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第6章: 排除

神の試験が、ついに始まる。


伝説の戦士・シュンが連れてきたという「弟子」が、本当に実力を持っているのか。


数百人の目が、一人の少年に注がれる。


期待、嫉妬、憧れ、敵意。


この場に集った者たち全員が、それぞれの「目的」を胸に抱えていた。




そして、試されるのはただ一つ。


その意志は――折れるか、貫くか。


—————————————————————————————————————————————————————————


(エデンが通路から姿を現す。足元のブーツがしっかりと砂地を踏みしめる。太陽が厳しく照りつけ、巨大なコロシアム全体を照らしている。)




(観客の轟音が、彼の全身を直撃する。)




エデン(小声で)


「……な、なんだこれ……?」




(周囲を見渡す。観客席は満員だ。何千人もの人々が叫び、拍手し、身を乗り出している。中には、彼の名前が書かれたプラカードを掲げている者もいる。)




エデン(心の声)


「ふざけんなよ……まるでサッカースタジアムじゃねえか……」




シュウ(観客席から手を振る)


「エデン! こっちだ!」




(エデンは驚きつつも、急いで近づいていく。)




エデン


「こんなに人がいるなんて思わなかった……」




シュウ


「観客のこと? 当たり前さ。シュンが弟子を連れて来たって噂が広まってるから、みんな興味津々なんだ。」




(周囲の参加者たちがエデンを見つめ、ささやき合っている。)




エデン


「マジかよ……」




シュウ(微笑んで)


「安心しろ。あの“弟子”が君だって知ってるのは、まだ一部だけさ。」




(観客席のどこかから声が飛ぶ。「エデン、信じてるぞー!」)




シュウ


「……あー、どうやら噂は思った以上に広がってるみたいだな。」




(エデンの目が見開かれ、膝が震え、その場に崩れ落ちる。)




シュン(駆け寄ってくる)


「大丈夫か、エデン?」




エデン(息を整えながら)


「うん……平気……ちょっと、休めば……」




ユキ(腕を組んで、冷ややかに)


「どう見ても“平気”には見えないけど。倒れる寸前じゃない?」




エデン


「いつからいたんだよ、ブス……」




ユキ


「最初からずっといるけど? バカ。」




(シュンが心配そうに彼を見つめる。)




シュン


「本当に大丈夫か?」




ユキ


「プレッシャーに潰されそうなんだよ。みんな彼を倒そうとしてるってのに、メンタルがそれじゃあ話にならない。」




シュウ


「ユキ、そんな言い方……!」




ユキ(エデンを真っ直ぐに見て)


「だからこそ、今聞くべきなの。……あなたにとって、これは何?」




エデン(ゆっくりと顔を上げる)


「……何の話だよ?」




ユキ


「プレッシャーに潰されて終わるか。それともそれを背負って、前に進むのか。」




(沈黙が落ちる。)




エデン(心の声)


「そうだ……単純な話だ。オレは別に、こいつらに認められたいわけじゃない。オレは、じいちゃんを取り戻すためにここにいる。あの野郎どもを倒すために、ここにいるんだ。」




(彼はゆっくりと立ち上がり、目に迷いはない。)




エデン


「ありがとうな、ブス。」




ユキ


「その感謝の仕方、どうなのよ……」




(シュウが苦笑する。)




シュウ(心の声)


「……この決意の源は、いったい何なんだ……?」




エデン


「なあ、シュウ。正直、オレがGODSに入れる可能性って、どれくらいあるんだ?」




シュウ


「……ぶっちゃけていい? 今年は、普通の人間じゃほぼ無理だね。」




エデン


「そっか。」




(突然、空から巨大なスピーカーのような音が鳴り響く。観客席全体が静まり返る。)




エデン


「今度は何だ……?」




シュウ


「始まるぞ。」




(観客席の上に、二人の威厳ある人物が姿を現す。)




???(重々しい声)


「もしもーし、これ、聞こえてるかー?」




エデン


「誰だよあのジジイ……」




ユキ(ため息交じりに)


「はぁ……思った以上にバカだったわ……」




シュウ(苦笑しながら)


「あれはゼウスだよ。ギリシャ神話最強の神にして、GODS学院の学長。」




(闘技場は静まり返る。ただゼウスの声だけが上空のバルコニーから響いていた。)




ゼウス「GODS学院の試験へようこそ。今年は…ちょっとしたサプライズをご用意しています。準備はいいかな?」




(観客席からざわめきが広がる。受験者たちの間にも困惑の表情が見える。)




シュウ「サプライズ試験…?」(眉をひそめる)




エデン(心の声)


あのピンク頭のバカ、こんな時こそ興奮してそうだな…




(場面転換。上層の特別席、シュンが突然くしゃみをする。)




ヘラクレス「お前の仕業か?」




シュン「ん? 試験のこと? そうだよ。こっちの方がワクワクするだろ?」




ヘラクレス「弟子には教えてないのか?」




シュン「言われてみれば…いや、教えてないな。でも、それも面白くなる要素じゃん?」




ヘラクレス「…お前、正気か?」




(アフロディーテがくすりと笑う。)




アフロディーテ「まさにあんたらしいわね、シュン。」




ヘラクレス「お前は時々、常識の代わりに筋力で生きてるとしか思えん。」




シュン「ありがとう」




ヘラクレス「褒めてねぇ!」




(ゼウスがアリーナを見下ろし、ほんの僅かに口元を緩める。)




シュン(低くつぶやく)


やべぇ…あの顔はマズい…




ヘルメス「どうした?」




シュン「ジジイが笑ってる…」




(ヘルメスが凍りつく。)




ヘルメス「まさか…」




(ゼウスの目がエデンにロックオンされる。)




ゼウス「見つけたぞ…」




(その瞬間、神のオーラが闘技場を包み込む。空気が裂けるような重圧が降りかかる。)




バァァァン!!




(ほとんどの受験者たちが膝をつき、観客の中にも倒れる者が現れる。)




シュウ「ぐっ…! な、なんだこのエネルギーは…っ!」




(ユキもわずかに震えながら耐える。)




(だが、エデンは立ち続けていた。)




エデン(心の声)


…化け物だ。この力は桁違い。でも、負けるわけにはいかない。




「大丈夫か?」(シュウとユキを見ながら)




シュウ「こっちが聞きてぇよ。…頭、割れそうじゃないのか?」




エデン「何の話だよ?」




(上からゼウスが半眼で見つめる。)




ゼウス(心の声)


流石だな…それにしても驚異的だ。




シュン「おい、ジジイ、そろそろやめろ。殺す気か。」




ゼウス「そうだな…」




(圧力が一瞬で消え、会場全体が安堵の息を吐く。)




ゼウス「ヘルメス、気絶した者たちを医務室に運べ。彼らは失格とする。」




ヘルメス「了解しました」




(アフロディーテが眉をひそめる。)




アフロディーテ「これ、あんたの計画?」




シュン「違う。ジジイが調子に乗っただけ。俺のせいじゃない。」




(アフロディーテが遠くからエデンを見つめる。彼は静かに立っている。)




アフロディーテ「…どうしてあの子、あそこまで平然としていられるの?」




シュン「君の想像より…ずっと深い理由さ。」




(ゼウスが再び口を開く。)




ゼウス「さっきの“ご挨拶”は失礼した。では本試験の第一段階を始めよう。」




「まず紹介しよう。今年の一年生担当講師——愛と美の女神、アフロディーテだ。」




(アフロディーテが優雅に中央へ降り立ち、その姿に静寂と敬意が満ちる。)




アフロディーテ「皆さん、ようこそ。第一試験は肉体能力とゼンカエネルギーの応用力を測るものです。力だけでなく、制御、本能、適応力も試されます。」




ゼウス「さあ、始めよう!」




(場面が変わり、次々と過酷な試練の様子が映る。重りの持ち上げ、険しい地形での疾走、魔法弾の回避、火や闇の中での耐久テスト…)




エデン(心の声)


くそっ…ギリギリじゃねぇか…もっと簡単かと思ってたのに…




(上からヘラクレスが腕を組んで見ている。)




ヘラクレス「お前の弟子、限界っぽいぞ。」




シュン「心配するな。これはただの通過点だ。…本番はまだこれからさ。」




アフロディーテ「信じられないわ…この無茶をゼウスと一緒に企んだのね?」




シュン「俺たちのイメージってどんな感じ?」




アフロディーテ「戦闘狂で自己中心的なナルシスト。」




シュン「ありがとう」




アフロディーテ「褒めてねぇって!」




(ゼウスが手を挙げる。場が静まる。)




ゼウス「結果を発表する。第一試験を突破した者は——」




(緊張が走る。)




ゼウス「合格者、26名。シュウ・サジェス、ユキ・ツカ…ナズ、そしてエデン・ヨミ。」




(観客が歓声を上げる。喜ぶ者、悔しがる者、さまざまな反応が交差する。)




ゼウス「そして……今年はもう一つ。追加の試験がある。」




(会場全体が再び静まり返る。)




ゼウス「内容は…一対一のバトル。参加者は半数。対戦相手は…抽選で決める。」




(金色の紋章が刻まれた巨大な箱が、闘技場の中央に運び込まれる。ヘラが優雅に前へ進み、手を軽く挙げて観客を静める。)




「参加者の皆さん、一人ずつ前に出て、この箱から紙を一枚引いてください。同じ番号を引いた者同士が対戦します。試合の順番も、引いた番号で決まります」




(ユキが迷うことなく一歩前に出る。)




「私が最初に行くわ」




(彼女は紙を引き、開いて見せる。)




「番号は、一番」




(静かにその場を離れる。箱はかすかに光を放ち、次の者を待つ。)




「次は俺の番だな」シュウが前へ進む。




(紙を引き、覗き込む。)




「二番、か…」




(その時、ショートヘアの少女が自信満々な笑みを浮かべながら中央に現れる。)




「道をあけてちょうだい。これからGODSの新たなナンバーワンが通るわよ」




(彼女は紙を引く… そして、それも一番だった。)




「完璧ね。これで対戦相手は決まり」




(ユキは無表情のまま、彼女をじっと見つめている。)




「彼女が?」とエデンがつぶやく。




「ナズっていう。強いし、厄介だよ」シュウが小声で答える。




「昔の友達か?」エデンが尋ねる。




「そんなところ」ユキがナズから目を離さずに言う。「かつては仲間だった。でも今回は——手加減しない」




「ふぅん、じゃあ自信がついたのね?」ナズが挑発的に笑う。




「心配しないで」ユキは金と青に輝く剣を少し抜き、「今日、どれだけ変わったかを見せてあげるわよ…お姉ちゃん」




(エデンが眉をひそめる。)




「姉妹なのか?」




(ユキは答えず、背を向ける。)




「おい、俺はどうなるんだよ?」エデンが叫ぶ。「その話、説明してくれよ!」




「自分の紙を引いてきなさい」シュウが箱を指差す。




(エデンはため息をつき、前へ出て紙を引く。)




「……二番か」




(静寂。)




「マジかよ…」シュウが気まずそうに笑う。




「つまり俺たちが対戦するってことか?」エデンがにやりと笑う。




(ふたりは数秒見つめ合い、空気が緊張する。二人のオーラが微かに揺れ始める。)




「遠慮はしないからな、シュウ」




「俺もだよ」




(観客席では、アフロディーテ、ヘラクレス、ヘルメスが真剣に見つめている。エデンのオーラがすでに場を揺らし始めていた。)




「見た? あの子…」アフロディーテが驚き混じりに言う。




「うむ…間違いなく何かあるな」ヘラクレスが眉をひそめる。




「シュン…あれは一体…?」ヘルメスがつぶやく。




(シュンはリラックスした様子で微笑む。)




「言ったろ? 面白くなるってさ」




(ヘラが再び前へ出る。)




「以上で抽選を終了します。番号一番の参加者は、準備時間として十分を与えます。他の方々は待機室で待つか、観戦していても構いません」




(ユキがシュウとエデンに向き直る。真剣なまなざしを向ける。)




「幸運を祈って」




「頑張れ」シュウが言う。




「運なんていらないだろ、ブス」エデンが茶化すように笑う。




(ユキは鋭い視線を返すが、何も言わずに去る。)




「本気だな」シュウがつぶやく。




「彼女を心配してるのか? それともナズ?」




「ナズの方だ。でも、今のユキなら誰が相手でも手を抜かないよ」




(シュウとエデンは並んで待機室へ向かって歩く。)




「手加減はするなよ」シュウが目を向けずに言う。




「する気はない」エデンが答える。




(場面転換:闘技場。アフロディーテが高台から見守る中、ヘラが手を挙げる。)




「第一試合の参加者、準備してください」




(ユキとナズがそれぞれ反対側に立つ。)




「準備はいい?」ナズが武器を構えながら尋ねる。




「今日こそ、私の力を見せてあげる」ユキが静かに答える。その言葉には底知れぬ威圧感があった。




(ユキの剣が輝き出す。金と青の光。そのオーラが解き放たれる。)




「手加減しないわよ、お姉ちゃん」

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