女は過去にリラに優しく接してくれた数少ない人物であり、ヴィヴィアンに対抗できる立場にある。
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王太后との対話
リラとセリウスは、王宮内の隠された廊下を通り、王太后の私室に向かった。彼女はリラの突然の訪問に驚きつつも、暖かく迎え入れてくれた。
「リラ、あなたが戻ってきたと聞いていましたが、どうしてここに?」
リラは一礼し、ヴィヴィアンの陰謀と、その証拠を見つけた経緯を説明した。王太后は話を聞くにつれ、表情を曇らせた。
「ヴィヴィアンがそんなことを……それに、あなたの追放が彼女の計略だったとは……」
リラは切実に訴えた。
「私は、これ以上無実の人々が苦しむのを見ていられません。ですが、彼女の影響力を考えると、私たちだけではどうすることもできません。」
王太后はしばらく考え込んだ後、静かに言った。
「わかりました。この証拠を守り、真実を明らかにする手助けをしましょう。ただし、ヴィヴィアンに気づかれないよう慎重に進める必要があります。」
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公の場での対決
王太后の助けを得たリラは、王宮での正式な場でヴィヴィアンとアルトールに対峙する機会を得た。それは王宮の評議会で、貴族たちや重要な役職者たちが集まる場だった。
その日、広間には緊張感が漂っていた。リラは堂々と立ち、ヴィヴィアンとアルトールに向けて静かに言った。
「私は今日、この場で私の無実を証明するとともに、現在の病の原因について真実をお伝えします。」
ヴィヴィアンは冷笑を浮かべながら答えた。
「無実を証明する? あなたがまた何かでっち上げようとしているのではなくて?」
リラは動じず、宝物庫で見つけた文書と毒草を広間の中央に置いた。
「これは宝物庫から発見された文書です。そこには、私を追放するために仕組まれた計略の詳細が記されています。そして、こちらは王宮の井戸から見つけた毒草です。この草が原因で病が広がっているのです。」
貴族たちはざわめき始めた。リラの言葉に疑問を持つ者もいれば、ヴィヴィアンの動向を怪しむ者も現れた。
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ヴィヴィアンの反論と暴露
ヴィヴィアンは冷静を装いながらも、明らかに焦っていた。
「そんな文書が本物だとどう証明するの? 毒草だって誰かが勝手に井戸に入れたのかもしれない。」
だが、その時、セリウスが広間に現れた。彼は王太后の助けを借りて、証人を連れてきていた。それは、かつて宝物庫を管理していたヴィヴィアンの元従者だった。
「この人物が、ヴィヴィアン公爵令嬢の命令で宝物庫の計略に加担させられた証人です。」
従者は震える声で証言を始めた。
「すべてヴィヴィアン様の指示でした。リラ様を陥れるために、何も盗まれていない宝物庫の記録を改ざんしました。そして井戸の毒草も……」
その言葉に広間は騒然となった。ヴィヴィアンは顔を真っ青にし、言葉を失った。
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裁きと未来への道
評議会はヴィヴィアンの罪を認め、王宮からの追放を決定した。同時に、アルトールもその責任を問われ、王太子の地位を失うこととなった。
その場でリラは深々と頭を下げた。
「これで過去に縛られることなく、私は未来に進むことができます。」
王太后はリラに微笑みかけ、穏やかに言った。
「あなたの勇気が、この王国を救いました。これからもその知識と優しさで多くの人を助けてください。」
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新たな旅立ち
評議会が終わった後、リラは王宮を出て村に戻る準備をしていた。セリウスが彼女の隣に立ち、静かに言った。
「君の無実が証明されてよかった。でも、これで終わりじゃない。君が進む道はこれからも続いていく。」
リラは頷き、穏やかに微笑んだ。
「そうね。これからも私は、自分の力で未来を切り開いていくわ。」
彼女は村へと帰り、新たな人生を歩み始めた。その背中には、これまでとは違う確かな自信と希望が宿っていた。
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