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第37話 カトリーヌ先生の影響力

カトリーヌ・ダッチ先生の授業が始まってしばらく経つと、生徒たちはすっかり彼女の「ドジっ子ぶり」に慣れ、むしろそれを楽しみにするようになっていた。最初のころは、教室に入ってくるなり何かしらの小さなミスをしてしまうカトリーヌ先生に、生徒たちは驚いたり、あきれたりしていた。しかし、今や生徒たちは「今日はどんなことが起こるのだろう?」とワクワクしながら彼女の授業を待っている。


その日は、カトリーヌ先生が歴史の授業を担当していた。教科書を片手に教室の前に立ち、彼女がページをめくろうとした瞬間、勢い余って教科書を床に落としてしまう。「あらら、またやっちゃった!」と笑顔で言うカトリーヌ先生に、生徒たちはまたかと笑い声を上げた。だが、その笑い声の裏には、彼女の失敗を楽しむだけでなく、どこか温かいものが混ざっていた。


カトリーヌ先生が教科書を拾い上げて再び授業を続けると、次は授業内容についての質問を始めることになった。「えーと、この時代に起こった重要な出来事を覚えている人はいますか?」と先生が尋ねると、意外にも生徒たちは皆、手を挙げて答えようとする。カトリーヌ先生がどんなミスを犯すのか見逃さないようにと注意深く授業を聞くようになってから、生徒たちはいつの間にか歴史の内容もよく覚えるようになっていたのだ。


ある生徒が答えると、カトリーヌ先生は満面の笑顔で「そうそう、そうなのよ!あなた、とってもよく覚えてるわね!」と褒め、さらに話を広げて説明を加えた。生徒たちはカトリーヌ先生が自分たちの努力をしっかりと見てくれていることを感じ、次第に授業に積極的に参加するようになった。


また、授業の進行中、カトリーヌ先生はしばしば生徒たちの名前を間違えることがあった。生徒たちは最初は戸惑ったが、今ではその間違いも笑いながら受け入れている。カトリーヌ先生は「あらごめんなさい、ついまた間違えちゃった!」と、にこやかに謝りながら正しい名前で呼び直す。そんな彼女の軽い失敗が、かえって生徒たちに「自分も先生にとって大切な存在なんだ」と感じさせていた。


次第に、教室全体に「カトリーヌ先生の授業は面白くて楽しい」という風潮が生まれていった。彼女が次にどんなドジっ子行動を見せるのかを見逃さないようにと、生徒たちは授業中も常に先生に注目している。これにより、自然と学習意欲が高まり、授業への参加意識も強くなっていった。そして、その結果として生徒たちの成績も少しずつ上がり始めたのである。


教師たちもまた、この変化に気づき始めていた。授業に対する生徒たちの熱意が増していることは明らかであり、カトリーヌ先生のドジっ子ぶりが予想外の効果をもたらしていることに、他の教師たちも興味を抱くようになっていた。ある教師が休憩時間にカトリーヌ先生に「生徒たちが驚くほど集中しているようですね。あなたの教え方には何か秘訣があるのでしょうか?」と尋ねたが、カトリーヌ先生はあの「のほほーん」とした表情のまま「秘訣なんてないですよ。ただ、楽しく教えたいだけです」と答えた。


その返答に他の教師は首をかしげながらも、「それが彼女の魅力なのだろうか」と納得するしかなかった。彼女の自然体な教え方が、生徒たちの心に響いているのかもしれないと、彼らは少しずつ思い始めていた。


やがて、セリカもまた、カトリーヌ先生の影響が学校全体に及んでいることを実感していた。彼女が新しい教師として着任した当初は不安もあったが、今では生徒たちが自ら進んで授業に参加する様子を見て、彼女の存在が学びの場に良い影響を与えていることに気づいたのだ。



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