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第35章: ラグナロク

大地は震え、空は血を流し、古代の予言の響きが運命の柱の間に響き渡る。


神々は希望を失って決意に満ちた目で地平線を見つめている。彼らは、不滅の魂の奥底では、どれだけ訓練しても十分ではないことを知っていたにもかかわらず、何世紀にもわたってこのような日のために準備してきました。ラグナロクは単なる戦いではなく、時代の終わりなのです。


誓いは破られた。同盟は崩壊した。そして、その中で、癒えることのない古傷のように真実が明らかになり、神々でさえも恐れることができるのです。


ホストが深淵に向かって進むにつれて、時間が止まったかのようになります。戦争の歌は勝利を祝うものではなく、かつて平和を夢見た人々の記憶を祝うものです。なぜなら、戦士がどれだけ強いか、鎧がどれだけ派手かということは問題ではないからです。運命の審判に直面したとき、誰もが同じように血を流す。


世界を繋ぐ橋であるビフロストは、今や生と死を繋ぐ橋でもある。そして、そこに埋もれた名前は記憶されるだろう...あるいは忘却の淵に葬られるだろう。


復讐のために戦う者もいるだろう。その他は、義務のため。そして、愛のためにいくつか。しかし、彼らは例外なく、自分たちが属する世界が二度と同じではなくなることを知りながらそうするだろう。


ラグナロクが始まったからです。


そして誰も安全ではない。


————————————————————————————————————————————————————————————————


アスガルドの城壁の上、ティールは眉をひそめ、拳を固く握りしめながら遠くを見つめていた。


遥か彼方、無数のヨトゥンたちが生きた疫病のごとく地平線を覆い尽くしていた。




「…あり得ん」


小さく呟いたその声には、絶望がにじんでいた。


「このままじゃ…この壁はもたん。奴らがアスガルドに侵入してしまう…」




――




宮殿内。


沈黙と戦火の歳月をともにした女王フリッグの前に、全父オーディンが重々しく立っていた。


空気は、二人の鎧よりも重く張り詰めていた。




「今…なんと?」


信じ難いといった面持ちで、フリッグが問い返す。




「ロキが…罰から逃れた」


オーディンは一切の迷いもなく、そう告げた。




ちょうど到着したトールが、その言葉に拳を震わせる。




「そんな馬鹿な…!」




「それだけではない」


トールは続けた。表情には厳しさが滲んでいた。


「ヨルムンガンドも、永き眠りから目を覚ました」




オーディンは目を逸らした。


「それは…嘘だ…そんなことが…」




「さらに、フェンリルも鎖から解き放たれた」


トールの声は重く、事実を告げるたびに場の緊張が増していく。


「戦いは、我々の想像を遥かに超えている」




沈黙ののち、オーディンの目が鋭く光った。


その声は乾いており、意志が込められていた。




「ならば、もはや後戻りはできん。九界すべてに対し、全面戦争を宣言する」


「神々よ…どうか我らを許したまえ」




「本当に…それしか道はないのですか?」


最後の希望を込めて、フリッグが問いかける。




「もし他の選択肢があるならば、迷わずそれを選んでいた」


「だが、言葉の時は終わった。ヴァルハラの扉を開けろ」




――




宮殿の中心。


太古の時より閉ざされてきた、黄金のヴァルハラの門が聳え立っていた。


オーディンは詩と音楽の神ブラギとともに歩む。


その指先はすでに竪琴の弦を撫でていた。懐かしさと恐怖が入り混じった音が、空気を震わせる。




「この時を、ずっと待っていたはずだった」


ブラギは伏し目がちに呟いた。


「…でも、来てほしくなかった」




「お前しかできぬ」


オーディンが言う。


「この扉を開けられるのは、お前だけだ」




ブラギは黙って頷く。


竪琴の音色が広間に満ち、闇を切り裂くように高まっていく。


呼応するかのように、百を超えるワルキューレが整列し、重々しく声なき歌を捧げる。




地が震え、天がざわめく。


そして――門が、開いた。




その中から現れたのは、白金の鎧を纏った数千の戦士たち。


かつて名誉を守って死した者たち。今、終末を迎えるために呼び戻された勇者たち。




オーディンは声高に宣言した。




「ようこそ、戦士たちよ!


 ここは永遠の祝宴の場。だが今日は…貴様らが復活した、その日だ。


 ラグナロクが始まる!」




亡者の雄叫びが空を揺らす。


盾が打ち鳴らされ、槍が光を反射する。


伝説の最後の一章を刻む準備が、整った。




オーディンはトールに目を向ける。




「私が死んでも…必ず、奴らを倒せ」




「…分かってる、父上」




――




一方その頃、フリッグは静かに装備を整えていた。


だが、その背後に忍び寄る影に気づくのは遅かった。




血が、大理石の床に広がった。




「ひとつ、消えたか…」


フードの奥から妖しく光る目が見えた。


操糸の魔術で操られたホズルの屍体が、まるで人形のように揺れている。




「新しいオモチャは実に面白い…ふふっ」




――




息を切らしながら、衛兵がオーディンの元へ駆け込む。


報告を耳打ちされ、オーディンは表情を変えず頷いた。


しかしその胸の奥では、世界が崩れていた。




「報告、ご苦労だった。下がっていい」




「何があった?」


父の顔の変化に気づいたトールが問いかける。




「…何でもない」


オーディンは静かに嘘をついた。


「もう出陣の刻だ」




トールは、それ以上は聞かなかった。




――




兜をかぶり、愛馬にまたがる。


ビフレストの光柱が空へと昇る中、オーディンは静かに呟いた。




「…必ず殺す。奴らを全員…」




そして、アスガルドの軍勢は進軍を始めた。


戦場へと。終焉へと――。




軍勢は、ついに戦場へと集結した。




ムスペルヘイムの果てから、スルトが黒き大剣を肩に担ぎ、燃え上がる松明のごとく炎を揺らしながら前線に立った。ニヴルヘイムからは、氷の巨人スリュムが冷気を纏い、その存在だけで空気を凍てつかせた。忘却の闇からは、ロキが歪んだエインヘリャルを率い、静かなる死の行進を進めていた。




一方、オーディンの天界軍は規律正しく整列し、空さえ震えるような重圧を放っていた。




戦場には、スルト、スリュム、ロキ、そしてオーディン。世界の運命は、彼ら四柱の決断に委ねられていた。




オーディンは眉をひそめ、槍の柄を力強く握りしめながら敵軍を睨みつける。




(……貴様ら全てを滅ぼしてやる)




その視線は、ロキと交差した。




ロキは病的な微笑みを浮かべる。




「これは……面白くなりそうだな」




その隣で、スリュムが両腕を広げ、声高らかに宣言した。




「我らヨトゥンの時代が来た! 父ユミルの意思は今、我らの手によって果たされるのだ!」




氷の軍勢の足音に合わせて、大地が軋む。




スルトは小さく呟く。




「……約束は守るさ、かつての好敵手よ」




戦場には、炎、氷、闇、そして光が入り混じる。天上のビフレストからは、ヘイムダルが戦況を見下ろしていた。彼は無言でギャラルホルンを持ち上げると、一息に吹き鳴らす。




轟音が世界を貫いた。山は揺れ、獣は吠え、空さえもざわめいた。




「いまの音は……?」エデンが空を見上げた。




「……最悪ね」イッスが低く呟く。




ナイは顔を青ざめさせたまま、絶望を告げる。




「ラグナロクが……始まった」




* * *




その音を合図に、地獄のような戦いが始まった。




剣、槍、牙、炎が激突し、血が地面を染めた。命は咆哮とともに散り、怒号と絶叫が空に響く。




その混沌の中、フェンリルはオーディンを目がけて跳びかかった。




「父上!」トールが駆け寄る。




「――ああ。奴はここで終わらせる」




「一緒に戦えば……」




言葉は、雷のような衝撃に遮られた。




ヨルムンガンド――終末の蛇が空より現れ、その巨体でトールを巻き込んだのだ。彼の体は戦場の果てへと吹き飛ばされた。




オーディンは静かに馬を降りると、大地に槍を突き立てた。




「……予想より賢いようだな」




フェンリルは嗤う。そして次の瞬間、槍と爪が激突し、大陸を割るほどの衝撃が巻き起こる。




* * *




アスガルドの城壁では、巨岩が次々と降り注ぎ、砦が崩れかけていた。




「これは……まずいな」ティールが眉をしかめる。




「戦うしかない」弓を構えたウルが言う。




「わかってる……だが、多すぎる」




「恐れているのか? 君からそんな言葉が出るとはな」




「これは恐怖じゃない。責任だ。俺たちが止めなければ、アスガルドにいる皆が死ぬ」




「それも……そうだな」




その時、空を裂いてヨルムンガンドの尾が落ちてきた。




「なんだ、あれは……!」




続いて、トールが墜ちてきた。ビフレストに叩きつけられ、壁が震える。




「……トール?」




「運が良かったな。彼がいれば希望はある」




「……いや、違う。今の彼は……戦えない」




「何を言ってる。トールだぞ」




「心が……壊れてるんだ。ヨルムンガンドに、魂を引き裂かれた」




ウルは絶句した。だが、敵は容赦なく迫ってくる。




「やるしかないのか……?」




「ああ。ここで倒れても、構わない」




「……クソ、命がいくつあっても足りねえ」




ティールとウルは咆哮を上げ、最後の決意を燃やす。




終焉は、すでに始まっていた――。




ティールは最初に動いた。




空気を揺るがすような咆哮とともに、戦の神は片腕で剣を握りしめ、アースガルズの城壁近くにいるヨトゥンたちへ突撃した。その隣で、ウッルが稲妻のような冷気を放ち、二人はまるで何世紀もの修練を積んだかのような連携で敵を切り裂いていった。




「こいつら、一体何でできてるんだ…!」


ティールは剣を巨人の胸に突き刺しながら思った。


「倒れないなんて、おかしい…!」




その時、大地が揺れた。巨大な斧が戦場の中央に落ち、火と砂埃が舞い上がる。ウッルが上空を見上げた。




「遅ぇぞ、クソ野郎」


苦笑しながら呟いた。




空から流星のごとく降り立ったのはヴィーザルだった。




「パパが来てやったぜ、クソガキどもォォォッ!!」




そしてその通り、オーディンの寡黙な息子は蹂躙を始めた。彼の一撃一撃が骨を砕き、その足音一つで大地が震える。ヨトゥンたちは、神の怒りに踏み潰される虫のように倒れていった。




「これで終わりか?前より弱くなったんじゃねーのか、ゴミどもが!」




だが傲慢には代償が伴う。特に巨大な一体のヨトゥンが、強烈な一撃でヴィーザルをアースガルズの壁まで吹き飛ばし、石壁に叩きつけた。血を吐きながら、彼は低く唸った。




そして、彼が現れた。




炎に焼かれた死体と煙の向こうから、炎のヨトゥン、ブラーンピルが姿を現した。その手には、地獄の業火をまとう鞭が揺れていた。




「うんざりだ…てめぇら傲慢な神々にはよ。口ばっかりのクズどもに、本物の力ってやつを見せてやるよ」




ティールは目を見開いた。


「なんだ…こいつ、どうしてこんなに強い!?」




ブラーンピルの鞭が空を裂き、ティールの頬をかすめてアースガルズの壁を叩き、壁は激しく崩れ落ちた。




「…やべぇな」


ウッルが呟いた。




「この隙に奴らが侵入すれば…全員、死ぬ」




ウッルが叫ぶ。


「ティール!ソーを立ち直らせないと!今すぐに!」




「ああ…奴しか、あの化け物を倒せる者はいない」




――その時だった。




遠くでヴィーザルが崩れ落ちた。群がる敵に蹂躙されていた。




怒りの咆哮が空を突き破る。




雷光が地を裂いた。




ヴィーザルを囲んでいたヨトゥンは一瞬で焼き尽くされた。




空から、雷そのもののような姿のソーが降臨した。




「ソー…!」


ティールが叫ぶ。




雷神はゆっくりと地に降り立ち、目を燃やして言った。




「よぉ、炎野郎。あと何秒で俺に負けると思う?」




ブラーンピルは信じられないという顔をした。




「俺に言ってるのか?」




「そうだよ、トロいやつ」




「てめぇ如きに…勝てるわけねぇだろ!」




「へぇ、余裕だな」




次の瞬間、ソーは目の前に立っていた。鞭を片手で掴み取りながら。




「て、てめぇ…!」




「30秒くれ。そんだけで終わる」




雷神トールの前に立ちはだかる巨人ブラーンピルは、燃えるような声で吠えた。


「貴様が俺を倒せるとでも思っているのか、トール?神々の中の神などと持て囃されているが、所詮は作られた伝説だ。神話なんてただの安っぽい作り話だ!」




トールはゆっくりと笑った。その笑いには長年の鬱憤と期待が滲んでいた。


「おい、お前は神を信じるか?」




「神だと?」ブラーンピルは嘲るように眉をひそめた。「くだらん。何も信じちゃいない。」




トールの瞳が電光のように輝いた。


「なら、今から会わせてやるよ。」




その瞬間、トールのミョルニルが閃光と共に炸裂し、ブラーンピルの体を遥か遠くへと打ち飛ばした。巨体は空を裂き、仲間のヨトゥンたちの頭上を越えて地面に激突し、片腕を失った。




(なんだ今の一撃は……?あれが直撃してたら、俺はもう……)


ブラーンピルは恐怖と痛みに顔を歪めながら、必死に体を起こした。




地を踏みしめながら近づくトールは、圧倒的な威圧感を放っていた。


「思ったよりしぶといな。もう終わりかと思ってたが、少し見直した。」




「この野郎……ッ!」ブラーンピルは天を仰ぎ、呪詛のような叫び声を上げた。




空からは、真っ赤に焼けた岩石が降り注ぎ始めた。大地がうねり、天は業火に染まる。




「これで終わりだ……!」




しかし、背後で電気の弾ける音が聞こえた。


「どこ見てるんだ?」




トールが無傷で立っていた。彼のマントが雷と共にたなびく。




「……ば、ばかな……!」




再びの一撃。ブラーンピルの巨体が弾け飛び、アスガルドの壁を突き破って建物をなぎ倒した。瓦礫の山の中で彼は血と泥にまみれ、身動きも取れなかった。




「お前は……弱すぎる。」




トールの冷たい声が突き刺さる。




絶望の中、ブラーンピルの体が変異した。皮膚は黒ずみ、筋肉は膨れ上がり、目は血走り、炎の化け物へと変貌を遂げた。




「うるさい!俺は強い!俺が……俺が最強だッ!」




彼が放つ熱気は、戦場全体を灼熱の炉に変えた。




「進化、か。見た目はともかくな。」トールは皮肉を吐いた。




怒り狂ったブラーンピルが突進する。炎のムチがトールの足に絡みつき、彼の体を空高く投げ飛ばした。




「手伝ったほうがいいか?」遠くで見ていたウッルが言った。




「今の俺たちじゃ、足を引っ張るだけだ……」タイールが肩を落とした。「この腕さえあれば……!」




焼け焦げた足首を見つめ、トールは呻いた。




(このままじゃ……負ける)




次の攻撃をかわしながら、彼は静かに目を閉じた。




「まだ余裕か?見下すなよ!」ブラーンピルが吠える。




沈黙。




「舐めるなッッッ!」




突進するブラーンピル。だがその瞬間、トールは静かに言った。


「死ね。」




彼の指先から、圧縮された稲妻が放たれた。




稲妻はブラーンピルの右半身を焼き尽くし、巨人は絶叫と共に倒れた。


「痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!」




遠くで見ていたウッルたちは息を呑んだ。トールが、雷光の中からゆっくりと歩み寄る。




「来るな、来るなあああ!助けてくれ!降参する!もう戦わない、だから……!」




彼の懇願に、トールは立ち止まり、ため息をついた。


「好きにしろ。あの傷じゃ、どうせ長くはもたない。」




そう言って、背を向けた。




「トール、お前本気かよ!?」タイールが叫ぶ。




「俺は戦士だ。戦った。勝った。……それだけだ。」




「偽善者か?散々ヨトゥンを殺してきた癖に、今さら命を語るか?」




トールが振り返り、静かに言った。


「ヨトゥンがなぜ外で彷徨っていたか……知りもしないで何が語れる?」




タイールは言葉を失った。




「何も知らない癖に……」




「危ない!」ウッルが叫んだ。




燃えるムチがトールの胸を貫いた――かに見えた。




だがそこにはトールの幻影が立っていた。




「どこ狙ってんだ?」




絶望がブラーンピルの表情を支配する。




「終わりだ。」




トールの体から、神のオーラが爆発的に放たれた。天が唸り、ミョルニルが稲妻をまとった。




「光閃こうせん」




一条の巨大な稲妻が天から落ち、ビフレストを貫き、無数のヨトゥンを一瞬で消し飛ばした。




戦場の者たちは、ただ空を見上げていた。神の怒りと、世界の終わりを。




ティールは、稲妻の余波でまだ震えるアスガルドの城壁から戦場を見下ろしていた。


体中に血が流れていたが、心を支配していたのはたった一つの問いだった。




「本当に……こいつを止められる存在がいるのか……?」




雲の間に浮かぶ雷神トールの姿。


その体は稲光を纏い、空気すらも震わせる嵐そのものだった。もはや彼は戦士ではない。天災だった。




遥か遠く、死体と塵の山に隠れるようにしていたスランゲモルダー——ドラゴン殺し——もその姿を見上げていた。


何も言わず、ただその圧倒的な存在に心を奪われていた。




「これが……神という存在なのか……。恐ろしい……これが、本当の恐怖……」




天に浮かびながら、トールは静かに目を閉じた。


呼吸と共に、空間がきしむ。雷鳴がその身に集まり、皮膚の一片一片が天の怒りを宿す。




今の彼は神として戦っているのではなかった。空の最期の砦として、全てを賭けていた。




「壊す……俺が、この化け物を終わらせる。たとえ命が尽きようと」




視線はただ一つの存在を捉えていた。




その場所。炎と毒に焦がされた大地。


そこにいたのは——世界で最も恐れられる存在。




ヨルムンガンド。




地を這うようにその巨体が現れ、煙と瘴気を纏いながら戦場を通過していく。


その歩みは大地を揺らし、吐息は猛毒。目が合っただけで、死が迫る。




周囲の軍勢は道を開けた。ヨトゥンでさえも、触れることを恐れていた。




ロキの息子——世界を喰らう蛇が目覚めた。


そして、終焉が歩き出した。




トールはゆっくりと地上へと降下した。


戦場の上空で、浮かぶようにその場に立つ。




その視線は、敵意と哀しみ、そして覚悟に満ちていた。




「……ヨルムンガンド」




その名を呼んだ瞬間、雷鳴が響いた。


まるで大地そのものが、その戦いを認めたかのように。




ふたりの巨神が睨み合う。




距離は……無意味だった。


片や、世界を締め付ける蛇。


片や、それを断ち切る雷。




空はさらに暗くなり、空気は重さを増す。




そして、どこか遠くの誰かが、声を発することなく最期の預言を書き記した——。




ラグナロクの、最終章が始まる。

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