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第14話 エル・ドライド4



セリカは決意を新たにし、すぐに具体的な行動を起こすことにした。エル・ドライドの冷たい言葉に屈するつもりは全くなく、むしろそれを糧に改革をさらに加速させるべく動き出した。彼に認めさせるためには、言葉ではなく実績を示すことが不可欠だ。それには、単なる計画だけではなく、確実な成果を伴った実行が必要だと彼女は理解していた。


「まずは、目に見える形で成果を出さなければならないわ」


セリカは領地内の各部門に指示を出し、自分が掲げる改革を具体的に進めるべく、迅速に動き始めた。彼女の主な焦点は、農業改革と商業の発展、そして平民の教育や人材育成にあった。彼女が目指すのは、貴族だけでなく、平民の力をも最大限に引き出す領地運営だ。


まず、彼女は農業改革に着手した。この異世界における農業はまだ技術が遅れており、効率化や収穫量の向上には大きな改善の余地があった。セリカは前世で得た知識を活かし、領内の農地に新しい灌漑システムを導入する計画を立てた。さらに、作物の栽培方法についても、品種改良や肥料の使用などを指導することで、収穫量を飛躍的に増加させることを目指した。


「まずは、農業の基盤を強化することが大事ね。食料が安定しなければ、領民たちも安心して暮らせないわ」


次に、商業の活性化にも着手した。ディオール領は豊富な資源を持ちながらも、それをうまく活用しきれていなかった。セリカは領地内の商人たちと協力し、新しい交易ルートの開拓や、隣国との商業協定の再編成を進めることにした。これにより、領内で生産された物資や特産品を他国に輸出することで、ディオール領の収入を増やし、領地全体の経済を活性化させる狙いだ。


「物資を効率的に流通させるためには、商人たちとの協力が必要不可欠だわ」


商業活動を拡大するためには、商人たちが自由に取引できる環境を整えることが重要だとセリカは考えた。彼女はまず、商人たちに対する制約を緩和し、自由な交易ができるように新たな法整備を提案した。商人たちが自らのビジネスをより大規模に発展させるための支援策も取り入れることで、彼らのモチベーションを高め、領地全体の商業活動を活性化させようと考えたのだ。


同時に、セリカは平民の教育にも力を入れ始めた。これまでの貴族社会では、平民に高い教育を施すことはほとんどなく、その才能を発揮する機会が与えられていなかった。だが、セリカは違った。彼女は平民の中にも多くの才能が眠っていると確信しており、それを引き出すためには、教育が不可欠だと考えていた。


「優秀な人材は、貴族だけに限らない。平民だって学ぶ機会があれば、きっと力を発揮するはず」


彼女は平民の若者たちを集め、彼らに基礎的な教育を施すための学校を設立した。ここでは、読み書きや計算の基本に加え、農業や商業の基礎知識も教えることができるようなカリキュラムを構築した。さらに、実務経験を積む場として、彼らをさまざまな業務に従事させることで、将来的に領地運営に貢献できる人材を育成することを目指したのだ。


これらの改革は順調に進みつつあり、セリカの下で領地の各部門は着実に成長していった。彼女の手腕は次第に領民たちにも認知され始め、改革の成果が目に見える形で現れるようになった。


「今は小さな一歩だけれど、これが大きな成果に繋がるはず」


セリカは日々の業務に追われながらも、確固たる信念を持ち続けていた。エル・ドライドに対して、実績を示すことで彼を説得し、自らのチームに加えたいという思いが、彼女の原動力となっていた。彼が再び彼女の前に現れるその日まで、セリカは決して手を緩めることなく、改革を推し進めていく。


エル・ドライドの冷たい言葉が、セリカの心に火をつけ、彼女の行動を一層加速させたのだ。



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