おおよそ人間とは思えないような風貌。上裸で緑のジーパンを履いた男性型と、茶色のタンクトップに茶色の緩いズボンを履いた男性型の二人が宙に浮いていた。
「お前ら、まさか魔王の四天王か!?」
ジークがそのように尋ねる。
「いかにも! 俺は魔王の四天王が一人、暴風のエドラエル!」
「同じく四天王が一人、地鳴のナミクシエル」
緑のほうがエドラエル、茶色の方がナミクシエルと名乗る。
「四天王というなら、倒すほかないな」
そういってミゲルは剣を抜く。
「果たして倒せるかなぁ!?」
そういってエドラエルとナミクシエルが襲い掛かってくる。まずはエドラエルが急降下でミゲルを襲う。それをミゲルは突きで攻撃しつつ、相手に回避行動を取らせる。目論み通り、エドラエルは回避しつつ地面スレスレを飛翔する。
そのまま草薙に向かって飛んでいった。
「まずはテメェが死ねェ!」
草薙は目を見開いて、エドラエルの軌道を読む。そして腕や足、顔面などの掴める場所を見極める。
(ここっ!)
草薙は右手を出して、エドラエルの体を掴もうとした。その瞬間、自分の周りに影ができたことに気づく。
視界の上端に岩のようなものがあるのに気づいた時には、すでにそれは落下してきていた。
「グッ……!」
草薙は上から降ってきた巨大な岩の下敷きになりそうになる。直前に足が動いたことで、体勢を崩しながらではあったものの、岩の回避が出来た。
この岩の攻撃はナミクシエルによるものだった。草薙は岩の上にナミクシエルがいるのがチラリと見えた。
だがすぐに視線を別に移す。姿勢を崩したところにエドラエルが突っ込んできたのだ。
「グゥ!」
草薙は両腕を前に出し、必死になって防御する。そこへエドラエルの風魔法によるかまいたちが猛威を振るう。
いくらプロテクターをしているとは言え、それが一瞬でズタズタになるほどの攻撃力である。とてつもない威力であることが分かるだろう。
(あ、危なかった……! 自己防御スキルが無かったら、俺の腕も切り刻まれていた……!)
しかし脅威はまだ続く。
「攻撃が一度きりとは限らねぇぞ!」
エドラエルは急速に反転し、再び草薙に向かって飛んでくる。なんとか姿勢を戻した草薙だが、完全に無防備の状態だ。
『アガスト・ミギー!』
草薙を守るように、幾千ものダガーナイフがエドラエルに向かって飛んでいく。
そのダガーナイフを、エドラエルは局所的な暴風で全て吹き飛ばす。しかしそれにより、エドラエルは一旦止まらざるを得なかった。
『デトネーション!』
さらにエドラエルに向かって小規模な爆轟が発生する。ミーナの援護だ。
「大丈夫か、タケル!?」
「は、はいっ」
「一旦引くぞ! ここじゃ被害が出る」
そういってジークと草薙は、ミゲルのいるほうへと走る。そのミゲルはすでに戦略的撤退を開始しており、王都の外へと向かっていた。
「ここからどうするのです!?」
アリシアがミゲルに聞く。
「とにかく人気がない所に行くしかない! 今は城壁の外に向かって走るんだ!」
しかし、追手が攻撃しない保障はない。
「どこへ逃げるというのかね?」
後ろからナミクシエルが投石による攻撃を仕掛けてくる。これにより、周辺の建物に巨大な岩が次々と着弾していく。
しかも、ナミクシエルは巨大なゴーレムの肩に乗り、街を破壊しながら移動している。
「クソ! このままじゃ街の被害が拡大する!」
「城壁の外じゃなくても、広場に出ればまだ勝機はあるはずです! ミゲルさん、ここで戦いましょう!」
草薙はミゲルに意見を出す。苦渋の決断のようで、ミゲルは難しい顔をして決める。
「近くの広場で戦う! そこまで走れ!」
ミゲルの指示に従い、草薙たちは賢明に近くの広場へと出る。すでに後方からはゴーレムとナミクシエルが投石を行いつつ接近してきていた。
「タケル、勝算はあるのか?」
ミゲルが剣を構えながら聞く。
「正直、あんまりないです」
草薙もファイティングポーズを取り、臨戦態勢になる。
「正直、俺にも勝てる算段はねぇぜ」
「私もなのです」
「同じく」
ジーク、アリシア、ミーナも同意する。
「誰も勝てる見込みはないのか……」
「いや。負けるつもりもないってのが正直なところだな」
「ふっ、そうだったな」
そういってミゲルたちはナミクシエル、そして後から飛んできたエドラエルと対峙する。
「なんとしてもタケルの浄化に繋げるぞ!」
「おう!」
「もちろんなのです!」
「はーい」
「皆さん、よろしくお願いします!」
そういって草薙たちは走り出す。