茜の中にある、白銀を纏う漆黒の魔力はこの3年間が嘘のように順調に力を増した。
「もう存在がなくなることはありません。ノアーナ様ありがとうございました。これからも茜を対等に見てあげてください。あの子はきっとあなた様の力になります」
アルテミリスが優しい表情で俺に言ってきて、かなり驚いたりもしたが。
※※※※※
朝食をとり宿を出た俺たちは、今回の目的である3つ首岬の祠群へ向かった。
住民の住むエリアを超え、切り立った崖の向こうに数多くの祠が連なっている。
想定外の邪魔などなく、程なく俺たちはたどり着いた。
挨拶を交わした後口をつぐんでいたモミジ、いや茜が俺に振り返り口を開いた。
打ち寄せる波の音が聞こえる。
優しい浜風が茜の髪をなびかせる。
「光喜さん、昨日の夜は……その…‥私、あきらめないから。だって、自分の気持ちに嘘はつきたくないから」
「…ああ…そうだな」
俺は昨日の夜、正直に茜に打ち明けた。
人生を共にする女性を探していること。
まだ出会っていないが相手は茜ではない事。
茜の純真な真直ぐな想いに対し、俺も嘘はつきたくなかったからだ。
存在値を落とした俺は最近心の動きに戸惑うことが増えてきている。
昨晩だってあり得ないほど俺の心は揺さぶられていた。
流される直前だった。
…抱きしめて茜の真直ぐなガーネットのように煌めく瞳に見つめられて…
これは違うと本能的に理解したんだ。
俺が欲しかった形ではない。
こんな気持ちで茜を抱いてはいけないと。
心の底から想い想われ紡がれる…そんな理想的なきっと見つけることが難しいもの。
そのために俺は数十万年生きてきたのだから。
「でも…」
くるりと回り後ろ手を組み、まるで顔を見られないように空を見上げた茜は、
「私の事、嫌いなわけではないんだよね?」
「ああ、もちろんだ」
「そっか…あーあ、振られちゃったなー…でも嬉しかった」
海の水面を反射させる太陽に、零れ落ち照らされキラキラと輝く涙をこぼして、
「光喜さんが私の思っていた通りの、正直で優しい人だって解ったから」
そしてまた振り向き、悲しみをこらえ涙ぐみながら、微笑んだ。
「…ちょっと意気地なしで、イジワルだけどね」
充血しさらに赤みを増したガーネットのような瞳には力がともり、茜の真核はさらに強さを増して、煌々と輝いていた。
程なく調査も終わり問題ないと判断した俺たちは転移し、神々を連れて再度転移し、封印を施したのだった。