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第二章

第十五話 王都の勇者

 今度は見間違いではない。

 私の目の前にいるのは、私が王都で所属していた勇者パーティーのリーダー・勇者その人───第五十四代勇者のランスアーサー=キャラメールだった。


 私は声を出そうと口を開いたが、驚きのあまり上手く喋ることができなかった。

 そしてエサを求める魚のように口をパクパクさせてしまったが、そうしていると、さらに別の誰かが冒険者ギルドのドアを開けて入ってきた。


 ガンドルフィだった。


「シルヴィア、ただいま〜。お前に教えてもらっただけど、俺も通ることができたぜ。おかげでいつもよりかなり早く帰ってこられたよ」


 ガンドルフィは今日も沼地のパトロールに行っていた。

 そして私が教えたである断崖絶壁を登り、渓谷のような岩の裂け目を飛び越え、沼地にたどり着いたようだ。

 そうでなければこんなに早く───いつもなら誰もいないことをいいことに、私がをしている時間に帰ってくることなんてできなかっただろう。


「あ、あれ? お客さんかい? えーっと、新しい冒険者の方かな?」


 ガンドルフィも、いつもなら誰もいない時間帯の冒険者ギルドに、私以外の別の誰かがいることに驚いたようだ。


「あっ! まさか、もう沼地のリザードマンの噂が広まって、わざわざマーカロン村まで討伐にきてくれたとかっ!?」


 ガンドルフィは期待に胸を膨らませ、笑顔になった。


「マーカロン村にようこそっ! 俺はこの村の冒険者ギルトのマスターで、Bランク冒険者のガンドルフィだっ! よろしく───」


 そう言ってガンドルフィは握手をしようと手を差し出したが、相手の顔を見て動きが止まった。


「───え? ま、まさか……き、君は───。い、いえ、あなたは───……あなたは勇者ランスアーサー=キャラメール殿……?」


 それっきりガンドルフィも喋ることができなくなり、私と同様、エサを求める魚のように口をパクパクとさせることしかできなくなった。

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