エレクシア・ヴィアヴォルムには、表向きには存在すら隠されている部署がある。
聖都アルセリア、大聖堂の地下深くに、それは存在する。
ヴィヴァ教団の表側には、
それに対し、暗部は教団の裏側――「見えざる秩序」を担う機構だ。
暗部の長を務めるのは
公の場に現れることは稀で、仮面を着け続けているため、素顔を知る者は
さて。
教団観測局、通称「神の眼」は至聖神ルミエルの光に連なる「啓示」を観る眼。
神威や聖兆、予言など、光の観測を主に行っている。
一方、暗部観測局、通称「夜の眼」は闇の神ノクティリカの闇に潜む「真実」を探る眼。
魔障や禁術、異端的現象など、公に出来ない領域を観測する。
同日、同時刻。
「神の眼」と「夜の眼」は同一座標にて、強い神性の共鳴を観測した。
警報が鳴り響き、観測装置が煌めくように脈動する。
「
「読み上げます。――風は語る。忘れられた祠が、再び扉を開く。問いを運ぶ者よ、応えを探す道へ。いまこそ歩み出せ――以上、断章確認しました」
ゼフェリオス――忘却された風の神の声。
それはアムルたち三人が聞いたものに他ならなかった。
「学び舎、ということは勇者か?」
観測官は眉を寄せた。
彼は、以前から
特に勇者ロイクと、それに関わる者たちの祈りの兆候について、繰り返し警告を発していた。
(イアサントの懸念が、的中したか……)
「共鳴点は、三。勇者の他二名、神性共鳴反応あり」
「
――「
特に至聖導師直属の
しかし
この情報は直ちに、「神の眼」と「夜の眼」双方の観測官から、それぞれの議会――
だが、祈りの復活を「異端」と断じようとする
――シプリアンは教団内の保守派によって排除の動きが強まっていたが、ぎりぎりのところで議会に留まることを許されていた。
「風の問い」は、祈りの再興か、それとも教義の危機か。
それぞれの立場が、いまや教団内部を静かに揺るがしはじめている。
そしてその揺らぎの渦中に、ロイクたち三人の名も、確かに刻まれつつあった――。