遠からずパンドラの胸像も、大聖堂のあの部屋に献納されるだろう。
歴代
献身の儀を中断せしめた魔の暴走と、その際に落命した至聖導師については、
魔王現る、と。
アムル・オリオール。
献身の儀を穢し、至聖導師
ここに魔王討伐の令を発す。
エクレシア・ヴィヴァルボルムとユグド=ミレニオは連名で討伐令を布告。
アムル・オリオール。
その名は今や疑いなく――
「世界の敵」として刻まれた。
世界を守った少女、
世界の敵である少女、魔王アムル。
事実も、彼女らの気持ちも置き去りに。
人々はそれを真実として記憶した。
彼女の声がまだ、耳に残っている。
か細く、けれど決して折れることのなかった声。
その最期を知る者は少ない。
――私を含めて。
あの時、振り返った彼女の笑顔を忘れまい。
パンドラ・ベルティエは
一片の光となり、大樹の
それは神話に語られる通りの出来事だった。
美しい奇跡と人々は呼ぶ。
祝福と賛美の声を捧げる。
その時、何があったのか。
見た者は誰も、口にはしない。
だが、それでも。
口にするのは憚られた。
静かな禁忌。
私が見た光景は、神聖でも荘厳でもなかった。
パンドラは泣いていた。
アムルは泣いていた。
私は少女たちの慟哭を忘れない。
アムル・オリオール。
魔王、と呼ばれ、世界の敵とされた少女。
彼女の声を忘れまい。
すべてを焼き尽くすかのような、痛みに満ちた悲鳴を。
わたしは
「祈りは届かず、呪いだけが残される……」
あれは呪いだろうか。
祈りの成れの果てではないのか。
だが、皆が耳を塞いだ。
悲鳴も、涙も、見なかったふりをした。
私もそうだ。
何もできない。できなかった。
それでも忘れまい。決して。
私は、まだ、考え続けている。
何が正しくて、何が、誰が、間違っていたのか。
世界は本当に祝福のもとに存続しているのか。
答をくれる存在は居ない。
神の声は聞こえない。
それでも。
今日も、穏やかで良い天気だ。
鳥は
その風景の中で、私は立ち止まっている。
語られざる真実と、少女たちの残響とを胸に秘めて。
「
それでも。
私を呼ぶ声に応えて。
私はいつもと変わらぬ仕事をする。
いつもと変わらぬ表情で……。