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第15話 募集した

 アーノルドと話をした翌日、草薙は冒険者ギルドに足を運んでいた。


「パーティ結成のために募集をしたい、と?」

「はい、そうです」

「でしたら、こちらに必要事項を記入してください」


 そう言われて、一枚の紙に必要事項を書いていく。募集する冒険者の種類や人数を記入する。とりあえず、馬を扱え、後方支援をしてくれるような人材にした。


(こうしてみると、完全に役所仕事だよなぁ……)


 そんなことを思いながら、記入した紙を受付嬢に渡す。


「確認しました。翌営業日から募集の掲示をします」

「よろしくお願いします」

「ところでタケル様は現在クエストを受注していますよね?」

「え、あ、はい」

「クエスト完了までの日数にはご注意ください」

(そういえばクエスト遂行のための募集だったな……。回りくどいことしてるよなぁ……)


 しかし、これもクエスト完了するための必要な行動である。ならば致し方ないと考えるしかない。


「しかし時間がかかるのが問題なんだよなぁ……。この時間で何しよう……」


 少し考えた後、草薙は思いつく。


「装備でも整えるか」


 ナターシャを呼びに、一度屋敷に戻る。


「装備の調達ね。分かったわ」


 そういってナターシャは付いてきてくれた。


「ところで、ナターシャっていつも何してるの?」

「何って……。いつもならお父様の公務のお手伝いしたり、エルケスの年度会計の確認したり……」

「え、ナターシャって議員か秘書だったりする?」

「領土と爵位を持つ家なら普通のことだよ?」

「あー、俺が平民なだけだったかぁ」


 そんな話をしながら、町工場のあるエリィ区まで移動した。


 エリィ区に到着する。町工場が所せましとあり、鎧から大剣、ヘアブラシまである。そんな中で、草薙は格闘戦向きの装備を探すことに。


「格闘戦が主体だから、硬い鎧は動きにくくなりそうな印象あるんだよなぁ」

「そうなると、革製の鎧があったはずよ」

「確かに、軽くて動きやすい恰好だ」


 実際に革製品を扱っている店に向かう。


「いらっしゃい」

「すみません、革の鎧ってあります?」

「あるよ。ただうちはオーダーメイドだから、前払いの注文してからじゃないと作らないよ」

「ちなみにお値段っていくらってあります?」

「見積もり取るなら注文してからだけど、兄ちゃんくらいなら五十セイル前後だろうな」

「五十セイルかぁ……」


 草薙は少し考え、答えを出す。


「じゃあ革の鎧一式ください」

「あいよ。じゃあ採寸するぞ」


 こうして全身を採寸し、革の鎧の製作を注文する。そのほか、冒険者として使うであろう背嚢や小刀、足回りの装備を整える。


「装備品を揃えるだけで、百セイル超えちゃったな……」


 予想外の出費に、草薙は頭を抱える。


「ただでさえスポンサー制度でアーノルドさんに迷惑かけてるのに、これ以上お金関係で迷惑をかけたらどうしようもないよ……」


 ここでいつもの希死念慮が発生する。


「迷惑かけてるだなんてお父様は思ってないはずよ。冒険者っていうのは、それだけ偉大な職業なの」

「そーなのかなぁ……。こっちの世界の価値観って、いまいち分からん……」

「大丈夫、そのうち慣れるわ」


 そうして装備が出来上がるのを待っている間に、冒険者ギルドから連絡が届く。どうやら募集に合致する冒険者が見つかったようだ。


 草薙は指定された日時に、冒険者ギルドへ向かった。


「タケル様ですね。お相手の方が待っています」


 受付嬢に案内され、面会室に案内される。そこにいたのは、草薙と大して変わらない年齢の女性だった。黒髪で目の色は赤、椅子に座っているが身長は低い印象を受ける。


「彼女が条件に合致した冒険者です」

「……なるほど」


 彼女を見た草薙は、何か頼りなさのようなものを感じた。しかしそれは彼女に対して失礼である。少なくとも、彼女は草薙よりも長く冒険者をやっているのだから。


「それでは、最後は当人同士で話し合ってパーティを組むかご相談ください。私は受付に戻ります」


 そういって受付嬢は部屋を出る。


「えーと、まずはお名前を聞かせてもらっても?」


 草薙から話しかける。


「はい。ミーナです」

「ミーナさん。よろしくお願いします。改めまして、自分は草薙武尊といいます」


 直接話した感じでは、かなりおっとりとした印象を受ける。


「現在の冒険者のランクは?」

「B級です」

「今まで冒険者として、どのような活動をされてたんですか?」

「いろんな冒険者の後方支援として、戦闘時は回復役をしています。そのほか、馬を操ったり料理をしたりって感じです」

(なるほど。派遣社員みたいに、いろんなパーティを渡り歩いているのか……)


 そのような解釈をした草薙。何事にも器用にこなすことができるのなら、これ以上の人材はいないだろう。


「個人的にはすぐにでもパーティを組んでほしい所なんですが、自分は戦闘以外はからきし駄目なので、そこはお任せしてもいいですか?」

「はい、大丈夫です」

「では交渉成立ということで」


 こうしてパーティが結成された。

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