勇者ランスアーサーがマーカロン村にやって来たその日の晩は、勇者を歓迎するパーティーが村の広場で盛大に執り行われた。
私もそのパーティーには参加したが、ランスアーサーとは少し距離を取って椅子に座った。
そして私とランスアーサーの間にはガンドルフィが座った。
ランスアーサーはガンドルフィに盛んに話しかけていた。
「素敵な村ですね、ギルドマスター。この村の平和をとてもよく守られていますね。それは村人の顔を見ればよくわかります」
そう褒められたガンドルフィは少年のように喜んだ。
「い、いや~! 俺なんて何もしてませんよ。マーカロン村が田舎で、周囲に凶悪なモンスターがいないだけです」
ガンドルフィは謙遜した。
「そんなことはないでしょう。私も王都からこちらに来る際、途中で何匹もの凶悪なモンスターと遭遇しました。これらのモンスターがマーカロン村に手出しできない理由───それはギルドマスターが村に居てくれるからに違いありません」
そう持ち上げられてガンドルフィは返答に困る程、照れてしまっていた。
「あなたは立派だ。お顔立ちも良く、そのお身体も見事です。実に良く鍛え上げられている。確か冒険者のランクはBだとか? 信じられません。あなた程の肉体ならAランク……いや、Sランクだと言われたって違和感はありません」
ランスアーサーはそう言って舐め回すようにガンドルフィの身体を眺め、腕や肩、そして胸の筋肉をベタベタと触った。
さすがにガンドルフィも少しくすぐったくなったようだ。
私はそんな二人のやり取りを見つつ、静かに深い溜息をついた。
これから先の事をどうしようか悩んだのだ。
今、王都は魔王軍に攻められ、陥落しようとしている。
もし王都が陥落すれば王国の民の命が多く失われるだろう。
それを救えるのは私だけだ。
理性で考えれば、大勢の人の命を救う為、すぐにでも王都に赴いて魔王軍を倒すべきだ。
それにもし王都が陥落すれば、被害はそれだけでは済まない。
その後、魔王軍の魔の手は王国全土に広がり、やがてマーカロン村にもその魔手は届くだろう。
マーカロン村を守る為にも、私は行動を起こすべきだ。
そう頭ではわかっているのだが───……。
そう悩んでいた私は、ふと、そういえば
王国の伝説的ヒーロー・勇者ランスアーサーが居るというのに、
私は辺りをキョロキョロと見渡し、