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第147話 ロロンとコロンと乙女?たち

俺はまず助けた三人をグースワースへと届けるために、ムクとカナリアを呼んだ。

どんな状況かわからないのだ。

カナリアが適任だろう。


転移してきた二人は、俺の酷いボロボロな姿に驚いた。

取り敢えず三人を保護してくれと頼み、後で説明する事を約束し、五人を見送った。


俺と茜、エリスラーナはラスタルムの住処へ飛んだ。

顛末を語る義務が俺にはあるのだから。


レイスルードはすっかり良くなっていて、ラスタルムとレーランと三人で応接室の椅子に座り俺たちの帰還を喜んでくれた。


俺が聖言で見た目をごまかしていたが、どうやらラスタルムは気づいていて知らないふりをしてくれた。


流石は『管理者』様だ。

気が利く。


「レーラン。ケリをつけた。これで問題はないはずだ。繁殖、上手く行く事を願っている」


今回の一番のテーマは古龍の繁殖という重大な問題だ。

この世界の強者たる新しい命を紡ぐことは神聖なことだ。


何故か横を向き、微妙な顔をするレーラン。

いそいそと席を外し奥へ引き込むレイスルード。

ラスタルムも遠くを見ている。


「ん?どうした?……まだ何か問題があるのか?俺にできることなら協力するが」


俺は言った。

うん。

確かにそういったさ。

まさかこの後の言葉に驚くとは思いもせずに。


「……ご協力いただけるのですね!ああ、なんて素晴らしい」


いきなりテンションが上がるレーラン。

俺は意味が分からない。


「……喜んでもらえるなら嬉しいが。俺の協力が必要なのか?」

「ラスタルム兄さま?寝所ありますか?お客様用の」


目を輝かせるレーラン。


なんか嫌な予感がする。

俺はラスタルムを見る。


「レーラン。おまえ、ノアーナ様に説明ちゃんとしたのか?……絶対わかってないぞ」

「大丈夫です兄さま。わたし、一生懸命ご奉仕いたしますから」


何故かピンクのオーラを纏いだすレーラン。

茜とエリスラーナがなぜか俺にしがみつき、レーランを威嚇し始めた。


そして俺に近づいてとんでもないことを言い出す。


「ノアーナ様♡私とロロンとコロンに、赤ちゃん下さいな♡」


ノータイムで誘惑の魔眼を最大で発動し、俺に体を密着させながら抱きつき、大人の濃厚なキスをしてきた。


「っ!???」


普段なら、きっとレジスト出来ただろう。

しかし今の俺は無理をした後で実は真核がボロボロだ。


淫靡な舌遣いと濃密な女性の匂いに俺の意識が一瞬で吹き飛ぶ。

思わず彼女を抱きしめる。


メチャクチャいい匂いがして柔らかさに頭が真っ白になっていく。

もう、たまらない。

俺は一瞬で臨戦態勢になった。


「まあ♡ああ、素敵♡」


密着しているのだ。

彼女は顔を真っ赤に染め、何かに気づいた。


「ダメ―!!ノアーナ様!!」

「むう!私が先!!」


必死で止める茜とエリスラーナ。


おもむろに立ち上がり、大きなため息とともにラスタルムが魔力を紡ぎだす。


「はああああ………恨むなよ……解呪!!!」


ラスタルムの濃厚な魔力に包まれ、俺は我を取り戻した。

いやー、マジで助かったわ。


俺は逃げるようにグースワースへと転移した。


※※※※※


時は少しさかのぼる。


俺たちが転移した後、グースワースは静かな戦いの火ぶたが落とされていた。


外で待つわけにもいかずに、ネルはロロンとコロンを談話室に招いていた。

改装を進めた際、人数の増えたグースワースではこういう部屋も用意していた。


珍しい客人に興味津々なグースワースの住人は仕事の手を止め三人に注目していた。


サラナは一目見て、ロロンとコロンのあどけない破壊力に恐れおののいていたが。

勿論元祖であるリナーリアも鼻息荒く見つめいていた。


そして取り敢えず椅子に座り、念話が届いたことで琥珀石での解呪を行い、お茶を飲み落ち着いたところでロロンとコロンが爆弾発言をする。


「ネル、ノアーナ様ちょーだい」

「コクコク」


ロロンとコロンがネルに言い放つ。

ネルの目が怪しく光る。


「ダメです」


そしてきっぱりと言い放つ。


「だめ!私たちがもらうの!!」

「コクコク」

「あげません。わたくしの大切な人です。絶対にダメです」


睨み合う三人。

そして突然参戦するリナーリア。


「ちょーっとまった!!そういう事なら私だって!!……ひいっ!?」


どさくさに紛れるように思わず立候補したリナーリアに、ネルの絶対零度の視線が突き刺さる。


「……リアは黙ってて」


しかし純情ちゃんはひるまなかった。

おもむろにコロンの後ろに隠れ、両手で立派な胸を鷲づかむ。


「ぴっ!」


そして目を妖しく光らせネルを挑発する。


「なーに?ネル。美しい貴方でもこれにはかなわないでしょ?」


何故か他人の胸で反撃するリナーリア。

コロンの胸がプルンと揺れる。


「やー、だめえ」


コロンは顔を真っ赤にして胸を隠すように自分を抱きしめ蹲(うずくま)る。

それを見たロロンも顔を青くしコロンに抱き着いた。


可愛い二人が恐れおののき、体を震わせ目を潤ませる。

その愛らしい姿にリナーリアの百合属性が暴走した!!


「キャー!!なにこれナニコレ!めっちゃカワユス♡はあはあはあ、おねーさんとあそぼ♡」


ゆらりと二人に近づくリナーリア。

目と顔がやばい事になっている。


手をいやらしくワキワキと動かす。


背中に寒いものが走り思わず逃げ惑うロロンとコロン。

そして立ちはだかる、怪しいオーラ全開の弟子サラナ。


「リアさん、お任せを。……はあはあはあ、逃がさないですよ♡」


リナーリアと同じ感じで仁王立ちするサラナ。


「「ひいいいーーーー」」


思わず全員が突っ込んだ。


「おまえもかい!!」


グースワースがカオスに包まれていた。

ネルはあきれ顔で取り敢えず椅子に座った。


※※※※※


俺が何とか逃げ帰ると、何故か涙目で正座しているリナーリアとサラナの姿が目に入った。


「???」


意味が分からないが、きっと何も言わない方が良いだろうと珍しく感を働かせた俺は、ネルの隣の椅子に座り込んだ。


「ただいま、ネル……何かあったのか?」


ネルは俺を見るとおもむろに俺の匂いを嗅ぎだした。

そして冷たい表情で俺に言い放つ。


「お疲れさまでした。……誰ですか?」

「えっ……」


「女の匂いがします。……レーラン?」

「うっ……」


そして涙を零す。

やばい、言い訳出来ねえ。


「いやっ、これは……事故みたいなもので…ネル?」


そして表情をなくし真顔のネルが俺を見つめていた。


「わたくし信じていました。ええ、信じていますとも。7股の最低男だとしても。……愛していますよ。でも……まだ増やすおつもりでしょうか?」


そして青筋を立てつつにっこり微笑む。

目が笑ってねえ!


俺、どうしよう。

逃げ出しても良いのだろうか?


いやダメだ。

ここは毅然と説明するんだ。

俺は悪くないのだから。


俺はネルを見つめた。

一瞬ネルがビクッとする。


「ネル、禁忌の力を使ったんだ」

「っ!?」

「そして今の俺は真核にダメージを負っている」


「………あ」

「確かに俺はクズだ。分かってる」


「……えっと」

「でも、お前を愛しているんだ」


ネルの頬が赤く染まっていく。


「だから、甘えさせてほしい。疲れたんだ」


そしておもむろにネルの膝に頭を乗せる。

ネルがおそるおそる髪の毛を撫で始めてくれた。


「……なさい」


そして俺の顔に涙が零れ落ちてきた。

俺の事を心から心配してくれているのだろう。


「ごめん……なさい……」


俺は愛おしい気持ちと申し訳ない気持ちが沸き上がるのを感じた。

そっとネルを抱きしめる。


「良いんだ。悪いのはいつも俺だ。部屋に行こう?」


ネルがこくりと頷いた。


二人で俺の部屋に転移した。

そしてありのままを全て伝えた。


レーランとロロンとコロンが俺の子を欲しがっている事。

レジスト出来ずに確かにそういうことになる寸前だったこと。

ラスタルムに助けられたこと。


そして誠心誠意謝った。


「ネルすまない。俺はわきが甘いようだ。確かに俺は7人と関係を持っているし、その関係を終わらすつもりはない」


ネルは少し顔色が戻り、俺に話しかける。


「分かりました。はあ、しょうがないですね。惚れた私の負けです」


そして俺を見つめた。


「ごめんなさい。くだらない嫉妬をいつもして……嫌いになっちゃいますよね」


俺は優しくネルを抱きしめる。


「あり得ないよ。俺が振られることはあっても俺は絶対にネルを離さない」

「俺は多分ネルがいない世界では生きていたくないんだ」

「最低なことをしているさ。だけどそれが俺だ」


そしてネルを見つめ返す。


「俺は今もネルを愛したい」

「……レーランたちはどうするのです?」


「すまない。分からない」

「…リアは?」


「うぐっ、わ、わからない」

「まだ増えますね。きっと。……最低ですね」


「………」

「あなた様は優しすぎます。そして大きな愛をお持ちです」


「………」


そしてにっこり微笑む。


「わたくしを安心させてくださいませ。一緒にいるときくらいは」

「……ああ、そうさせてもらう」


俺は最低のクズ男なのは確定している。

だからせめて、目いっぱい大切な人を愛するとあの時誓ったんだ。


俺は大切で大好きなネルと愛し合いたいのだから。

心の底から。


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