「ソフィーさま。大変です。受付嬢のナナさんが塔型ダンジョンに入られてしまったようです」
ここはギルド長室。パレスが慌てて報告をしに来たのだ。
「なんですって?」
ソフィーは気が遠くなり、思わず父エルドランドに身を委ねた。
「門番はいったい何をしていたのだ!」
娘の肩を抱いてギルマスのエルドランドが怒鳴った。
「それが気がついたときにはふたりとも目の前から消えていたと・・・・・・」
「ふたりだと。だれが一緒だ?」
「昨日登録したばかりの冒険者だそうです。それがすごい腕利きで、Aランク試験に一発で合格したのだとか」
「そいつの名は」
「タイザー・フランクリン」
「そいつの血を調べろ。それからすぐに緊急依頼を出せ。Cランク以上強制参加の救援討伐クランを結成するのだ」
「了解しました!」パレスが部屋を飛び出す。
「お父さま」
「わが娘よ。いつかこうなる時が来ると思っていたが・・・・・・まさかこんなに早いタイミングで来るとは思わなかったよ」
「タエロンに恋をした」ソフィーが泣き出した。「わたくしが全ていけないのよ」
「お前のせいではない。魔王タエロンが狡猾なのだ。人間に化けてお前を誘惑したのだからな。だからあの子は死産したことにしてタエロンの目から隠したのだ。ギリスの家の前に置き去りにしてな。いざというときに魔法剣士であれば救援が到着するで持ちこたえられる可能性が高い」
「それじゃあ。タエロンはあの娘をおびき寄せるためにギリスを利用したってことなの?」
「ただ娘が欲しいだけなのか・・・・・・このニーサンの結界を破ってギリスに罠を仕掛けられるとしたならば、よほどの魔力がなければできぬこと」
そのときドアを激しく叩く音がした。
「入れ」
顔を真っ青にしてパレスが入って来た。
「エルドランドさま。タイザーの血液のことですが!」