「本当は、声をかけようと思ったんだ。でも、きみが、あまりにも気持ちよさそうに
「
私がエセルの下からずい、と顔を近づけると、エセルは、うっ、と声をあげて目を
「やだなー、
「そ、そうなの? じゃあ
その
「私の初めてなんか、
「そんな、初めてって……その、ただ、きみと、友達になりたいと思っただけなんだ」
「私と?」
「うん」
「ふふっ、物好きなんだから。こんな
「
「む、ぐぅ……」
なんて
さすがに
「ねえ、友達になってよ。
質問しながら、私の手を取って上下に
「私はイーヴァ・ケイン。村長さ……お父さまの家でお世話になってるの。よろしくね」
「イーヴァ!? そっかあ……それは、いい名前をもらったね!」
「もらった?」
不思議に思って
「それよりさ、今日は
「え、さかなつり?」
「うん。い、
「全然
「そっかあ! 良かったぁ。じゃあ僕は、家から道具を取ってから行くから、湖で落ち合おうよ」
「うん!」
エセルは満面の
「ふふ、
私は風に
帰りはさすがに窓ではなく、
「おやイーヴァ、部屋にいたんじゃ?」
お母さまが私の姿を見て、
「あ、ええ。ちょっとありまして」
「やめとくれよ、そんな
「あはは、
「
お母さまの笑顔は、不思議と人を安心させてくれる、なにかがあった。
「はい、ありがとうございます。それで、その……」
「どうしたんだい?」
「あの、さっきエセルがきて、ですね。お
「あら! あの子ったら手が早い!」
お母さまは
「それでその、行っても、よろしいですか?」
その時、部屋の
「んー、話は聞かせてもらったんじゃが、写本はどうする? 今から
「あ、それならもう終わりました。写本は私の部屋にあります」
「な、なんだって!?」
お父さまが、
きっと、私の部屋に行ったんだろう。
「あ、あの何十冊もある本を、半日で写したっていうのかい!?」
お母さまも、本の存在は知っているようだ。
「はい。それもただ写しただけではありません。
「まあ、そんなことまで……それをよく、午前中に終わらせたものだねぇ」
「が、
いくら父母とはいえ、部屋で起きた、あの出来事は話せない。
まだ自分でもうまく
その時、私の部屋から「おおおおおお!」という、お父さまの声が聞こえてきた。
きっと写本の出来に、喜んでくれているに
マナを使った不思議な現象がなんだったのかはわからないけれど、私が考えていたことを、信じられないくらいの短時間で
もしこの力を、自在に使い
私がそんなことを考えていると、額をこつん、と
「これからエセルとデートに行くんだろ? そんな険しい顔をしていたら、
「なっ、ちっ、
急にお母さまにそんなことを言われ、
「あっはっは、若い男女が
「へっ! そそ、そうなのですか!?」
「まあいいさね、行っておいでよ。でも暗くなる前には帰るんだよ。もしイーヴァが帰ってこなかったら、エセルの
「ありがとうございます行ってきます!」
なんだか
まさか、
私は湖に向かって走りながら、昨日からの
真夜中に、ずぶ
今日は一日かけて写本をやろうと思っていたら、なにがなんだかわからないうちに終わって、エセルがきて、友達になって。
さ、
それでも、まだ私は自分が
どこに住んでいたのか、
ただ言えるのは、昨日からずっと胸の
これは一体、なんなんだろう。
そんなことを考えていると、もうマールの湖に着いてしまった。
そこには私と同じくらいの年代の子が十数人、
はあはあ、と息を切らせていると、周囲の
そしてここには、特に多くの青いマナが
そっか、青いマナは水の象徴なんだ。
辺りを見回すと、エセルの姿がない。
私は仕方なく
はらり、と
「私は……?」
またそんなことを考え出す。
あの古語で書かれた
やっぱりあれを、いつでも使えるようにしたい。
でも、あの時の私は意識が遠のいていて、どうやってマナを
いつのまにか、私は三人の男の子に囲まれていた。