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第201話 新たな神の誕生と動き始める世界

(新星歴4820年12月15日)


儀式は無事行われ、暫定的ではあるものの光の神アルテミリスから、光神ルースミールへと権能の一部【真実】と、多くの権利が譲渡され世界に認識された。


当然予定調和的な事実の為、世界に混乱が巻き起こる事はなかったが、すでに壊れ始めたルースミールの治世はモンテリオン王国の国民に、不安の影を落とし始めていた。


ただ眷属で神の御付きに選ばれたナタリア嬢の献身的な態度と、エスペリオンはじめ上位眷属者の力添えの中大きな問題は起こらずに、どうにか平穏には過ぎていった。


一方グースワースでも色々と変化が訪れていた。


※※※※※


「おめでとうルナ。アカツキ、絶対に幸せにしろ。……最後の命令だ」

「はい。必ず」


俺の目の前で二人より添い、顔を赤らめていた。


アカツキとルナが結婚し、グースワースを卒業することとなった。

俺は卒業祝いでミユルの町に一軒家を用意しようとしたが二人に辞退された。

何でも二人で安息の地を見つける旅に出たいそうだ。


「俺、ゴドロナさんに拾われる前は、アルカーハインで暮らしていたんです。もう両親はいませんがルナに俺の故郷を見せてあげたくて……せっかくノアーナ様に家まで用意していただいたのですが……その…」

「す、すみません。私沢山罪を犯したのに…こんな勝手なことを……」


俺はため息をつきにこりと笑い二人に声をかける。


「かまわないさ。それにルナはとても努力してくれたんだ。胸を張るといい。お前はとても美しい。だがお前らはもう俺の家族だ。いつでも来ればいい。……幸せになってほしい」


俺は数年暮らせる金といくつかの魔道具を餞別として渡し二人を送り出した。

遠慮されたがこれだけは譲れない。


人族の寿命は短い。

もしかしたらこれが永遠の別れかもしれないが……


それもまた自然な事なのだろう。


※※※※※


「くっ、コイツら!?……おいっ、アカツキ……そうか、もうあいつは……おおおっ!!」


相変わらず戦闘訓練に身を置くカンジーロウたちは、今まで居たアカツキが居なくなったことで連携に不備が生じていた。


「危ないっ!援護します!!」


新たに加入したバリド・エスランが襲い掛かるギガントベアーの振り下ろす腕を弾く。


「!?すまない。……よし、一気に行くぞ」

「おうっ」


バリドは戦闘特化の魔族だ。

体術が得意で存在値は1100を超えて居る猛者だが、どうしても連携が遅れてしまう。

まだ加入間もないので仕方がない事ではあるが……


その一瞬がここでは命取りになる可能性が高いのだ。


何とか魔物の群れを退けた彼らはスアカットの回復術で傷をいやしほっと溜息をついた。


「よし、良いと思うが……流石にリナーリアほどの回復はできないけどな」


額に汗を浮かべスアカットが吐露する。


「そりゃあね。あの子おかしいもん。でもスアカットさんのおかげで私たち凄く助かっているよ。ね、カンジーロウ」

「ああ、ミーアの言う通りだ。本当に助かっている。ありがとうスアカット」


顔を赤らめ思わず笑みが浮かんでしまう。

確かにここは危険が多いが仲間たちの絆が非常に強い。


今までかなりひどい環境にいたスアカットは嬉しくなる。


「俺ももっと努力するさ。お前たちを死なせたくないからな」


「っ!?来るぞっ!!ゴドロナ、バリド、警戒を強くしろ、ミーアはバフを。スアカットは自分を守れ……今日はこいつらで最後にしよう。気合い入れろよ」


「「「おう」」」

「はい」


※※※※※


「カナリアお母さん、私に用って聞いたけど……」


メイド控室で27歳になったレイルーナがカナリアに問いかけていた。

すぐ横にはサイリスとマリンナも控えている。


「ええ、お疲れ様ね。あなたにお願いがあるの。ルナが抜けて今まとめ役がいないでしょ?あなたのお願いしようと思ってね。まあ、あなたが卒業予定ならサイリスに頼むのだけれど……どうかしら」


「っ!?……えっと、すみません。ありがたい話なのですが……その…」


顔を赤らめるレイルーナ。

実は今ドラゴニュートのドロスといい関係を築けていた。

そして実は、懐妊していた。


カナリアは優しい目でレイルーナを見つめる。


「ふふっ、そう……何か月かしら?」

「っ!?……カナリアさんにはかないませんね。……たぶん4か月くらいだと思います」

「おめでとう。ノアーナ様は御存じなのかしら」

「いえ、まだお話ししていません。……良いのでしょうか、私こんなに幸せで」


カナリアは優しくレイルーナを抱きしめる。

そして諭すようささやいた。


「いいに決まっているわ。きっとあの方も祝福してくださいます。むしろ早く言わないと怒られますよ?……お相手は……ドロスさんなのね」

「っ!?……はい。とても優しい方です」


27歳のレイルーナはこのグースワースでは年長の方だが顔を赤らめるさまはまるで少女の様だった。


「サイリス、あなたに頼みたいのだけれど、良いかしら」

「ええ、承ります。……レイ、おめでとう。……卒業するの?」

「……うん。……ナグラシアへ行く予定なの。……彼の故郷へ」


この数日後、ドロスとレイルーナはグースワースを卒業していった。

グースワースはこれで46人。


卒業し会えなくなるのは悲しい事ではあるが、皆が幸せそうな顔でいてくれている。

こんなに幸せな事はない。


※※※※※


「魔竜族のアンデット?」


ディードレック島のラスタルムの住処でレーランの叫びにも似た声が響き渡る。

今ここにはラスタルムと兄であるレイスルード、そしてレーランの3人と、情報を携えて来たエリスラーナが難しい顔で向き合っていた。


「うん。あいつら力を増している。不敬」


ラスタルムはため息をつきエリスラーナへ視線を向けた。


「なあエリス。どこに居たんだそいつ?……どのくらい強いんだ」

「ん。ガルンシア島にいた。7000くらいだった。……3匹いて1匹は私が引き裂いたから……あと2体は確実にいる」


「「「……」」」


重苦しい空気が広がる。

存在値7000も問題が大きいが、アンデットは非常に厄介だ。

アイツらは痛みなどの感覚がない。

おそらく理知的でもないため、実際に対応するには倍くらいの力が必要になる。


確実に仕留められるのは神であり古龍の王たるエリスラーナと、管理者に目覚め力を増したラスタルムだけだ。


レーランとレイスルードはおそらく手が出せないレベル。


「心配ない。私が倒す。……レーラン、絶対に手を出すな。……もし遭遇するなら……逃げなさい」

「っ!?……で、でも……」

「これは命令。……ノアーナ様が悲しむことはしたくない。不敬」


レーランとてノアーナとつながったことにより以前とは比較にならないほど力を増している。

真龍化したときの存在値は10000に届くほどだ。


でも……おそらく命がけになる。

エリスラーナはふっと息を吐いて優しいまなざしでレーランを見つめた。


「ノアーナ様に、赤ちゃん貰うのでしょ?……貴女を死なせるわけにはいかない」

「っ!?……はい」

「レイスルード」

「はっ」

「貴方はラスタルムに鍛えなおしてもらいなさい。弱いままは…不敬」

「!?……はっ、か、必ずや」


話を聞いていたラスタルムがエリスラーナに問いかける。


「んん?それじゃ今回対応するのはお前だけという事か?……危なくないか」

「ん?全然。今回ミューズスフィアが手伝ってくれる。ヌルゲー」

「おおう。あー、たしかにな。分かった。レイスルードは俺に任せろ」

「ん。頼んだ」


そのタイミングで空間が軋みとんでもない魔力があふれ出す。

ミューズスフィアがリバちゃんを抱え転移してきた。


「エリス、話し終わった?倒し行こう」

「ん。……捉えた。行く」


転移して消えた二人の場所を遠い目で見て、ラスタルムは残された二人に視線を向けた。


「そういう事だ。取り敢えず……レイスルード『竜滅』は最低でも覚えてもらうぞ。…レーラン、お前もだ。……ここの所おかしいんだよ。力はあった方が良い」

「「はいっ」」


※※※※※


世界各地で異変が起き始めていた。

人族、特にエルフの騒動は落ち着いてきていたが……


世界はどうやら動き始めていた。

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