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1-4-3: 闇の取引の核心




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リリアン家を後にしたヴェルナは、屋敷への帰路で胸に渦巻く思いに整理をつけようとしていた。リリアン嬢との対話から、彼女がセザール家の計画に完全に関与しているわけではなく、むしろその犠牲になっている可能性が高いと感じた。だが、それでもまだ全てのピースが揃っているわけではない。


「彼女の言葉だけでは十分じゃない……もっと確かな証拠が必要だわ。」

ヴェルナは馬車の窓から外を見つめ、静かに呟いた。セザール家がリリアン家を通じてどのように利益を得ているのか、その詳細を暴くことが次の鍵だった。



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屋敷に戻ると、アンドレが新しい情報を持って待っていた。彼はヴェルナの指示通り、セザール家の商会の動きをさらに詳しく調査していた。


「ヴェルナ様、お待ちしておりました。」

アンドレは一枚の地図を広げながら説明を始めた。「こちらがセザール家が関与している商会の主要な取引先と、物流ルートを示したものです。」


「物流ルート……?」

ヴェルナは地図に目を落とし、各地に点在する取引先の印を確認した。「これらの場所に何か共通点があるの?」


「はい。」

アンドレは地図の一部を指差した。「特に目立つのは、これらの地域がどれも地方の有力貴族の領地であるという点です。そして、これらの貴族たちは最近、政治的な集会でセザール家を支持する動きを見せています。」


「つまり、セザール家は物流を通じて地方貴族の支持を買収している可能性があるということね。」

ヴェルナはその仮説を心の中で整理しながら答えた。「そして、その資金源がリリアン家との取引に繋がっている……。」



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ヴェルナは机に座り、地図を見つめながら考えを巡らせた。セザール家が物流網を利用して政治的影響力を拡大していることは明らかだったが、その具体的な手法を暴くには、さらに踏み込む必要があった。


「商会の中に協力者がいれば……。」

ヴェルナはペンを走らせながら呟いた。「内部から情報を得ることができれば、セザール家の動きを直接突き止められるはず。」


その時、母親のマティルダが部屋を訪れた。彼女はヴェルナが思い詰めた表情で資料を整理しているのを見て、そっと声をかけた。


「ヴェルナ、少し休憩した方がいいわ。」

「母様……ありがとうございます。でも、今は一刻も早く真実を明らかにしたいんです。」


「分かっているわ。でも、焦りすぎても良い結果には繋がらないわよ。」

マティルダは娘の手を握り、優しく微笑んだ。「それに、あなた一人で全てを抱え込む必要はないわ。アンドレも、私も、そしてあなたに協力できる人々は他にもいる。」



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マティルダの言葉を聞き、ヴェルナは少し気持ちが軽くなった。確かに、彼女には信頼できる仲間がいる。今こそ、その力を最大限に活用する時だと感じた。


「分かりました、母様。ありがとうございます。」

ヴェルナは感謝の気持ちを込めて微笑み返した。そして、次の行動計画を練り始めた。



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翌日、ヴェルナはアンドレを通じて商会の内部に精通している人物を探し出した。その人物は商会の元社員で、現在は地方で小さな事業を営んでいる青年だった。


彼の名前はエリオット。彼はかつて商会で働いていたが、セザール家が取引を通じて政治的な圧力をかけていることに嫌気がさし、辞職した経緯があるという。


「彼なら、商会の内部事情を知っているかもしれない。」

ヴェルナはエリオットとの接触を決意し、彼の住む町へ向かう準備を始めた。



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エリオットとの出会いは、物語を大きく動かすものだった。彼は当初、セザール家に対して口を閉ざしていたが、ヴェルナの誠実な態度に心を開き、商会で行われていた裏取引について語り始めた。


「セザール家は、物流網を利用して地方貴族に利益を配分していました。」

エリオットは重い口調で語った。「彼らの狙いは、地方貴族たちの支持を集めて、貴族議会での発言力を強化することでした。」


「リリアン家の資金は、そのために使われていたのね……。」

ヴェルナは呟きながら、エリオットの言葉を慎重に聞き取った。


「ええ。」

エリオットは頷いた。「リリアン家の財政支援は、セザール家の計画の一部に過ぎません。彼らはもっと大きな影響力を手に入れるために動いています。」



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その言葉を聞いたヴェルナは、セザール家の企みが自分が思っていた以上に大規模なものであることを確信した。そして、彼らの計画を阻止するためには、さらに具体的な証拠が必要だと悟った。


「エリオット、協力していただけますか?」

ヴェルナは真剣な目で彼を見つめた。「私はセザール家の計画を止めたいのです。あなたの知識と情報が必要です。」


エリオットはしばらく考え込んだ後、小さく頷いた。

「分かりました。できる限りお手伝いします。」



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