セリカは、平民の子供として学校に潜入し、授業を受けることにした。教師たちがどのように授業を進めているのか、そして子供たちが何を感じているのかを直接体験しようと決意したのだ。
教室に入ると、他の子供たちは新しい生徒に驚いたようだったが、特に大きな反応は示さなかった。セリカは後ろの席に座り、教師が授業を始めるのを待った。
その日の授業は読み書きの基本的な内容だった。しかし、教師の態度はあまりにも冷淡で、ただ教科書を読み上げるだけの授業だった。子供たちが質問することもなく、ただ退屈そうに時間が過ぎていく。
「これが、問題の一つかもしれないわね……」
セリカは心の中で呟いた。教師たちは、ただ形式的に授業を進めているだけで、子供たちに対して熱心に教育しようとする意欲が感じられなかった。
授業が進む中、セリカは意を決して手を挙げた。
「先生、質問があります」
その瞬間、教室内が少しざわめいた。教師も驚いたようにセリカの方を見たが、すぐに冷たい態度で返答した。
「なんだね?」
「この問題、どうしてこうなるのか詳しく教えてもらえませんか?教科書には書いてない部分が気になるんです」
セリカの問いに、教師は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに不機嫌そうに言った。
「平民の子供にそんなことを教える必要はないだろう」
その言葉に教室は静まり返った。セリカはその場で怒りを感じたが、表情には出さずに冷静に返答した。
「それなら、平民に必要な授業をもっと真面目にやるべきです。子供たちのために、本気で教えるべきではありませんか?」
その一言が教室中に響き渡り、教師は一瞬言葉を失った。セリカは冷静な表情で教師を見つめ続けた。その視線に、教師は焦りを隠せずに言葉に詰まった。
「そ、そういうことじゃないんだ。とにかく、貴族の教育と平民の教育は違うんだ。平民には、もっと実用的なことだけで十分なんだよ」
「それが、今の教育に対する態度の理由ですか?」
セリカの厳しい追及に、教師は何も言えなくなり、その場でうつむいた。教室の中は完全に静まり返り、他の子供たちも固唾を飲んで見守っていた。
「教師としての責任を果たしていただきたいものです」
セリカは最後にそう言い放ち、再び席に戻った。教師たちが授業に対して熱意を持っていないことは明らかであり、子供たちが学校に通うことをやめた理由が少しずつ見えてきた。