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第3話 「村長、呪われてみたってよ」

朝。霊野月陵は村の公民館で、村の偉い人に説教を受けていた。


「で、なんでお前さんが祠を壊したことになっとるんじゃ」


「知らん!俺はたまたま面を見てただけで!」


「じゃあ霊に聞いてみよかの。お前、そういうこと得意じゃろ?」


「え?霊視していいんですか?」


「村に損害与えたんじゃ、働け」


「ブラック霊媒師か俺は」




ということで、月陵はまたも使えない霊たちに囲まれながら、村の“本当のヤバさ”に気づいていく。


「この村長、呪われてますよ。しかも、めちゃくちゃ“軽く”呪われてる」


「軽い呪いって何?」


「本人が気づかない程度に“めちゃくちゃモテない”とか、地味におにぎりが毎回梅とか、そういうレベル」


「最後のただの運やん」




ところが、霊のひとりがこうつぶやいた。


『いや……あれは、“誰かが意図的にかけた”呪いじゃない。村全体に、にじみ出てる呪気のカケラだ』


「えっ、村自体が呪ってるの?」


「そう。例えるなら、村が“人間不信系女子高生”みたいなメンタル」


「めんどくさっ!!」






村長の秘密


その日の夜。月陵はまた、奇妙な現象を目撃する。


村長の家の前で、地面が一部ボフッと膨らんだ。


「……地面、息してる?」


掘ってみると、中から出てきたのは――古びた日記帳。


中にはこう書かれていた。


《昭和五十年――祠を壊せば、村は笑う。呪いは消える。と、言われていた》


《だが、あれは嘘だった。祠は封印だった。笑い神は、作られた“神”だった》


《人の感情を切り取って、笑わせて、封じて、それが何百年も……》


「おいおい、怖いっていうか、村が人間の感情を税金みたいに徴収してた感じだぞ!?」




新たな異変


翌朝。ツグミが村の広場で絶叫する。


「月陵くん!大変です!村長が……!」


「死んだ!? 呪い!? 梅干しにあたった!?」


「アイドルになってました!」


「何ィィィィィ!?」


そこには、無駄にきらきらした衣装を着て「みんな、応援ありがとぉ〜」とカメラに手を振る、元・村長の姿が。


「なぜだよ!」


「どうやら、“人に笑われたい”っていう笑い神の感情が、まだ残ってて……それが“推されたい”に進化してるみたいです」


「呪いが現代的進化遂げてる!?」




対策会議(主に雑談)


月陵「もうこの村やばすぎる。俺、霊媒師として霊と話す以外に、できることないんですけど」


霊『じゃあ、あの村長の中に残ってる“笑い神のカケラ”を引っ張り出せばいいんじゃ?』


「できるの?」


霊『うーん……たぶん、やさしく抱きしめて“もう笑わなくていいよ”って言えばワンチャン』


「少女漫画的解決法!?」


ツグミ「月陵くん、それできます?」


「……できるわけないじゃん! なんで俺、村長ハグらなきゃいけないの!?」


ツグミ「じゃあ私がやりますね!」


「やらせるかあああああ!!」




村長、目を覚ます?


翌日。霊野とツグミは、村長アイドルの握手会に潜入。

CDのジャケットには《第1村シングル「笑え!祟れ!村Love Days☆」》と書かれていた。


「何このセンスのない神曲!?」


握手中、ツグミが村長にそっと語りかける。


「あなたはもう、笑われなくてもいいんです。祠も、もう壊れた。だから……帰ってください」


その瞬間――


村長の身体が、一瞬、透けた。


そして、背後に浮かんだ影が「ニコォォォォ……」と微笑み、風に溶けて消えた。


「……成仏した?」


「たぶん、“推し卒業”しただけだと思います」

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