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第144話 最強は私たち。コクコク。

(新星歴4818年7月22日)


暑い夏の日。

珍しい客がいきなりグースワースにやってきた。


「魔王!勝負だ!!」

「コクコク!!」


「あらあら、まあまあ」


やたら美人で長い輝く白髪の存在値5000越えの女性が、15歳くらいの女の子2人と転移してきた。


俺は今、暑さを満喫しながら庭でパラソルを広げアロハシャツみたいな上着と短パン、ビーチサンダル姿で欲望の赴くままだらけていたところだ。


勿論横には白いタンクトップに黒のミニのパンツ姿の麗しいネルもいる。

二人でアフタヌーンティーと洒落込んで、イチャついていた。


濃い目の見せブラが、ネルのプロポーションを引き立てる。

うん。

俺のネルは何を着ていてもめっちゃ可愛い。

そして俺のイタズラに可愛い声と仕草で反応してくれる。

正に至福だ。

そろそろベッドへと思っていたところだったが……


転移してきた二人は、たたたたっと走り寄り俺の前に同じ顔を並べ、偉そうにふんぞり返って腕を組む。


サラサラな銀髪、大きい瞳に可愛らしいピンクの唇。

小さい顔が可愛らしさに拍車をかける。

二人殆ど同じ顔だが瞳の色が違うようだ。


しゃれたデザインのおそろいの水色のTシャツに、デニムのショートパンツから白く美しい足が覗いている。


……でかい!

何がとは言わないがネルの目が怪しく光る。


そしてその後ろから凄い美人の白髪の女性が上品に近づいてきて口を開く。

切れ長な目には、銀色の瞳が瞬き、すっと通った鼻筋に、妖艶な形の良い唇が思わず目を引く。


涼しげな白に近いベージュのワンピースに上品な麦わら帽子のようなデザインの帽子をかぶっている。

スレンダーな姿が美しい。


「お初にお目にかかります。わたしはエンシャントホワイトドラゴンの王、レーランと申します。以後お見知りおきを」


そして優雅にカーテシーを披露した。


「!?もしかして……レザークの娘か?」


レザークは古龍の馴染みだ。

確かエリスラーナの親戚だったと思う。

魔竜族との戦争で命を落としたはずだが。

纏うオーラが似ている。


「まあ、父上をご存じですか?さすがは魔王様です。ええ、わたしはあの時に生まれた最後の娘でした」


そして椅子に腰を掛ける。

俺はアイスティーを出してやった。


「まあ、気が利きますわね。いただきます……ああ、おいしい」


上品にアイスティーを飲み、にっこりとほほ笑む。

ストロ-を咥える姿に、家にはいない大人の魅力が溢れた。

思わず見つめてしまった。


「コホン」


何故かネルが咳払い。

レーランは楽しそうにほほ笑む。


「あらあら、可愛らしい奥様ですね。大丈夫ですよ。とりませんから。わたしは」


久しぶりの奥様呼びにネルは顔を真っ赤に染める。


「むう!母様!勝負が先!!」

「コクコク」


偉そうに腕を組んだ二人が話に割り込んできた。


「えーと。君たちは俺と戦いたいのかい?」

「そう。わたしたちは最強。だから魔王倒す!」

「コクコク」


俺はちらっとレーランを見た。

うなずく姿を確認し、取り敢えず魔力を少し放出した。

まあ、5000くらいだけど。


「「っ!?」」


へなへなと座り込む二人。


「くっ、ずるいぞ魔王!インチキだ!!」

「コクコク」


なんか一人はコクコクしか言わないが?


そしてすっとネルが立ち上がり、魔力を放出した。

ネルの存在値は2300くらいだが、俺とともに研鑽をしているので、さらに強く見せることができる。


各下にはおそらく3000越えとして映るだろう。


「ノアーナ様に挑むなら、せめてわたくしを超えなくてなりませんよ」

「「ぴっ!」」


可愛い声を出して震える二人。

そして入る助け舟。


「まあまあ、奥様。その辺で許していただけないかしら」


レーランが上品に口にした。


3人がテーブルに座り、その横でへたり込む美少女二人。

なんだこれ?


※※※※※


取り敢えず俺はレーランに問いかけた。


二人も椅子に座らせ、クリームソーダフロートを出してやった。

わき目もふらずに食べている。


「コホン。レーラン、いまいち要領を得ないのだが。是非説明をお願いしたい」


レーランの雰囲気が変わった。


「そうですね。やはりここはきちんと説明いたしませんと」


そう言いレーランは真っすぐに俺を見つめる。

美しい瞳には力が感じられた。


「私たちは今、魔竜族の残党に脅かされています」

「っ!?」


驚いた。

そんな報告は聞いていない。


「……お前たちは今ディードレック島にいるはずではないのか?」

「はい。ですがもうじき繁殖期に入るので、人族の少ないノッド大陸に移住したのです」


俺はモレイスト地下大宮殿を思い出した。


「そうだったのか。確かあそこはほぼ誰もいないと思っていたが」

「ええ、わたしもそう思い移住したのですが。突然あの憎い魔竜族の皇子ラグナロアの息子に襲われたのです」


魔竜族の皇子は3000年前俺が倒した。

息子がいたのか。


「だが、レーランの方が間違いなく強いだろうに。……何か事情があるのか?」

「攻撃が届かないのです」

「?……まさか……」

「黒い力です。私たちの知らない、怪しい悪意の様なもので包まれていて……兄のレイスルードが大けがを負いました。ラスタルム兄さまに相談したら、魔王を訪ねろと」


俺は思わずため息をつく。

ネルも心配そうな顔をする。


「そうか。大変だったな。レイスルードは?」

「今はラスタルム兄さまのところで治療を受けています。ちょうどエリスラーナ様がいらっしゃっていて……運がよかったです」


悪意の攻撃は通常の回復魔法を弾く。

あれからエリスラーナは古代魔術に力を入れていた。

助けられてよかった。


「分かった。協力しよう。あれは俺にも責任があることだ」

「ありがとうございます。流石魔王様です。それでは……」


そして落とされる爆弾発言。


「この二人にぜひ魔王様のお情けをいただきたく参上いたしました。この子たちは容姿が優れていますでしょ?私と違って、とても大きいですよ」

「ちょうど繁殖期ですし」


そう言って上品にアイスティーを飲む。


何がとは言わないが……確かにアンバランスなほどでかい。

それでいて服の上からでも非常に形も素晴らしい。


なぜか俺はネルにすねを蹴られたが。


「っ!?……すまない。意味が分からないんだが」


俺はすねをさすりながら答えた。


「私たち最強。でも魔王もっと強い。だから赤ちゃん作る!!」

「コクコク」

「「そしてあいつをやっつけるの!!」」


口の周りにアイスクリームを付けつつ、少女たちが口を開く。

そして二人が同時に俺の腕に抱き着いて来た。

柔らかい感触と心揺さぶるいい匂いが、俺の両腕と心を包み込む。


「強い人好き♡」

「コクコク♡」

「あらあら、まあまあ」


そしてなぜかニコニコ顔のレーラン。

暑いはずなのに絶対零度のオーラを噴出させるネル。


俺はだらけてイチャついていただけなのに。

確かに魔竜族と黒い悪意は大問題だが…


何故か修羅場が幕を開けた。


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