「かしこまりました、依頼されるクエストの種類は随行ですね。念のためお伺いしますが、護衛ではなく、随行でよろしいのですよね?」
「はい、大丈夫です。別に誰かに狙われてるわけじゃないし、初めてのひとり旅で不安だから、一緒に行く人がほしいなって」
少年は恥ずかしそうに頬を掻いた。年齢は十代前半ごろだろう。遠い町に住む祖母に、初めてひとりで会いに行くのだという。
本当は彼の父親が同行するはずだったのが、仕事の都合で行けなくなったらしい。
「目的地はどちらでしょうか」
「ハルマタです」
なるほど、結構な長旅だ。乗合馬車をいくつか乗り継いで、三日は掛かる。
「承知いたしました。受注者様の属性について希望はございますか?」
「いえ……あ、でも、男の人がいいです。女の人が一緒だと、緊張しちゃうので」
初々しいなと思った。
「あと、お兄ちゃんって感じの人だと嬉しいかもです」
「かしこまりました。剣や魔法の使用可否、学歴などは、こだわりなしということでよろしいですか?」
「はい」
「では、依頼を承りますので、依頼書の署名欄にサインをお願いいたします」
少年は少し背伸びをしてカウンターに身を乗り出すと、まだ柔らかそうな手でペンを握った。
随行クエストか……と、受付周りの床をモップでこすりながら考える。
僕は職場の決まりで十日間の夏休みをとることになっていた。
夏休みの予定はまだ、決めていなかった。