リリアンの不正が暴かれ、セザールの関与も明らかにされた広間は、怒りと失望に満ちていた。社交界の貴族たちは彼らの偽善的な行動に対し、厳しい非難の声を上げていた。
「リリアン嬢、どう弁解するつもりですか?」
「これだけの証拠を前に、何も言えないでしょう!」
ヴェルナは冷静にその場の状況を見守りながら、さらに一歩前に進み出た。彼女の目には、これ以上の逃げ道を与えないという強い意志が宿っていた。
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リリアンは泣き崩れながら、必死に否定しようとしていた。彼女の声は震え、まともに言葉を紡ぐことができなかった。
「私は……そんなことしていません……!」
彼女は声を上げたが、その言葉に信じる者は誰もいなかった。
「では、この証拠をどう説明するのですか?」
ヴェルナは冷徹な声で問いかけた。「あなたの名義で記録された資金の流用、そしてセザール様と共謀して行った行為――これらが全て間違いだとでも?」
その問いに、リリアンは何も言い返すことができなかった。セザールもまた、視線を下に落とし、沈黙を保っていた。
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広間の貴族たちは次々と意見を述べ始めた。
「彼らはこの社交界にふさわしくない!」
「すぐに追放するべきだ!」
「これ以上、彼らの存在を許容する理由はない!」
その言葉に後押しされるように、ルシャール侯爵が立ち上がった。彼は社交界の中でも特に影響力のある人物であり、その発言は重いものだった。
「リリアン嬢、セザール様。」
ルシャール侯爵は厳しい目で二人を見つめながら語りかけた。「あなた方の行いは、貴族としての品位を大きく損なうものであり、この社交界に対する裏切り行為と言っても過言ではありません。この場をもって、あなた方の追放を提案します。」
その言葉に、広間の貴族たちは一斉に賛同の声を上げた。
「賛成です!」
「彼らを追い出しましょう!」
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セザールは深いため息をつき、重い足取りで立ち上がった。
「分かりました。」
彼は低い声で言った。「私はこの場を去ります。しかし、この件はまだ終わりではありません。」
その言葉を残し、彼はリリアンを引き連れて広間を後にした。二人が去った後、広間には一瞬の静寂が訪れたが、それはすぐに歓声と拍手に変わった。
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ヴェルナはその場で深く息を吐き出し、静かに目を閉じた。彼女が目指していた目標を達成した瞬間だった。しかし、その勝利は決して浮かれるべきものではなかった。彼女の胸には、まだ次なる課題への覚悟が宿っていた。
エリオットがそっと彼女のそばに近づき、静かに語りかけた。
「素晴らしい仕事でした、ヴェルナ嬢。」
彼の声には感嘆と尊敬の色が混じっていた。「これで彼らの偽善は完全に終わりました。」
「ありがとう、エリオット。」
ヴェルナは微笑みながら答えた。「でも、これで全てが終わったわけではないわ。次に何が待ち受けているか分からないもの。」
「その通りです。」
エリオットは頷いた。「ですが、今夜のあなたの行動は、多くの人々に希望を与えました。」
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その夜、ヴェルナは広間を後にし、自室に戻った。彼女は窓辺に立ち、月明かりに照らされた庭を見つめながら、自分の中に湧き上がる様々な感情を整理しようとしていた。
「これで一歩前進したわね。」
彼女は小さく呟いた。「でも、まだ終わりではない。私はもっと強くならなければ。」
その言葉と共に、彼女の心には新たな決意が芽生えていた。セザールとリリアンを追い出すことができたとはいえ、社交界にはまだ多くの課題が残っている。ヴェルナはそれに立ち向かうための力を蓄える必要があると感じていた。
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