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第十九話 マーカロン村の祝宴

 勇者ランスアーサーがマーカロン村にやって来たその日の晩は、勇者を歓迎するパーティーが村の広場で盛大に執り行われた。

 私もそのパーティーには参加したが、ランスアーサーとは少し距離を取って椅子に座った。


 そして私とランスアーサーの間にはガンドルフィが座った。

 ランスアーサーはガンドルフィに盛んに話しかけていた。


「素敵な村ですね、ギルドマスター。この村の平和をとてもよく守られていますね。それは村人の顔を見ればよくわかります」


 そう褒められたガンドルフィは少年のように喜んだ。


「い、いや~! 俺なんて何もしてませんよ。マーカロン村が田舎で、周囲に凶悪なモンスターがいないだけです」


 ガンドルフィは謙遜した。


「そんなことはないでしょう。私も王都からこちらに来る際、途中で何匹もの凶悪なモンスターと遭遇しました。これらのモンスターがマーカロン村に手出しできない理由───それはギルドマスターが村に居てくれるからに違いありません」


 そう持ち上げられてガンドルフィは返答に困る程、照れてしまっていた。


「あなたは立派だ。お顔立ちも良く、そのお身体も見事です。実に良く鍛え上げられている。確か冒険者のランクはBだとか? 信じられません。あなた程の肉体ならAランク……いや、Sランクだと言われたって違和感はありません」


 ランスアーサーはそう言って舐め回すようにガンドルフィの身体を眺め、腕や肩、そして胸の筋肉をベタベタと触った。

 さすがにガンドルフィも少しくすぐったくなったようだ。


 私はそんな二人のやり取りを見つつ、静かに深い溜息をついた。


 これから先の事をどうしようか悩んだのだ。


 今、王都は魔王軍に攻められ、陥落しようとしている。

 もし王都が陥落すれば王国の民の命が多く失われるだろう。

 それを救えるのは私だけだ。

 理性で考えれば、大勢の人の命を救う為、すぐにでも王都に赴いて魔王軍を倒すべきだ。


 それにもし王都が陥落すれば、被害はそれだけでは済まない。

 その後、魔王軍の魔の手は王国全土に広がり、やがてマーカロン村にもその魔手は届くだろう。

 マーカロン村を守る為にも、私は行動を起こすべきだ。

 そう頭ではわかっているのだが───……。


 そう悩んでいた私は、ふと、そういえばの姿が見えないことに気づいた。

 王国の伝説的ヒーロー・勇者ランスアーサーが居るというのに、が喜び勇んで集まってこないことに違和感を覚えた。


 私は辺りをキョロキョロと見渡し、の姿を探した。

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