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第199話 卒業と旅立ちと増員

(新星歴4820年9月5日)


あれからファルス―ノルン星には平穏な日々が訪れていた。

大きな混乱もなく、神々や眷属、そしてダラスリニアの召還した闇の中精霊の活躍もあり、落ち着きを取り戻していた。


一方グースワースは事情により人が増え、現在総勢で50名が暮らしている。


出没頻度は減ったものの紋様を有する魔物はこの世界では脅威であることに違いがなく、つい先日ナグラシア王国で数十体現れ、王国国防軍第3部隊がその対応時にシャレにならない大怪我を負ってしまっていた。


国防軍第3部隊はかつてナハムザートが隊長を勤めた部隊で、今はドラゴニュートを中心に再編成されていた。


ダラスリニアの闇精霊経由で情報を得た俺は、救援することを決めナハムザートとイレーザを中心に救出部隊を編成し向かわせたのだが……。


結果としてグースワースでの治療が必要と判断し総勢10名を連れて転移してきていた。


顛末を報告した際に、ナグラシア王国の国王であるガランド・ジスターブより「少し鍛えてはくれまいか」と懇願され、結局情に厚いナハムザートに頼み込まれた俺が許可を出した形だ。


※※※※※


現在ドラゴニュート部隊は17名。


救出したドラゴニュートの中にジャスミンという女性がおり、実はイレーザの事を愛していた。

紆余曲折あったものの、彼らは結ばれグースワースを卒業していった。

ジャスミンの故郷で二人暮らしていくそうだ。

最後まで悩んでいたイレーザだったが、ナハムザートが背中を押した。


「どこに居たって世界は守れる。お前が守るものが増えただけだ。後悔しない選択をしろ」


そう言ったらしい。

あいつは本当にいい男だ。


そして大失恋をしたガルナローが俺に直訴して、鍛えなおす旅に出ていった。

ガロドナとともに。


「ノアーナ様、この目で広い世界を見て鍛えなおしたいと思います」

「私もローと一緒に鍛えたいです。どうか許可を」


決意を浮かべた男のまなざしを俺は軽く見ることはしない。

そうさ、早いか遅いかだ。

俺はにっこり笑い快く送り出すことにした。


「そうか。出ていくのは自由だ。だがお前はもう俺の家族だ。簡単に死ぬことは許さん………よし、また会おう」


「「はい」」


選別としていくつか付与を与えたのは内緒だ。

きっとこいつらは強くなって戻ってくる。

俺は信じていた。


結果的に元々いた12名に10名が足され、5名減った形だ。

当然ライナルーヤはカウントから外している。

優しい母親を戦場へ行かせるわけにはいかない。


因みに新加入したのは、アルド78歳、レイダル62歳、サワード64歳、ギルラ71歳、ナノード73歳、ロイスルール65歳、エイスナ58歳、オロド60歳、イペリアル62歳の9名だ。


全員存在値は500を超えているナグラシア王国の精鋭たちだ。


※※※※※


ドラゴニュートと同じような事情で魔国より魔族が4名、そして客人対応でいたミンがミユルの新しい愛の巣へ引っ越し、50名の大所帯になったのだった。


人員が増えたことによりいくつかの改変を行った。


因みに人族による不穏な事件が実は隣のミユルでもあったため、新たに諜報部隊の別動隊として女性のみのチームを用意したのが最大の理由だが。


リーダーをミュールス。

その補佐にサラナとルイーナ。

普段は今までと変わらず働いてもらうが、女性が被害に遭ったときに活躍してもらうためだ。

家の男どもはムクとナハムザート以外気が利かない。

女性の対応が出来る者を用意するのは必然だろう。


実際、何とも華のある部隊だ。

部隊発足時には俺を含め4人で………コホン。


まあ、そういう事だ。


それからムクの配下として魔族の2名を加えた。

ルガイナとケース・ジンナの2名。

特にルガイナはダラスリニアの眷属第27席で、幻影魔法の使い手だ。

せいぜい働いていただこう。


さらにカンジーロウの部隊に魔族2名、スアカット、バリド・エスランを加えグースワースの皆はさらなる平和のために尽力してくれていた。

因みにスアカットは回復が得意な魔族だ。

これでカンジーロウの部隊の継戦能力が上がることだろう。


何とも頼もしい限りだ。

因みに今回女性の加入者はいない。


少しほっとすることは仕方がない事だろう。

いくら俺でもこれ以上増やすつもりはない。


……ほんとだぞ!?


※※※※※


「ネオ、同期タイミングはどうかしら」

「うん。行けそうだけど……うう、もう少し訓練したいかな」


ギルガンギルの塔の聖域で、アースノートが作成した小型探査艇にネオが同期実験を行っていた。

ファルスーノルン星にいないレイスを見つけるためだ。


「理論上は問題ないはずなのだけれど……やはりネオの力が足りないのかしら?」

「うっ、酷いなアート。もう一度リンクした方が良いかな」


ふよふよと舞う漆黒に白銀を纏うネオが、アースノートの目の前でホバリングするように停止する。

実はネオはこの星をすでに隅々まで調査済みだった。

そしてキャルルートルンが怪しい事をアースノートに伝えていた。


良い欠片とはいえ、元は悪意のネオは、アースノートが培養したノアーナもどきとのリンクに問題はなかった。

むしろリンクして力が増す。


「本当に問題ないのよね?ネオ。……貴女が敵に回るとなると、ぞっとしないのだけれど」

「ああ、うん。問題ないよ?というかどうしてノアーナはあんなに頑なに悪意を忌避するんだろうね。もともと自分なのにさ。……受け入れたあげればいいのに。……だってあいつら……寂しいんだと思うよ」

「……そうね。……でもノアーナ様、気付かないふりをしている。そして気付いてもきっと受け入れられない。今は」


アースノートは気づいていた。

ノアーナが意識的に悪意を遠ざけていることに。


彼は恐れているのだ。

受け入れることでおそらく変わってしまう自分に。

分からないものが、恐ろしくてたまらないのだろう。


「ふう、ままならないですわね。でも、そのためにあ―し達が居る。そうでしょ」

「…うん」


ネオだって優しいノアーナが大好きだ。

力になりたいといつも思っている。


(でも……たぶんノアーナは取り戻さないといけない。悪意も……)


ネオは徐々に大きくなる不安に、恐怖していた。

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