「頼むよ
壊れた
僕を忘れていいから、記憶から消していいから、君には生きてほしいんだ。僕は沢山の涙と叫びを嗚咽として吐き出しながら、彼女を抱きしめる。
「
ピクリとも動かない彼女は壊れた人形そのものだった。周りの人間は僕をずっと責め続けるだろう。きっと、もう彼女の傍にはいれない、永遠と……。
僕が消えれば、君は元に戻るの?僕はただ君を愛してただけ、そして
「あああああああああああああああ」
子供の頃の
体に沢山の傷跡を残して、僕は当時の君と出会い、どうしても見て見ぬ振りが出来なかった。少しずつ大人になっていく度に、背中のミミズ腫れが落ち着いて、今では傷が残っていない。まるで最初からなかったように……。
でもね、僕は君の隠された傷跡を知っているよ?それは右目の上側だよね。殆ど気にならないけど、くぼみが出来ている。よく見ると凹んでいるんだよ。一㎝位だし、昔に比べては誰も気付かないだろうね。
――僕以外はね。
ねぇお腹は大丈夫かい?君が内蔵弱くなったのも、毎日蹴られていたからだよね。時々心臓が痛むんだろう?僕は知っているよ。
――君の心の一番は僕の居場所だからね。
見えないよね、僕の姿。そうだよね。僕は『もういない』存在なんだから。それでも我儘を言うとね、せめて
僕と君を引き裂こうと君を地獄へと叩きつけた周りは、君の心から僕の存在を消した。こんなふうに複数の人間が一人を攻撃すると、簡単に心が死ぬんだと現実を知ってしまった。
僕は泣きながら、彼女の名を呼びながら、右手を伸ばす。せめて最後に君に触れたい。
――愛している永遠に。
◇◇◇◇◇
貴方はだあれ?
僕はその言葉で、たったその一言で、彼女の前から姿を消した。
笑顔で僕を見つめてきた
――さようなら。僕の愛した人。
◇◇◇◇◇
私は長い間眠っていたみたい。でも不思議なの。二年間の記憶がないの。思いだそうとすると頭がズキズキして、おかしくなりそうで、怖い。
――まるで思い出してはいけないと誰かに言われているみたい。
知らない男性が私の右手を握りながら、悲しく微笑んでいる。見ていると心臓が飛び跳ねて、息苦しくなる。それでも、私にはこの男性が誰か分からない。
――ねぇ特別な存在なの?貴方って。
「貴方はだあれ?」
そう聞くと、傷ついたような表情をして、私に言葉を残して去っていく。
『幸せになってね
どうして貴方は私の名前を知っているの?
過去の私の呟きが聞こえた気がした。
――私の愛した人、さようなら。
風の音になって
ただ涙が溢れる……どうして?