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1-3-4: 見え始めた真相




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夜も更け、ヴェルナは机に向かってペンを走らせていた。リリアン家とセザール家の繋がり、そしてその裏に潜む政治的な意図。アンドレや母マティルダから得た情報をもとに、全体像を整理していくうちに、いくつかの共通点が浮かび上がってきた。


「リリアン家の借金を肩代わりし、名声を利用する……。」

ヴェルナは紙に矢印を引きながら、仮説をまとめていく。

「そして、リリアン家を支配下に置き、セザール家の影響力を広げる……。」


彼女の筆は止まらない。これまで感じていた違和感が次々に形を成していく。



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翌朝、アンドレが新しい情報を携えて彼女のもとを訪れた。彼はいつものように冷静で、淡々と報告を始めた。


「ヴェルナ様、さらに興味深い事実が判明しました。」

アンドレは数枚の資料を差し出した。「セザール家がリリアン家に資金を提供しているだけでなく、リリアン家の借金を取り仕切っている商人たちを手懐けているようです。」


「商人を……?」

ヴェルナは資料に目を通しながら眉をひそめた。そこには、いくつかの名前と取引履歴が記されていた。


「はい。その商人たちを通じて、リリアン家の資金繰りを管理している模様です。」

アンドレは続けた。「彼らがセザール家に忠誠を誓っている理由はまだ分かりませんが、少なくとも彼らの動きがセザール家の利益に直結しているのは間違いありません。」


「つまり、リリアン家の自由は完全に奪われているということね。」

ヴェルナは深く息をついた。「それなら、リリアン嬢も気づいているのかしら?」


「それは……分かりません。」

アンドレは慎重に答えた。「リリアン嬢自身がこの計画に加担している可能性もありますし、逆に利用されているだけの可能性もあります。」



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「リリアン嬢……。」

ヴェルナは、舞踏会で見た彼女の得意げな笑顔を思い出した。あの笑顔の裏には何が隠されているのだろうか。ただの若い令嬢が、セザール家の複雑な計画にどこまで関与しているのか、まだ掴みきれなかった。


「彼女が知っていようといまいと、この計画を許すわけにはいかない。」

ヴェルナは決意を新たにした。「私が真実を暴いてみせる。」



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その日の午後、ヴェルナはマティルダと再び話し合いを持った。母親は彼女の決意を聞き、静かに頷いた。


「あなたの考えは正しいわ、ヴェルナ。」

マティルダは紅茶を一口飲みながら言った。「でも、あなたが一人で戦う必要はないのよ。私たちがいるわ。」


「母様……ありがとう。」

ヴェルナは感謝の言葉を口にしながらも、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。



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その夜、ヴェルナは一人で次の行動計画を練った。セザール家の計画を暴露するためには、確固たる証拠が必要だった。商会や商人たちの動きをさらに追う必要がある。


「リリアン家に直接働きかけるのも一つの方法かもしれない。」

ヴェルナは独り言のように呟いた。「でも、リリアン嬢がどこまで知っているのか分からない以上、それは危険すぎる……。」


彼女はしばらく考え込んだ後、結論を出した。


「まずは、商会の活動を徹底的に調べる。そして、彼らの取引がセザール家とどのように繋がっているのか、確実な証拠を掴む。」



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翌日、ヴェルナはアンドレにさらなる調査を依頼した。彼女の指示は明確だった。


「商会の詳細を掴んでちょうだい。特に、セザール家との関係を示す証拠が欲しいわ。」

「かしこまりました、ヴェルナ様。」

アンドレは頭を下げ、迅速に行動に移った。



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ヴェルナはその後も、自室で一人、計画を練り直していた。彼女の心には強い怒りとともに、冷静な分析力が宿っていた。


「セザール家が何をしようとしているのか、必ず暴いてやる。」

その言葉は、彼女自身への誓いだった。


彼女は筆を置き、深く息を吸った。そして、静かに呟いた。


「私はもう、ただの婚約破棄された令嬢ではない。私の誇りと正義のために、真実を明らかにする。」


ヴェルナの目には、以前のような迷いや不安はなく、ただ真実を追い求める決意だけが輝いていた。



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