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第35話 ドジっ子先生

カトリーヌ先生が新任教師として着任してから数週間が経った。彼女はその間抜けでドジな一面を見せながらも、生徒たちの人気を獲得し続けていた。教室での授業中、カトリーヌ先生は頻繁にミスを犯すのだが、その度に生徒たちは驚き、笑い、そしていつの間にか授業に集中するようになっていく。


ある日の授業の始まりも、予想通りの展開だった。カトリーヌ先生は元気に「おはようございます!」と教室に入ってきたが、勢い余ってつまずき、またもや派手に転んでしまった。教室の中は笑い声が広がり、「今日もやってくれたな!」と生徒たちは楽しそうにささやき合った。


「うっかりしました!」とカトリーヌ先生は笑顔で立ち上がり、手で軽くスカートの汚れを払うと、「今日は算数の授業を始めましょうね!」と元気に宣言した。


生徒たちは、次はどんなミスが飛び出すのかとワクワクしながら彼女を見守っている。カトリーヌ先生は教科書を手に取り、「みなさん、教科書の15ページを開けてくださいね!」と指示を出した。生徒たちは言われた通りにページを開いたが、カトリーヌ先生は次の瞬間、間違えて16ページを読み始めた。


「あのー、先生、ページが違いますよ」と生徒の一人が指摘する。


「え?あら、本当だ!ごめんなさい!」とカトリーヌ先生は笑顔で応えながら、手に持っていた教科書を見直した。「みなさん、気が利くわね。ありがとう!」とお礼まで言うと、周りの生徒たちはまた笑い声を上げた。彼女のミスには、何か和やかさと親しみが込められているようで、誰も不快に感じることがなかった。


さらに授業が進むにつれて、カトリーヌ先生はまた別のミスを犯した。ある生徒の名前を呼びながら質問をしようとしたのだが、「リク」という名前の生徒を「リサ」と間違えて呼んでしまった。リクが手を挙げて「先生、僕はリクです!」と少し恥ずかしそうに言うと、カトリーヌ先生は「ごめんなさいね、リク君!リサさんと間違えちゃったわ!」と再び笑顔で謝罪する。


彼女の素直さとあっけらかんとした態度に、教室はまた笑いに包まれた。カトリーヌ先生がミスを犯すたびに、生徒たちは次のミスを予測するようになり、いつしか彼女の授業に集中するようになっていった。


その日の授業の終盤、カトリーヌ先生は黒板に問題を書き始めた。しかし、書きながら何度も数字を間違え、書き直しては「またやっちゃった!」と笑顔で訂正する。生徒たちは、そんなカトリーヌ先生の姿を微笑ましく見守りながら、教室の空気はどんどん温かくなっていった。


授業が終わると、生徒たちは教室を出る前に「先生、楽しかったです!」と声をかけていた。カトリーヌ先生は、「みんなありがとう!次の授業も楽しみにしていてね!」と笑顔で手を振って見送る。


教室を出た後、ある生徒が友人に言った。「カトリーヌ先生、毎回なんかやらかすけど、なんか安心するよね。」


「そうだよね。ミスしてもあんなに堂々としてるし、なんか勇気もらえる気がする!」と友人も笑顔で応えた。


こうして、カトリーヌ先生の「ドジっ子先生」というあだ名がますます定着し、生徒たちは彼女の授業を心待ちにするようになった。



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