私が着地に選んだのはラミナの街の外れ、街道からも少し
ここからだと街を囲う
着地の際、こちらに視線を向けるものはいなかったので、空から降りてきた私を
現時点では、私以外にこの『
そして、マナを法術に
私がラミナの街に行きたかった理由の一つは、それを確かめるためでもある。
マールの村には法術を使える人が全くいなかったけれど、あそこは
しばらく水を片手に息を整え、それから立ち上がると、まずは街道に向かって歩き始める。時間的にはまだ
街道に出て、旅人らの流れに乗る。
すると辺りのものがぎょっとした目で私を見た。
なんでだろう、と思っていたけれど、理由はすぐわかった。
真っ赤な
私は
早く街に入って、ハーラルと作ったこの魚を売ろう。
そんな思いを
ラミナは想像している以上に発展した街だった。
まだ朝なのに、もう街が活気を帯び始めている。行き交う旅人の数も多く、
街道沿いはレンガ造りの高い建物が建ち並んでおり、どのような店か一目でわかる看板が、
酒場、宿屋、本屋、武器防具屋、交易所、市場……全て、
この街は大都市に比べれば大したことはないのかもしれないけれど、マールの村に比べてあらゆる
歩く木箱と化している私は引き続き衆目を集めており、少し
これが、大当たりだった。
予想は的中し、ラミナの街では肉より魚のほうが高値で取り引きされており、木箱の中に収められた一二〇枚の大きな魚は大変喜ばれた。そこでまず一枚五〇〇〇エルから
合計四八〇〇〇〇エル。大金だと思う。
正直、私は魚一枚三〇〇〇エル程度と考えていたけれど、それよりも高い相場で売ることができて満足だった。私は酒場でもらった
そして農具を売っている店を探そうとして辺りを見回していた……その時。
ドォン、という音と、地鳴りがラミナを
笑い声と活気で
私は音の方を見て、胸が
音の元は、北。
マールの村がある方向だった。
「う、そ?」
顔から血の気が引いていくのを感じるた。
まさか、マールの村になにかあったのでは?
私は急いでラミナの街を出て、北の草原に向かって全力で走った。
もうお金は手に入れたのだから、なにごともなければそれでいい。
またラミナの街に
その度に地は
そんな異変が起きているのはマールの村であることが、予想ではなく確信に変わった。
私は
「はあ、はあ……あ!」
水筒の中は
不覚にも、ラミナの街で水を買うのを忘れていた。
「くっ!」
水筒を横に投げ、
『……有翼の法術!』
私は背中に
(お父さま、お母さま!)
何度も起こる
(ハーラルッ!)
熱い想いが、私の背中を
高く、もっと高く。
身体中からふき
ここにきた時よりも
「はあ、はあ……うぅ……」
意識が遠のきそうなほどの
そしてすぐ幻惑の森を目にとめると、
このまま幻惑の森そのものを
絶対になにかがあるはずだ。
他の
こんな高所から急降下すると、急速に体温を
やがて幻惑の森の前まで降下すると、角度を
身体が回転し、ローブや髪に草が
「はあ、はあ、げ、幻惑の森よ! 私の道を、
ぜえぜえと息を切らし、震える手でワンドを
すると、ワンドにマナを集めていないにもかかわらず、ざわざわと大きな音を立て、木の幹たちが生き物のようにぶつかりあって、草木が左右へと別れ、一本の道を作ってくれた。
「はぁ……はぁ……ありが、とう!」
ざっ、ざっと、森が作ってくれた道を急ぐ。
思えば行きの時も、幻惑の森は私の味方をしてくれた。感謝の心を胸にワンドを
やがて
目の前にあるのは、一面の湖。
畑も牧場も、市場も家々も、なにも、なかった。
無論、お父さまとお母さまの家も。
「……うそ、でしょ?」
とさり、と、ワンドが草の上に落ちる。
それはとても、とても物悲しい音だった。
「なんで? なんでこんな……え、ああ……」
力が
「おかね、ちゃんと、もってかえってきたよ? おとうさま、おかあさま」
全てが湖面と化したマールの村を前にして、視界が
それはみるみる瞳から
「ハーラルぅ!」
鼻が痛い。
私は、腹立たしいほどの青空を見上げた。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
両手を地面につき、土に額を当てて、ひたすら声をあげて……泣いた。