茜の機転?いや冷やかしだろ!
により確かにスムーズに話ができるようになった。
相変わらず鈴を鳴らすような心地よい声や、可愛らしいしぐさに赤面してしまう場面は多いけど。
はー。
ホントに情けない。
なんでこんなに緊張してしまうのだろう。
確かにすごく奇麗で可愛いし、完全に俺の好みだとは思う。
でも俺は茜や神々といった、美女美少女美幼女には耐性があってもおかしくないはずなのに…いったいどうしたのだろうか。
ふいにネルは真剣な顔をして俺に問いかけてきた。
その表情に、浮かれていた俺は心が沈むのを自覚した。
「大変ぶしつけとは思うのですが、確認したいことがあります。ご協力いただけますでしょうか」
「!…ああ、俺にできることなら、かまわない。何を確認するんだ?」
おもむろにネルは白魚のようなたおやかな手をこちらへ差し出す。
「?!…えっ…?」
「握ってはいただけませんか?」
反射的に服の裾で手のひらを拭いた。
手汗がやばい。
「い、いやっ、でも俺は男で。…その、ネルは…怖いんじゃ…」
ネルは少し悲し気に微笑む。
…なんだよ?!
どうしたんだ俺の体は?
鼓動の高まりが抑えられない。
「かまいません…ノアーナ様はお優しいのですね」
「っ!?…いや、失礼するよ」
恐る恐る俺は美しく小さな手に触れた…
刹那。
「っ!!!??あ、ああああ、あああああああああ…!!!??」
「っ!?…ああああああ…あああ、ああ……!!?」
二人の意識がリンクする。
完全につながった。
不思議な情景が頭をよぎる
※※※※※
暖かな柔らかい光に包まれ
自然に笑顔がこぼれる俺とネル
何かささやきあい幸せそうに笑う二人
大きな分かれた心が
一つになっていく
ああ、ついに出会えたんだ…
俺の半身…
俺の愛する人に…
気が付けば俺は流れる涙を止めることはできなくなっていた。
ネルもにっこり笑いながら涙を流し続けていた。
二人は自然に抱きしめあい、優しいキスを交わしたんだ。
何度も何度も。
※※※※※
一方そのころ会議室。
先ほど訪れた『エージェント』である茜により仕掛けられたアースノート謹製の『見る聞くなんなら匂いまでくん7号』
無駄にステルス機能を極限まで高めた超高性能機器によるライブ配信が行われていた。
「はああああああああああ?!ノアーナ様?少年か?ねえ子供か?ああああもう」
壊れ気味のモンスレアナ。
「……どきどき……ノアーナさま…かわいい」
ギュっと『クマのような』ぬいぐるみを抱きしめるダラスリニア。
「まったく…ねえーよくないよーこういうのー」
そうは言うが決して止めないし、何ならワクワクしているアグアニード。
「イヤなら見るな…不敬」
一切目をそらさずガン見のエリスラーナ。
「あーん♡なんって可愛らしいのかしら♡ノアーナ様」
着ぐるみの中で怪しく手を動かしているアースノート。
「もどかしいです。もっと殿方なのですから、ほらっ、そこですよ」
何故かスポーツ観戦のようなアルテミリス。
とてもカオスな状況が広がっていた。
そこへミッションをクリアした茜の帰還である。
拍手が巻き起こる。
何故か茜は、少し気まずそうにしているが。
「茜、さすがです。グッジョブですよ」
最近茜のやることに全肯定のアルテミリスはニコニコ顔だ。
…あなた誰ですか?
「どんな様子?光喜さんすっごく緊張してたけど。もーびっくりだよ。いつもはあんなにエッチな癖に…エッチなのに…イジワルなのに……」
だんだん声が小さくなる茜に、先ほどの空気は一変した。
アルテミリスがそっと茜を抱きしめる。
ライブ配信はさすがに気を利かせたアグアニードが消していた。
…アースノートはしっかり録画中ではあるが。
「…ノアーナ様は数十万年かけて、運命の相手を探しておりました。悔しいですけど、わたしたちは勝てないでしょう。でも茜は違いますよ。あなたはきっとあの人に負けませんよ。好きなのでしょう?あきらめずに頑張りなさい。応援していますよ」
「…アルテミリスさん…でも…ぐすっ…ひっ…ひいん…」
茜を今度は強く抱きしめる。
アルテミリスは続けた。
「私たちもあきらめはしません。優しいノアーナ様はとても悩むでしょうが、これからだって私たちを必要とします」
頷く他の皆。
「でも私たちは彼に創造されています。でも茜、あなたは違うでしょ。諦めないで。努力してノアーナ様の力になってあげなさい。あくまで対等の立場で。あなたにしかできない事です」
「あるて…みりす…さん…うわあ…ああ…うわあああああ……」
思わず神々が涙ぐむ。
感動が皆を包みこむ。
「…『アルテママ』って呼んでも良いのよ?」
……台無しだ。
ちょっと冷静になれた茜なのであった。