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第9話 「村民全員感情クラッシュ!? フェスと封印と恋と涙とえくぼ」

──霊野月陵、全力疾走。


全裸の地縛霊・神倉ヨイチと別れ、びしょ濡れのまま村に戻ってきた月陵を迎えたのは、想像を超えた“異常”だった。


「……なにこれ。情緒、バグってる……!」


笑いながら怒鳴り合う村人たち。

号泣しながらアイスを手渡す子ども。

そして「結婚してくれええぇ!! ……やっぱムリィィ!!」と絶叫し続ける中年男性。


封印祠が壊れた影響で、“共感喰い”の封印は完全に解除されていた。

人々の感情は混線し、喜怒哀楽がめちゃくちゃに。まさに、感情のカオス。


「くそ……やっぱ俺のせいだよなコレ……!」


頭を抱える月陵の前に、ふたたび現れる村長。手には謎の看板。


「間に合ったわ! “緊急感情封印フェス2025”!」


「名前もうちょい考えよう!?」


──しかし、祭りは本気だった。


・巫女霊たちとの心霊合同ライブ

・“感情供養”盆踊り

・「えくぼで笑顔を取り戻せ」月陵握手会

・笑顔で送る“特大お焚き上げ封印式”


「この村……まさか、祭りで感情を封印しようとしてる……!?」


村長は静かにうなずく。


「怒りも悲しみも、ちゃんと“人の手”で送らなきゃならんのよ。それが、“元・人間”への礼儀じゃからの」


「(いやほんと、色んな意味でヤバい村だな……)」


──やがて夜。


村の夜空に、巨大な“それ”が現れる。


“神のようなもの”。

歪んだ感情の残滓。

共感喰いの本体。


「この村はまた、他人の感情を餌にする……人間とは、そういう生き物だ」


その冷たい声に、月陵は拳を握りしめ、叫んだ。


「俺は! 他人の感情を“知る”ために霊と話してるんだよ! 喰うんじゃねぇ、“寄り添う”んだよ!!」


──その瞬間。


月陵のえくぼが、光った。マジで。


「……なんと。えくぼが、感情の調和点に……!」


「いや無理あるでしょ!? 俺のえくぼで世界救うの!?」


でも、光るえくぼが放ったあたたかい波動は、神のようなものに“記憶”を呼び戻させる。


「……わたしも、かつては“人”だった。感情が怖くて……壊れた人間だった……」


一筋の涙を流しながら、神は静かに空へと還っていった。


──感情の祭りは、静かに幕を下ろす。


「……なんか、感動でオチつけるのズルくない!?」


「たまにはホラーにも救いがなきゃのう」


「……まあ、そっか」


しかし。


そのとき、月陵の背後から──声が聞こえた。


「あなたが……月陵くん? ごめん、ちょっと聞きたいことがあって……わたし、今……死んでるのかな?」


「え!? えっ!? 新霊!? ていうか次回!?」


背中に走る、冷たい悪寒。


──次回、最終話

月陵の旅路が、いま終わりを迎える――!



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