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第12章:雷の継承者

権力は、勝利する力だけでなく、抵抗する意志によっても測られると言われています。


GODS のような世界では、あらゆる視線が判断となり、あらゆる一歩が宣言となるため、目標を持つだけでは十分ではありません。それは持続されなければなりません。呼吸してください。我慢しろ。


正義のために戦う人々の物語は何世紀にもわたって繰り返されてきました...しかし、その言葉の重みに耐えようとする人はほとんどいません。正義。それは強さにあると信じる人もいれば、制御にあると信じる人もいます。存在するものを破壊しようとする人もいます。それ以外の場合は書き直してください。


そして二つの意志が交差するとき、空虚と同じくらいの火とともに、周囲の世界は震える。


今日、問題は単に誰がより強いかということではありません。


それは、自分の信念のために、保証なしに完全に燃え尽きる覚悟があるかどうかです。


なぜなら、望んでいたわけではない出会いがあるからです…しかし、それは日々の流れを変える運命にあるのです。


そしてこれは…そのうちの一つです。


—————————————————————————————————————————————————————————


教室には、静かな期待が漂っていた。




アフロディーテが扉から現れた瞬間――


その空気は、ピンと張りつめた。




その視線は、ほんのわずかに光を宿しながら、生徒たちを見渡す。




「おかえりなさい」


その声は、はっきりとしていて透き通っていた。




「本日から、皆さんは四つのグループに分かれます。


GODSの敷地内、それぞれ異なる区域に住み、残りの期間は同じ寮で生活を共にすることになります」




シュウが眉をひそめた。




「……その目的は?」




アフロディーテは迷いなく答える。




「“安定したチーム”の育成よ。


いずれ、皆には共同任務を任せることになるから。


我々はすでに、皆の相性を分析して、最良の組み合わせを決定した」




シュウは小さく頷き、つぶやいた。




「……なるほどな」




ざわつく教室を、アフロディーテの声が再び貫いた。




「――第1グループ。ヨウヘイ、ロワ、セバスチャン、ゼフ」




シュウの目がわずかに見開かれる。




「……すげえメンツだな。最強組、って感じか」




「――第2グループ。ルクス、アイザック、リカ、ジェイク」




「悪くないな」


アイザックが腕を組みながら、満足げに微笑む。




「――第3グループ。ロイ、アリス、リュウザキ、エリス」




エリスは呆れたように天井を見上げる。




「……よりによって、騒がしい連中と一緒か。面倒くさいわね」




ロイは表情を崩さず、ひそかに喜びを噛みしめる。




(アリスと同じグループか……ラッキーかも。でもエリスは……うーん)




アフロディーテは最後のグループを静かに告げる。




「――第4グループ。エデン、シュウ、ユキ、バイオレット」




「この二人と!?」


ユキが露骨に嫌そうな顔でうめく。




「……何か問題でも?」


エデンが片眉を上げて返す。




「別に。何もないわよ」


ユキは腕を組んでそっぽを向く。




バイオレットが柔らかく微笑む。




「ご一緒できて光栄ですわ。どうぞよろしく」




シュウは肩をすくめながら彼女を見た。




「ようこそ、ちょっとだけ面倒なグループへ」




アフロディーテがジャケットから小さな金色の鍵を取り出し、


見事な精度でそれをシュウに投げる。




「あなたがリーダーよ。当然でしょ。あの二人に責任を持たせる気はないから」




「ほら見ろ。アフロディーテ様のお墨付きだ」


エデンがニヤリと笑う。




「お前らグルか!?」


シュウは鍵を受け取りながら叫ぶ。




「他のグループも、リーダーを選んでおくこと。


明日もここに集合して。数日後に予定している大規模イベントの準備があるわ」




生徒たちはそれぞれ、新たなチームメイトを見つめ合う。




だがその視線の裏で、誰もが悟っていた。




――今日から、自分の“人生”と“運命”は、


他人のそれと、深く結びついていくのだと。




***




朝日が地平線をかすめた頃――


第4グループはキャンパスの外縁に到着した。




彼らの目の前に現れたのは、木々に囲まれた広々とした寮だった。


静けさと穏やかさに包まれたその空間。




シュウがポケットから小さなメモを取り出す。




「……アフロディーテの指示によれば、各部屋には名前が刻まれていて、


ランクカードでのみ開けられるようになってるらしい」




彼はカードを差し込み――


小さな音とともに、玄関の扉が開く。




内部は、意外なほど広く、明るく、そして整っていた。




「悪くないな……」




自室に入ったシュウは、ベッドや棚、清潔な机をざっと見渡して満足げにうなる。




少し後ろを歩いていたエデンは、長い廊下と高い天井に首をかしげる。




「外からはもっと小さく見えたのに……」




やがて彼は、自分の名前が刻まれた金属のドアを見つける。




カードをかざすと、淡い光が走り――扉が開く。




そこには、想像以上の空間が広がっていた。




高い天井。森を見渡せるパノラマウィンドウ。


そして――部屋の隅には、丁寧に包装された箱が置かれていた。




上には、手書きの文字。




“エデンへ”




慎重に開けると、中にはいくつもの小包と――一通の手紙。




あの筆跡は――すぐにわかった。




「やあ、エデン。君からの手紙、ちゃんと読んだよ。


まさかヨウヘイに何発も食らわせたとは……すごいじゃないか」




――シュンだった。




手紙には、神々の会議についての助言や、


「あいつらの動き」への警戒、


そして――アイツらしいサプライズ。




中には、式典用の礼装まで同封されていた。




「……服まで送ってくるなんてな、クソピンク」




布を優しく指で撫でながら、エデンがつぶやいた。




そのとき、コンコン――と軽いノック。




扉を開けると、腕を組んだシュウが立っていた。




「……いい部屋だな」




「うん。予想以上に快適だよ」


エデンは手紙を手にしたまま返す。




シュウは部屋の中に目をやる。




「その箱、もしかして……?」




「シュンからだよ。式典用の衣装、だってさ」




「……そうか。そろそろその時期か……」




「そういえばさ」


エデンが思い出したように言う。


「ゴールドランクの部屋って、三倍くらい広いらしいよ」




「マジで?」


シュウが目を丸くする。




「すごい優遇だな……」




「だからこそ、早くそのランクに行かないとな」




「……そうだな。すぐにでもな」


シュウが笑う。




「一緒に、登ろうぜ」


エデンは迷いなく言った。




「……ああ、そうだな」




しばしの沈黙のあと、エデンが立ち上がる。




「ちょっと散歩してくる。ゴールドの部屋、見てみたい」




「オレは遠慮しとく。荷物届くし、整理しておきたいからな」




「じゃ、また後で」




「気をつけろよ」




何気ないやり取りを交わして、扉が閉まる。




エデンは廊下に一人残され、


その手には――まだ手紙があった。




何がこの日を待っているのかは、分からない。




だが、空気のどこかが囁いていた。




――本当の試練は、これから始まるのだと。




寮を離れていくたびに、エデンの胸には一つの好奇心が静かに燻っていた。




何度も耳にしていた――“黄金の翼”。




それは、GODS内でも最高ランクの者たちだけが住む、特別な区域。




そして今――彼はその丘の麓に立っていた。


そこから先は、まるで別世界だった。




眼前に広がる建物は、光を反射して本当に“輝いていた”。


神話の文様が刻まれた外壁。


空へ伸びるような巨大な扉――まるで本物の神のために建てられたかのようだった。




「……すげぇな」


エデンは思わず呟いた。


「床までこっちのほうが綺麗だし……」




そのとき、刺すような声が降ってくる。




「……何の用だ、悪魔」




バルコニーの上から、ヨウヘイが冷たい視線を向けていた。


腕を組み、明らかな敵意を隠そうともしない。




「……落ち着けよ。ただ噂が本当か見に来ただけさ」


エデンは興味なさげに返す。




だが、その言葉に割り込むように――


柔らかな声が、背後から差し込んだ。




「……入れてあげて」


ロワが静かに言う。


「すぐに済むでしょう。


それに……銅ランクの生徒がこの場所まで来るなんて、珍しいもの」




ヨウヘイは渋々だが、それ以上言葉を交わさず引き下がる。




エデンは小さく頭を下げて、建物の中へ――




そして、その瞬間。空気が変わった。




大理石の柱、浮遊する光、足元には柔らかな絨毯。


扉一つひとつが荘厳で、辺りの静寂は“畏敬”に満ちていた。




「……ここが“頂点”か」


彼は、ヨウヘイやゼフの部屋の前を通りながら呟く。




「……驚いた?」


隣に現れたロワが、微笑みながら言う。




「想像以上だ」


エデンは正直に答えた。




「……いつか、君にもこんな部屋が与えられるわ。


がっかりさせないでね」




「……君は、俺を嫌ってないのか?」


エデンは視線を向けずに尋ねた。




ロワはしばし沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。




「嫌う理由がないもの。


……君が“悪魔”だなんて、どうでもいい。


私は“強い者”に興味がある。それだけよ」




エデンは、苦笑いを浮かべる。




「……期待はずれかもな。


俺は、“強く”なんてない」




「……自分を欺かないで」


彼女は柔らかく、だがはっきりと言った。




「アフロディーテや他の神々が、何もない者に期待なんてしない。


皆が口にしなくても――“力”はすべての価値を決める」




その言葉の重さに、エデンは言葉を失いかけた。




だが――




「……悪魔、ヨウヘイがお前を呼んでる」




背後に立っていたのはセバスチャン。


その声には、露骨な嫌悪が滲んでいた。




エデンは天井を見上げ、深く息を吐いた。




「……また何だよ」




「さあね」


ロワが肩をすくめる。


「でも――挑発には乗らないで」




寮を出ると、ヨウヘイが中庭の中心に立っていた。


腕を組み、厳しい表情で。




「……今度は何だ?」




「……お前に挑む」




「……は?」




「勝負だ」




「……暇じゃないんだけどな」




「……逃げるのか?」


ヨウヘイが意地の悪い笑みを浮かべる。




「お前……俺の何がそんなに気に食わないんだよ。


何したってんだ?」




「勝ったら教えてやる。


……負けたら、一生分からないままだ」




エデンは舌打ちし、剣を抜いた。




「ちょうどいい。いつも持ち歩いてるからな」




祖父の剣ではなかった。


未だ、その重みに“ふさわしい”とは思えなかった。




「……勝てば、話すってことだな?」




「そうだ」




「……言い訳、考えておけよ」




刃が闇に包まれ、黒いオーラが立ち上る。




その様子に、ヨウヘイの目が見開かれる。




「……そんなはずはない。


オーラの制御は、数日前に習ったばかりなのに……」




(こいつの“学習速度”は――一体……?)




「……最近覚えた技だけど、


ちょうど練習したかったんだよ」




空が、暗くなる。




雲が渦を巻き、雷鳴が轟く。




ヨウヘイの手が、稲妻に包まれる。




「……失望させるなよ、“悪魔”」




「……もうその呼び方やめろっつってんだよ!」




エデンが飛び込む。


黒いオーラをまとったまま――




ドガァァン!!




雷が一直線に降り注ぐ。




それは、まるで神の裁きのように。


エデンの体が弾け飛び、地面に転がる。


服が焦げ、煙が立ち上る。




「遅すぎる」


ヨウヘイが腕を下ろしながら呟く。


「……噂は嘘だったか」




エデンは、痛みに呻きながらも肘をついて体を起こす。




「……神だろうと、お前だろうと……興味ねえ。


ここに来た理由は、お前らには理解できねぇ。


邪魔すんなら――殺す」




その目には、狂気すら宿っていた。




ヨウヘイは、薄ら笑いを浮かべる。




「……やってみろ」




両手を掲げると、雷が天から集まる。




――そこに生まれたのは、“雷の樹”。




稲妻が枝のように広がり、


根がうねり、地面を這い始める。




「――雷術・“電撃の樹”」




黄金の輝きを放つヨウヘイの体。




――神聖にも見えるその姿。




「なんだよ、あれ……」




「今の俺に、敵う奴なんていない」




稲妻が放たれる。


エデンはギリギリで回避する。


次々と飛んでくる雷。


肩に直撃、足元が爆発――


壁へと吹き飛ばされる。




「無駄だ。


雷の速さにお前は追いつけない。


お前は――遅い、“悪魔”」




「……そうだな。今回は、そうかもな」




ボロボロの体。


焦げた衣服。


震える剣。




それでも、諦めない。




「……どうすりゃいい……近づけねぇ……!」




ヨウヘイが、雷を纏って歩み寄る。




「忠告してやるよ。


ここはお前の居場所じゃない。


ここに来たのは――“運”だ」




「……で、その高尚な目的ってなんだよ」




「――神になる。


力を乱用する者を裁き、世界を正す神に」




エデンは、しばらく黙ってから――笑った。




「……それだけ?


もっと狂ってるかと思った。


けど、意外とまともだな。


……案外、俺たち似てるかもな」




ヨウヘイの表情が、ピクリと動く。




「……ふざけるな。


お前と一緒にするな、“悪魔”」




「――バカなとこは、そっくりだ」




「……何が言いたい?」




その瞬間、エデンの姿が消える。




――一閃。




地面を斬り裂く剣。


雷の“根”が切断され、


術式が不安定になる。




「……なにっ?」




「――一瞬の隙。それだけで十分だった」




だが――




「――雷封印」




ヨウヘイの呟きが響く。




爆発のような雷光が、エデンを飲み込む。




「ぐあああああああっ!!」




全身が痙攣し、膝をつく。




「その程度の斬撃が通じると思ったのか?」




天が鳴った。




エデンは、震える呼吸を繰り返しながら――それでも目を逸らさなかった。




「……お前には、ここは似合わない」




「――決めるのは、お前じゃない!!」




その瞬間、場の“気配”が変わった。




ヨウヘイの脳裏を、何かが覆う。




それは、“闇”。




異質で、原始的で、恐怖そのもののオーラ。




「……小さき半神。


お前の肉体から、丁寧に刻んでやろう……」




ヨウヘイは、一歩後退する。




「……なんて力だ……」




そのとき――




二つの影が飛び込んできた。




武器を構えたまま。




「――その技を解除しろ」


氷のような声で、シュウが言う。




「さもないと――斬る」




ロワと並び、彼はエデンの前に立つ。




ヨウヘイは笑った。


そのまま術を解除し、背を向ける。




「……逃げるな!!」


シュウが叫ぶ。




「もういい」


ロワがひざをつき、エデンに手を伸ばす。




「ヴァイオレット!」


シュウが叫ぶと同時に、少女が現れる。




その手から放たれる癒しの青い光。




そして――


空から、雷が消えた。




静寂が、GODSを包んだ。




――闇。




そこには、時間も、形も、方向もなかった。


ただ、底知れぬ静寂の“深淵”。




だが、その虚無の中で――


二つの存在が、まるで銀河同士の衝突のようにぶつかり合っていた。




「……何をしているつもりだ?」




低く、重く、反響する声。


まるで幾千の“意志”が重なって語るような、異質な響き。




相手はすぐには応えなかった。




“存在しない床”を、堂々と歩く足音だけが虚空に響く。


その姿勢には迷いがなく――


誰に見られても構わないという強さが宿っていた。




やがて、その口が開く。




「……俺は、役目を果たしただけさ。


あいつはもう、俺のものだ」




その声は鋭く、どこか嘲笑めいた響きを持っていた。




「……お前に導けるとは思えん。だから、俺がやる。俺なりの方法でな」




バチッという音が空気を裂く。


真紅の雷が闇を突き抜け――


相手の足元を叩く。




だが、その者は一切動じない。




「……俺の許可なしに、再び“制御”を奪うな」


最初の声が重く響く。




「次は……奴を内部から壊すことになるぞ」




「……それがどうした」


冷たく吐き捨てるように返す。


「お前はただの“観察者”だろう? それとも……


まだあいつに何か期待してるのか?」




「……あいつは、まだ準備ができていない」




「いつになったら準備ができるって言うんだ?」


影の中の男が、一歩前へと進む。




その瞳は、燃える炭のように赤く――激しく輝いていた。




「……お前が“その時”を待ってる間に、


あいつは踏みにじられ、侮辱され、ゴミのように扱われてるんだ」




「それでも、暗黒に引きずり込む理由にはならん」




「ふざけるなよ。


俺が与えるのは、“闇”じゃない」




その口元に、ゆっくりと笑みが浮かぶ。




「俺が与えるのは――“力”だ。


本当に大切なものを守れる、唯一の力だ」




「……その代償は、あまりにも大きすぎる」




姿は曖昧なまま、二つの存在が向かい合う。


一方は、常に揺らぎ、黒き力を噴き出す影。


もう一方は、安定し、淡く輝く静かな光をまとう。




「……決めるのは、彼だ」




光の存在がそう言い残し、ゆっくりと背を向けた。




「……そして、その時には――もう遅いさ」




闇の中の男が、冷ややかな微笑みを浮かべる。




ドクン――




虚空に、鈍い心音が響いた。




そして――




エデンは目を覚ました。




ぼんやりとした天井。


両腕には包帯が巻かれ、喉には鉄の味が残るような苦み。




彼はゆっくりと身体を起こしながら、


自然と、ある疑問が口を突いて出た。




「……アイツ、誰だったんだ?」




返ってくる声はなかった。




ただ――




部屋の空気に、微かに残る“電気の残響”。




そして――




自分のものではないような、遠く深い笑い声の“余韻”だけが


その耳に残っていた。

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