産まれてきてくれてありがとう。私に向かいながら、両親らしき人物が温かい呟きを残しながら、私を置き去りにした。カランコロンと天空から綺麗な音と共に、私の大好きなおもちゃたちがくるくると、回っている。
――楽しい、楽しい。
その光景に目を奪われる『赤ん坊』の私は、その他、何も見えていなかったの。『赤ん坊だから仕方ないじゃない』と言われても、納得できないのよ。
だって、あの時、手を伸ばしたら、失う事なんてなかったのに、
親戚の家を転々としながらも、いつかは『両親』が迎えに来るなんて、甘い考え、いや夢物語を見ていた幼い心。すがりつきたい気持ちってあるじゃない?分かるかしら、私の気持ちなんて。
学校に行くとね、私の机はいつもマジックで見たくない現実を見せつけてくるの。沢山の暴言が文章になっていて、沢山の色で落書きみたいに、
これが『慣れ』なのかもしれないね。今では『綺麗な色の使い方するなぁ』とか関心してしまう位の余裕があるの。割り切っていると言えば簡単かもしれないけれど、そんな単純なレベルじゃないのに……ね。
『ほらほら。皆、席につきなさい』
担任はいつも通り、
――生きている人間を信じて、何になるの?
私の心に
両親もそう、私をたらい回しにした人間も、同級生も、先生も、そして……きっと、あの人も同じ……なのよね。
そう考えると胸が締め付けられるのはどうしてだろうか。これって『悲しい』って感情なのかな?
ギュッと目を瞑りながら、心の痛みを誤魔化そうとする。少しでも、和らぐように。
その時だった。ある人の冷静な言葉が耳を
『これが人のする事か?見て見ぬ振りするのも、いい加減にしろよ』
冷たい声のトーンに体を震わせながらも、何が起こっているのか考えてみる事にした。この声は誰の声?こんな声、聞いた事ないよ。
恐る恐る振り返ると、そこには私の大切な『あの人』が力強く立っていた。
――私を守るように、声のトーンを元に戻して呟くの。
『大丈夫か?
皆に嫌われても、両親が私を捨てたままでも、貴方がいれば、何もいらない。
「……うん」
泣きそうなのは秘密。