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第38話 カトリーヌ先生への疑念

ある日、授業が始まったばかりの教室に、ひとりの生徒の父親が突然現れました。険しい表情で、勢いよく教室に入ってくると、教室の雰囲気は一瞬で張り詰め、生徒たちは驚きに息を呑みました。


「今日は家の手伝いをさせるから、この子を連れて帰る!」と父親は強い口調で言い放ち、息子を鋭く見つめました。息子のほうは戸惑いと不安を抱えた様子で、そっと教師のカトリーヌを見上げます。


カトリーヌは、生徒の父親の前に進み出て、落ち着いた声で話しかけました。「お父さん、リカルドさんは今日も授業に意欲的に参加したがっています。せっかくなので、ここで学びを続けさせてあげませんか?」


しかし、父親はカトリーヌの言葉に耳を貸す様子はなく、苛立った様子で「余計な口を挟むな!」と声を荒げました。彼は怒りに任せて拳を上げ、カトリーヌに詰め寄ります。


カトリーヌは一瞬驚いた様子を見せましたが、すぐに冷静な表情に戻り、少し身を引きました。すると、その瞬間、父親は足元がもつれてバランスを崩し、勢い余って転びそうになりました。


教室中が静まり返る中、カトリーヌは静かに声をかけました。「落ち着いてください。暴力は解決になりませんよ」


父親は周囲の視線に気づき、少し恥ずかしそうに立ち上がると、無言で教室を去っていきました。彼が去った後、生徒たちは一斉にカトリーヌに駆け寄り、「先生、大丈夫?」と心配そうに声をかけました。


カトリーヌは少し照れながらも、「ありがとう、大丈夫よ」と微笑みました。その様子に、生徒たちは安心したように頷きました。


一方、教室の隅でその様子を見ていたセリカは、冷静に一連の出来事を思い返していました。父親が転びそうになったのは偶然に見えましたが、どこか不思議な印象を受けたのです。


「カトリーヌ先生、ただのドジっ子じゃないかも…」と、セリカは小声でつぶやき、彼女に対する疑念を抱くようになりました。



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